花冷えのブログ

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DV、暴力、モラハラなどの物語、、、
実話に基づいた物語、、、
毎週日曜日に投稿、、、

ーーー相変わらず救急病棟は慌ただしく、熱気に包まれていたーーー

「今日のカンファ、誰が出るのーー!」
しずくはナースステーションで声を張り上げた。
(返事してよ……ったく……)

「保護室の患者さん、そろそろ出さないと……次々と急患来るんだから……」
しずくは患者の状態を確認するため、保護室エリアへ向かった。
(受け持ち看護師、いないな……シーツ交換で出払ってるのか……)

ふと、保護室のモニターに目をやる。

そこには、先日救急搬送された患者と二階堂の姿が映っていた。

しずくは足早に保護室へ向かった。
「二階堂先生、なにかありましたか?」

声をかけると、二階堂ははっとしたように患者から離れた。
「あ、ちょっと……近藤さんが胸が痛いって言うから、診察していたんだ」

「では近藤さん、また診察に来ますね」
そう言って、二階堂は保護室を後にした。

患者の病衣の胸元が、だらしなくはだけていた。

(二階堂先生……何を診察していたの……?)

「近藤さん、ご気分はいかがですか?」
「注射の仕方は血管走行に沿って……きゃはは!ごごごーー!イェイ!」
患者は笑い出し、まだ疎通は取れなかった。

気になったしずくは、カルテを開いた。

――乳がんの疑い・触診済み。
(乳がんの疑い……?
触診……?
二階堂先生が……?
精神科医が……?)

しずくは、そっとカルテを閉じた。

午後三時頃は、内科医が診察に入ることが多い。
病棟の自動ドアが開いた。

(あ、内科の後藤先生だ)

「後藤先生!私、乳がん検診に行きそびれて……先生、診ていただけます?」
思い切って声をかけると、後藤は一瞬固まった。

「ええ?僕、内科も兼ねてますけど……乳がんは専門外ですよ。
佐久間主任、ここ精神科ですよ?どうしたんですか、急に」

少し赤くなった顔に、しずくは笑って返した。
「ですよねーー!すみません!」

後藤は苦笑いして言った。
「ちゃんと産婦人科か外科に行ってくださいよ」

(じゃあ……二階堂先生の“乳がん疑い”と“触診”は、なぜ?
……いや、二階堂先生は勉強熱心だし。
産婦人科領域にも理解があるってこと、だよね)

もう一度カルテを開こうとした、その時。

「佐久間主任!カンファの時間ですよ!ピッチ鳴ってます!」
スタッフに急かされ、
「行きます、行きます!」と慌てて病棟を出た。

――保護室では患者が不穏となり、暴れている。
外では、桜の蕾が揺れ、春の訪れを待っていたーーー