小学生の私は目立つことが嫌いで、学芸会といえば、担当の人数が多くてヘマをしてもわからないという理由で、合奏のカスタネットかトライアングルをいつも希望していた。

それなのに4年生の時、先生の指名でひとつしかないドラムをやらされた。

ドラムはスタンドにのせられ、舞台の中央に置かれた。

途中、ソロで演奏する部分もあり泣きたい気分だった。

練習を始めると、演奏の途中で間をとるように、スティックを高く揚げてカツン!カツン!とやる場面があり、自意識過剰の子供にとって、それによってさらに聴衆の注目をあびるかと思うとひどくつらかった。


学芸会の朝、無情にも熱も出ず、おなかも痛くならなかった。

舞台の位置につき、やがて幕があがる。

心臓が高鳴り、今時の表現なら、頭の中が真っ白だ。

無事に演奏は終了したけれど、誰も褒めてはくれなかったように記憶している。