視覚の記憶はくっきりと残るものらしい。


老松に月の額が我が家のどこかにかけてあった。


それはわりと大きな額で古じみて、あまり見栄えのするものではなかったが、なにか心惹かれるところがあった。

布団に寝た時に電灯のむこうの逆光の中に見えたような気がするが、よく覚えていない。

ただ、その落ち着いた情景を見ながら眠りについたような記憶がある。


昨夜、月の輝きの周りを群雲が流れるのを見て、そんな幼時の記憶がよみがえった。