日本人には殆どの場合関係のないことだと思うし、恐らく、大半の日本人は考えたこともない事なのだと思う。

随分前のことだけど、沖縄にある米軍基地で地元の人(日本人)から聞いた話。

基地内の施設で働く日本人は、仕事以外でも基地内の施設を利用できるってことで、地元の人に基地内のバーに連れっていってもらったことがある。
その時、米兵の彼氏を持つ日本人女性も一緒だった。

バーの中では大勢の若い兵士達が酒を飲み、ダンスをする者、語らう者、それぞれに楽しんでいる。
でも、アメリカ人だからか、日本人の若者と酒の飲み方が少し違うような雰囲気があった。
そんな話を、米兵の彼を持つという彼女と話した。

彼女が言うには、若い米兵はいつ何時前線に送られるかわからない。
有事になれば当然死なない保証などどこにもないから、日頃からそういう覚悟ができているらしい。
そんな、いつ死ぬかわからないという意識が心の中にある彼ら米兵は、酒を飲んで騒ぐ時も本気で騒ぐのだと言う。
もしかしたら、今日、この酒が人生で最後になるかもしれない・・・
そういうある種の緊張感から、自然とそういう楽しみ方になるらしいのだけれど、日本人の若者が居酒屋やカラオケで騒ぐそれとは根本が違う。
明日はないかもしれない、だから飲む時も本気なのだそうだ。

ある意味、そんな彼らを羨ましいとも思った。
心底本気で楽しんでいる、真剣に楽しんでいる。同じ楽しむのなら、明日の仕事の事や帰りの電車の事を心配しながら、付き合いで楽しむよりは、「明日死んでも悔いはない」くらいの勢いで楽しめた方が良いからだ。

でも反面、いつ前線に送られるかわからない、、、そんな緊張の毎日など御免だとも思う。
そこはやはり日本人、本気で楽しむ酒が飲めない方が良いと思う。
やはり、前線とか死とか戦争とか、、、、そういう言葉を無縁の世界である方が良いに決まっているのだけれど、、、、。

やはり日本人は、良くも悪くも平和なのだ。
死という緊張感が良いなんて決して思わない。ただ事実として日本人は平和なのだ。
普通に生活していれば死の恐怖や緊張なんてどこにもないという良い意味での平和と、

緊張がないばかりに、命の重さも尊厳も考える必要などないという、悪い意味での平和。

どちらの平和も共存しているのが日本なのだと、そう感じた夜の米軍バーだった。