その日は、実家に泊まると妻に連絡し、今日いろいろあったことを報告して置いた。

明日の夜、僕は一旦帰宅して風呂に入り、着替え等を用意して、明後日の朝から、妻と娘と母のお参りに来て貰う。息子は怖いらしく、期末テストもあり学校へ行くことにした。


翌朝、死体検案書を取りに刑事さんから頂いた住所を頼りに車で病院に向かった。

到着すると、道路沿いとは言え林の中にあり、お化け屋敷の様な佇まいだ。検死を請負う医者とは、こんな感じなのか?


中に入ると、町医者の様にすぐ受付がある。

すみません。どうやら受付も一人か?

「昨日お世話なった者で、検案書を頂きに来ました。」

「はい、少しお待ち下さい。先生が来るまで、お会計をお願いします。こちらです。」

何と、4万円近い。思わず、えって言ってしまった。出張費もあるし、こんなもんか?


やがて院長先生がやって来た。

「座って下さい。」

「こちらが死体検案書です。お母さんの死因は、虚血性心疾患で、これは広義ですので、わかり易く言えば心筋梗塞です。ヒートショックの可能性も考えられますが、何とも言えません。ただ、突然心臓が止まってしまった様で、助けを呼ぶことも出来なかったと思います。その証拠に肺にはお湯が入り込んで無く、お口に多少入っていた程度でした。」

もう、説明の途中から泣いていた。

「では、母は少しも苦しむことなく、逝ったのですね。」

「恐らく、突然心臓が止まってしまった為、声も出せなかったと思いますので、誰かがお家に居ても助けてあげられなかったと思います。お母さんのお顔も、苦しんだ表情は見当たりませんでしたよ。」

「苦しまずに、突然逝ってしまったのですね。唯一、救われました。話して下さりありがとうございました。母は1人で暮らしてましたが、近くに姉が住んでます。でも、突然のことで、誰も助けてあげることは出来なかったのですね。」


帰り道、お母さん、僕に見つけて欲しかったんだよね。会社員の僕は月曜日には来れないけど、昨日は口腔外科の予約を取って、僕が来ることを知ってたんだよね。そして、外科に行って、手術や入院とかになったら、僕が大変だと思ってくれたんでしょ?


続く