「原稿を覚えてはいけない」
と言う方は結構いらっしゃいます。
しかし私は結論から言うと、完璧に覚えます。
原稿を覚えてはいけない、と言う理由は幾つかあります。
「思い出す事に気を取られ、話す方に集中できないから」
「台詞みたいで、不自然になるから」
「思い出せなくなって、パニックになるから」
それでは、どうやって話せば良いでしょうか。
最も多いのが、原稿を見ながら話すというやり方です。
しかし私はお薦めできません。
原稿を拡げて話すには、まず演台の後ろに立たなければなりません。
そうすると聴衆との間に壁が出来ます。
またステージの上を動く事も出来ません。
演台の後ろにズッと立っていると、緊張を隠している様に見えます。
その分ステージを縦横に使って話すと、自信に満ちて見えます。
また原稿を見る際に、どうしても下を向く事になります。
その際に、聴衆とのアイコンタクトが途切れてしまいます。
また原稿を読む事で、それこそ不自然な感じになってしまいます。
例えばあのスティーブ・ジョブスのアイフォーンのプレゼンが、
原稿を読みながらだったらどうだったでしょうか。
当然ステージを歩き回る事は出来ません。
両手を使って聴衆に訴える効果も、かなり落ちるでしょう。
アイフォーンの革新性が、果たして同じように伝わったでしょうか。
少なくとも伝説的なスピーチとして語り継がれる事はなかったでしょう。
要点だけ覚えて、後はその場で話す、と言う方法もあります。
確かに考えながら話すのは日常的なため、自然に聞こえます。
しかしこれにも大きな欠点があります。
私達の日常的な話し方は、言い間違いもあるし、くどくなります。
あれもこれも言わなければと思い、どうしても言葉が多くなります。
時間が気になるから、早口になってしまう事もあります。
「あー」や「えー」が多くなったり、余計な話しで脱線したりもします。
また再現性に欠けるため、常にベストな状態ではありません。
スティーブ・ジョブスの例を、もう一度考えてみてください。
全くと言って良いほど無駄がなく、簡潔です。
だから余計に革新的に聞こえるのです。
しかし彼は、言葉だけでなく動きも含め、何週間も練習しています。
完璧になる迄、何度も何度も繰り返し、修正するのです。
目的は只一つ、聴衆が最善の印象を持つためにです。
つまり原稿を記憶するのではなく、完璧になるまで練習するのです。
そして言葉の方に合せて、原稿の方を変えていくのです。
その結果として、覚えているだけなのです。
具体的には、まず最初に、一通り原稿に書いてみます。
まとまって無くても構わないので、兎に角最初から最後迄書きます。
理路整然とはしていないので、無駄を削除し、修正していきます。
今度は原稿を見ずに、一度立って話して見ます。
そもそも書き言葉と話し言葉は、かなり違うからです。
不自然な感じがする所は、言葉に合わせて原稿の方を書き換えます。
また大切な事は、不要な箇所をバサバサとカットしていく事です。
聞いている方にとっては、重要ではない事が沢山ある筈だからです。
そしてカットするだけ余裕が生まれ、ゆっくり話せます。
また忘れてしまうリスクも減っていくからです。
そうやって何度でも、完璧になるまで練習します。
大切な事は、決して原稿を覚えてはいけません。
言葉がすらすら出てくるまで、修正しながら、繰り返す事です。
原稿はあくまでも、その記録でしかありません。
そして最終的な段階に来たら、
大勢の前で話すイメージで練習します。
聞き手に向かって話をする時は、一人で練習するのとは異なります。
だから本番で違和感を感じてしまう事が、あるからです。
漫才やコントだって、アドリブはあるにせよ、練習をしています。
不自然さがないのは、それだけ完璧に覚えているからです。
そして内容を完全に覚えているからこそ、
声のトーンや話の間、体の動きなど、会場の空気に合わせる事が出来るのです。
時にはあえてアドリブを入れたりすることすら可能になります。
「原稿を暗記してはいけない」
書いた原稿を丸暗記するのは、試験の一夜漬けの様な物です。
当然、すぐに忘れてしまいます。
大切な事は只一つ、完璧になるまで修正し、練習をする事だけです。
