「ブルマは廃止してはいけないと思う、男子30%…。う
ーん、私には理解出来ませんね。理由はアンケートに書いて
有りますが、ちょっと食事どきに発表するのは、これ、きつ
いです。きっと書いた彼もここで読んじゃうと赤面して食事
がのどを通らなくなるんじゃないでしょうか。では次の曲…」
 給食時、校内放送で週に何回かDJっぽい事なんかもやっ
ていたりする。それが僕の役目。そして、坂下から頼まれた
のが、ブルマ肯定派男子の撲滅作戦だった。僕には正直それ
自体はドーデも良かった訳であり、ただ彼女が喜ぶ顔が見た
かった、というだけだったのかもしれない。交換条件はただ
公約にしてもらうだけでそれで圧倒的賛成多数になるのは間
違いなかった訳で、それだけで満足だった。
 昼休みの事。念の為、職員室に坂下と二人で校則について
聞きに行った。生徒指導担当はうちのクラスの担任。話は早
い。
「先生、校則って変えられるんですよね?」坂下が訊く。
「確かに、生徒会で賛成多数なら変えられなくは無い。ただ…」
 担任が言葉を濁す。
「ただ?」僕が訊き返す。
「全会一致でなければ職員会とPTAとで承認が必要って事
だな。」と答えが返って来た。
「全会一致なら良いって事ですか。…わかりました。」坂下
が覚悟を決めたような眼で放った言葉は強かった。
職員室帰りの教室。給食放送の話題で教室内は盛り上ってい
た。座っていた高橋が駆け寄ってくる。
「なかなかやるねぇー、何か策でもあるの?あれホントは誰
のコメントでもないんでしょ?凄いことするよねぇ~」
…相変わらず鋭い女子だ。こういう勘だけは鋭い。
「まぁ、何とかするさ。生徒会の全会一致が大原則らしいか
ら、男子が反対しないようにするのが一番大事だからね。」
あの、液体ヘリウムみたいな眼で遠巻きにこちらを見ていた
綾が立ち上がり、かすかに満足げな顔で教室を去って行った。
決意に満ちた眼をしていると思っていた坂下の表情もいつに
なくニコニコしていたのだが、眼が合った途端、いつもの強
気な彼女に戻った。
そこに大平が入って来た。また例によって元気な声で「ダー」
と呼びながら、である。その瞬間、坂下の表情が曇った。
「じゃ、そういうことだから。」そう言って、彼女は去って
しまった。座っている僕の膝の上に大平が乗り、胸には坂下
の声だけが刺さっていた。