今は誰が注意しなくても子供は道路で遊ばない。
常識である。
だが、私が幼い頃の道路は立派な遊び場だった。
舗装はされてなかったので蝋石で落書きはできなかったがビー玉、メンコ、石蹴り、バリエーションは豊富だった。
大人達も道路で畳を干していたりする。
二枚の畳をお互いに寄りかからせて道路に敷いた棒きれの上に立てておく。
話の説明に窮すると表に出て、道路にクギで地図などを描いたりもする。
めったに自動車など通りはしないのだ。
山仕事の人間が佐々木小次郎の様に木挽き用の鋸を背にくくりつけて歩いていたり
牛車や馬車がフンを落としながら通ってゆく。
馬車が来ると竹箒を手に悪童どもが馬の背後に近づいていく。
馬の尻尾に竹箒をからめて尻毛を抜くのだ。
馬の毛を撚って小鳥用のワナをつくるのだ。
馬喰に見つかれば追いかけられるので
馬の毛を引き抜くと同時に箒を担いで駆け出さねばならなかった。
雨が降ればぬかるみ、晴れれば砂埃が舞った道路はアスファルトのおかげで快適な道になった。
車が多すぎて道路で遊ぶわけにはいかないが、なにどうせ子供などめったに居はしない。
居たとしても遊ぶ場所は家の中。