翌日、始発の船で帰ることにしていた。
ホスピスに行って、アオイさんに挨拶して帰ろうと思った。
建物が見えて来たところで、手にゴミ袋を持ったアオイさんを見つけた。
「こんにちわ」
「こ、こんにちわ。」
俺を見つけると、咄嗟に持っていた袋を自分の背中に隠すアオイさん。
「……お帰りですか?」
「はい。
いろいろとありがとうございました。
また、来ます。」
そう言って、頭を下げた時に彼女の持っていた袋の中身が目に入った。
焼け焦げた、自分が描いた祈里の絵。
昨夜、アオイさんに託した絵。
「……それ、」
「……やめてくださいと、言ったんですけど……」
彼女は嘘がつけない。
……それほどまでに拒絶されていると思い知らされた。
それでも……ここで挫けるわけにはいかない。
「……また、来ます。」
もう一度、深く頭を下げてから、振り返った。
「あのっ!」
振り返ると、アオイさんは涙目になりながら話しだした。
「……諦めないでください。
あんなに素敵な絵とお手紙。
私、感動して浮かれてしまって……
上機嫌で祈里さんにお渡ししたんです。
……それが、いけなかったのかも……知れません。
ですから。
今度はちゃんとお渡ししますから。
……諦めずにお手紙と絵を送ってくださいませんか?
祈里さん。
本当は嬉しかったはずなんです。
本当は、皆さんに会いたいはずなんです。
……自分への戒めにしているだけで。
だから、
だから……その……
どうか。
また、描いてあげてください。
皆さんの思いを、届けて欲しいんです。
燃やされないように、手元に届くようにちゃんと私がしますから。」
喉の奥、胸の奥。
熱くなって、鼻の奥も……
涙が溢れそうになって、隠すように、また深く頭を下げて、振り返った。