母が亡くなった日、妻には連絡して置いた。

葬儀屋さんが決まり、母にドライアイスやら、枕飾りやらをセットしてくださったと。

今夜から実家に泊まるけど、夜一旦帰り、自宅で風呂に入り、着替えを取りに戻るから、その時一緒に実家にお参りに来て貰うことにしていた。

妻は、お供え何か買う?って、さり気なく聞いてくれる。「では、母はみかんが好きだったので、お願い。」


葬儀屋さんに香炉等をセットしていただいた。

姉に枕団子を作ってと頼んだら「あんたが作ってよ」と言った途端、駆けつけてくれていた叔母が「そのらい○○(姉の名)ちゃんが作ってあげなさいよ。」ありがたい。

作り方を読みもせず、米粉一袋全部開けて作り始め、6個を作ってくれた。

ボールにいっぱい残った米粉「これどうする?」

お前は子供か?四捨五入で60歳になるのに、何年主婦やって来たんだ?

次に枕飯を姉の家で炊いて持って来てと頼んだ。

程なくして5分くらいでご飯を持って来た。冷飯だ。おいおい、炊きたてのご飯をお供えしないと、母が旅に出る前に消化不良起こしちゃうじゃないかよ。

姉は、構わず箸を立ててお供えした。形だけ整えた。僕が明日朝、炊きたてをお供えしてねと言ったが、スルーされてしまったようだ。

この期に及んでも未だ、叔母や自分の息子前でも、母に対して、もっと気持ちを込めた所作振る舞いが出来ないの?


母はお花が好きだったので、枕花を飾りたいと言うと、叔母と従兄が「買って来るよ」有難い。お金を渡しお願いした。

白いゆり等の花籠だ。母も喜んでいるだろう。


叔母と従兄を見送り、姉と甥に母を見てて貰い、一旦自宅へ戻り、準備を終えて、実家に舞い戻った。

妻は姉が怖い。妻が姉に挨拶しても、目を合わせて返してくれない姉に会わせるのは忍びないが、こんな時は、我慢してくれた。

その上、紫色を基調にした可愛い花籠、みかん、柿まで、お供えしてくれた。母も大喜びだろう。

僕の唯一の自慢は、よく出来た妻を娶ったことだ。本当に気がきくね、ありがとう。

娘も母の枕元で泣いて悲しんでくれていた。

母は僕の自慢の娘と息子が大好きだ。


その夜は、僕がもう一度妻と娘を自宅に送り、舞い戻るまでは、甥に母を見ててくれる様に頼んだ。甥は母が目をかけていたせいか、僕を理解しつつ姉との間を取り繕おうとしてくれる。ちゃんと育ったな。でも、もう無理だ。姉から酷い仕打ちを受けて来たので。

妻には僕に万が一のことがあったら家族のみの密葬で、姉に知らせることはせず、事後報告でいいと頼んである。


続く