かっちゃんの家で豚を飼っていた。


子豚を仕入れてきて、付近の家から出る残飯で育てていた。

夕方になるとかっちゃんがバケツをさげて残飯を集めてあるく。

残飯は大釜に入れられ煮直して豚に与えられた。


楊枝だけは入れてくれるなと、かっちゃんが言う。

豚が楊枝を飲み込んで死んでしまったことがあったらしい。


糞尿の処理が大胆で、大雨が降り増水すると川に流ししまう。

川に入る前の支流が我が家の脇を通っていたために、大雨が降る度に悪臭に辟易した。


時々、部落中に響き渡るような悲鳴が、かっちゃんの家から発せられる。

キーキーという、その子豚の悲痛な叫びは、いつまで続くのだろうと気が滅入るほど続いた。

一度、見物に行ってみると、二人がかりで子豚が押さえつけられカミソリを使って去勢されていた。

傷口は焼酎で洗われ木綿糸で縫われた。


鳴きわめくその脇で別の豚が餌を無心に食べるのを見て、豚は馬鹿なのだと思った。