ビジネスを始めた頃、一番最初に世間様に教わったのが信用という概念です、信用の信とは人の言と書いて人が発すべき正しい言葉、嘘偽りの無い言葉、それを用いるということは正直であり、有言実行し人を裏切らないこと、人がお互いに持ち合うことだと勝手に思い込んでいましたが、実は信用とはお金の無い人がお金のある人に一方的に強要される事柄で決して相互の概念ではありません、お金のある人はお金の無い人を人を信用する必要がありませんし、信用もしません、相手にすらする必要もないのです、もしお金の無い人がお金のある人に係わってお金儲けしたい欲がある時は全てのリスクを背負いお金持ちを信用し、お金持ちにも充分なメリットのあるビジネスを提案して採用して貰う必要があります。
あるお得意様の社長から久しぶりにお呼びがかかり会いに行くと、「今回はお前を通して買ってやるから調査して情報を持って来い」と有り難いお言葉が・・急成長しているその会社の社長の名刺には新しい情報もあるので、自分の名刺を出し「社長!名刺交換お願いします」というと、その社長は笑いながら名刺をくれたのですが「飲み屋で使うなよ!2~3度飲み屋さんから憶えの無い請求書が廻ってきて、自分の名刺を証拠に出すので払ってやったが困ったことをする輩がいたもんだと」ビジネスそのものは有り難くも売上に繋がりましたが、大手企業の役付の名刺は換金できるのです、この社長の会社は中小の規模でしたが・・
大手企業の部長クラスの名刺が請求書と共に会社の経理に届くと金額に係わらず支払われ接待費として処理されます、まず取りはぐれが無いので、そんなVIPはいくらツケが溜まろうがお店のほうからは大歓迎で最高のサービスを提供されます。
本筋からはそれますが飲み屋のツケの話が出たので少し怖い裏の話を一つ、その筋の人から聞いた話です、[飲み屋で気に入った娘の手に入れ方を教えてやろう、先ず当分の間は散財してやる、店からすれば堅気であろうが我々のような者の金であろうが金は金、沢山使ってやると大事に扱われ無下にできなくなる、そして頃合いを見計らい少しづつツケ払いにする、そしてツケが溜まりだし金額が大きくなると、店のママが少し心配を始める、そしてついにそろそろツケのご精算をお願いしますとなると、俺のお気に入りのあの娘が一人で集金に来るなら払ってやろうと切り出す、ママの立場からはあの娘がお気に入りで来てくれているのであの娘にも集金義務があるし少々危険はあるがそれくらいのリスクを乗り越えられなくてこの業界でやっていけない、かくしてその娘を説得し送り出す・・きたらモノにする]・・・
自動車メーカーでも新しいモデルの開発には試行錯誤が繰り返され始めから答えのあることは有りません、目に付くボディ形状だけで無く、新しいエンジンが載るフレーム周りはその都度設計され改良されます、その作業はとりあえず継ぎ接ぎでも組み付けてみて不具合のある部分が検討され修正されます、そのパーツは一発で合格なんてことには逆になりません、最近でこそ3次元シュミレーターで検討も可能ですが、とりあえず金型を起こし、修正し、駄目なら作り直し、OKが出ても全然違う方向から不採用になるリスクも有ります、全てに時間制限があり、通常その金銭リスクは下請け孫受けが被ります、設計変更が繰り返えされ、OKが出るまで対応を迫られます、技術は下請け、孫受けにあるのです、下請け孫受けは運が悪ければ他動的に大損害を被ります。下請けに仕事をだす会社もグループ企業の一つであり最高意思決定会社ではありませんので逃げますし保証もしてくれません、うちの仕事が欲しければ泣いて付いて来いと・・・通常その後その損害を埋め合わせする為仕事が廻ってくるそうですが、契約書も約定書も何もありません、有るのは一方的な信用だけです。
当時世界の金型市場のシェアの8割は日本にあり、ある意味日本のお家芸ともいえました、金型そのものが商品なので金型には様々な機能や信頼性が求められます、正確に形状を造る性能、、安全性、メンテナンス性、使用される材料の無駄を少なくする歩留まり性、新しい機能部品を組み込んでいく進歩性等々・・、これらをすべて考慮して設計制作された金型は最終的にクライアントの国に行って日本とは比較にならない精度の悪いプレス機で答えを出してやらなくては成りません、まるで芸術品ですが、そんなタイトな条件をクリア出きるからこそ世界8割ものシェアになったのですが・・・管理に派遣されたクライアント側の担当者は滞在中の全ての移動案内通訳を負担させ自分たちは折角日本くんだりまで出張に来たのだからとUSJで遊ぶことも忘れません、たまに現場に来て頓珍漢な質問をするので文句を言うと、上会社の通訳を兼ねた担当者が左遷されたそうです・・・
私が理不尽に感じたのはこの国はお金を払っても買えないモノが沢山あるということでした大手商社は大手企業だけ相手にして安全に売上を上げれれば一見さんはお断りなのです、モノを売る会社からモノを買えない、ある意味社会が成熟している証拠でしょうが、ベンチャービジネスが育ちにくい環境でもあります、関連商社を通して買ったりできれば未だましな方でそれでも欲しければコンテナ一本分買えとかリスクを背負わされることも有ります、ただこの物流の在り方は結局のところ東南アジアの新興国の企業に商品開発を加速させ日本の商品の販売先を取り合うライバルにまで育てたことにならないのでしょうか?
信用してくれとは申しませんが、そんな大資本に胡坐をかいたような考え方は何時までも通用しなくなっていますよ・・・