桜の開花が伝えられたその週末、いそいそと早起きして上野公園へ。
朝８時のお花見。
咲いたばかりの桜は、まだ淡い淡いピンク色。

朝の公園は、澄んだ空気。
浮かれて私たちは、ビールを片手に桃色の空気の中を歩く。

きれい、きれい。
暖かな陽射しの中で、桜はどんどん開いてゆく。

また、桜の季節が巡ってきた。
世界のどこにいても、恋しく思ったこの景色。

アーモンドの樹の下で、ジャカランダの青の花の下で、懐かしく思ったこの姿。

上野公園は、思った以上の人出て、パンダちゃんは、１時間待ち、意外と空いていた『インドの仏』と『グエルチーノ展』を見て、心の休息。
グエルチーノは、青がうつくしかった。

月夜。
ふたりで並んで、桜の木々の下を歩く。
この花が咲いているこの時期は、切ないような熱があって、それは彼も同じなのか、仕事の後に急に車で連れだしてくれる。

湖みたいな、大きな池のあるあの公園へ。

思い出した。
前回来たのは、すこぶる体調の悪い年だった。
私は、花見をする元気もなかったので、車でこの桜並木の下を、何度も通ってくれた。
ルーフの窓を開け放って、何度も何度も見上げた空。

日本に帰ってきてから、４回目の桜。
タシュケントでも、お花見をしたね、て言う。
頭上にたわわに咲き誇る、桜、アーモンド、杏の花。やわらかな色彩が溢れるような、春の景色。

そしてまた。
満開の桜に、思い余って目黒川。
今年最後のお花見。

水辺の桜は、淡く儚くて、散る前に、花弁の芯が赤く色づく。
雪のように散る、花弁が、川面に浮かぶのを、ずっと見ていた。

夜。
お店が路地にたくさん出ていて、手作りのサングリアだの、牛たんだのを食べつつ、せっせと飲んでいたら、とても酔っ払い。
帰りの道が危ういほど。
桜の下は、楽しい気分。

そして、つめたい雨の降る週末。
桜の花びらは、もう殆ど落ちてしまったけれど、今年も何だかあたたかな思い出。

赤い橋の欄干が、桜の花びらにぼうっと浮かんで、とてもきれい。

さよなら、桜。