伝承の成立時期から見る記録の信頼性

聖書学者たちの見解によれば、この最古の伝承が成立したのは、遅くてもキリストの死から20年以内であり、死後数年で成立した伝承と見る学者もいる。また、この信条が記録されている第一コリントの書簡自体も、キリストの死後30年以内に書かれたことは、どの立場の学者から見ても明白な点となっている。

これらの伝承・記録の成立年代は、復活の史実性を検証する上で、大きな意味を持っている。なぜなら、キリストの死後20~30年という期間であれば、イエスの死や復活を目撃した証人たちや、反対者たちがまだ多く生存していた年代であり、嘘の伝承を流布させることは不可能だったはずだからだ。

パウロは「五百人以上の兄弟たちに同時に現れた」と語っているが、この手紙を読んで、復活の事実を疑った人は、いくらでも証人たちを探し出し、証言の確認をすることが可能だった。パウロは、書簡に書いた伝承の信憑性に、絶対的な自信を持っていたのだ。

以上に挙げた観点や、他の事実から、ドイツの歴史家のハンス・フォン・ハウゼンは、パウロが記録した復活の伝承について、以下のようなコメントを残している。

「パウロの記述は、歴史的資料が、その信頼性を認められるのに必要な、全ての事実を有している」

また、復活に関する目撃証言や伝承が記録された、新約聖書の他の書簡についても、その成立時期は、イエスの死後30年~50年以内のものがほとんどであり、その記録の高い信頼性が、広く認められている。

結論として、新約聖書の記録全体は、キリストの復活を裏付ける有力な証拠となるものと私は考える。