普段はコンサート終わりの当日、遅くとも翌日にはブログを書き終えているのだが、今回は年末年始の慌ただしさに追われ、気がつけば1週間以上が経ってしまった。
年末といえば、やはりベートーヴェンの交響曲第9番《合唱》である。昨年は関西フィルと京都市交響楽団の公演に足を運び、それぞれの《第九》を聴き比べる形で、このブログをまとめることにした。
曲目/Programme
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調作品125《合唱》
Ludwig van Beethoven: Sinfonie Nr. 9 d-Moll, op. 125 „Choral“
初演:
1824年5月7日、ウィーン・ケルントナー(Kärntnertor)劇場にて。作曲者監修・指揮のもとでの初演。
編成:
独唱: ソプラノ、アルト、テノール、バス
合唱: 混声四部合唱
フルート2(第4楽章にピッコロ追加)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、バスドラム、シンバル、トライアングル(第4楽章)、弦楽五部
楽章構成:
第1楽章 Allegro ma non troppo, un poco maestoso(ニ短調)
第2楽章 Molto vivace – Presto(ニ短調)
第3楽章 Adagio molto e cantabile(変ロ長調)
第4楽章 Presto – Allegro assai …(「歓喜の歌」を含む合唱付きフィナーレ/ニ短調→ニ長調)
関西フィルハーモニー管弦楽団 「第九」特別演奏会 2025.12.27
指揮 鈴木優人
管弦楽 関西フィルハーモニー管弦楽団
独唱
ソプラノ 櫻井 愛子
メゾ・ソプラノ 林 眞暎
テノール 宮里 直樹
バリトン 大西 宇宙
合唱
関西フィルハーモニー合唱団
大阪、ザ・シンフォニーホール
Kansai Philharmonic Orchestra Beethoven's 9th concert
SUZUKI Masato, Conductor
Kansai Philharmonic Orchestra
SAKURAI Aiko, Soprano
HAYASHI Mae, Mezzo Soprano
MIYASATO Naoki, Tenor
ONISHI Takaoki, Baritone
Kansai Philharmonic Choir
The Symphony Hall, Osaka
鈴木氏のベートーヴェンを聴くのは、10月の交響曲第2番に続き今回で2度目となる。
前回同様、古典的な対向配置を採用。編成は正確には数えていないが、コントラバス6本ほどの14型と思われる小ぶりな体制で、それにもかかわらず実に力強い演奏を聴かせてくれた。
この日は開演直前、電車の遅延により開演を少し遅らせる対応が取られた。そのつなぎとして、プログラムにはなかったものの、鈴木氏と独唱の宮里直樹氏・大西宇宙氏によるトークが行われた。
ちょうど両氏が前日にNHK Eテレ「クラシックTV」に出演していたこともあり、番組の裏話などが披露され、場内は和やかな雰囲気に包まれた。
テンポは全体的に速めで、1990年代以降の原典版重視の校訂の影響をうかがわせる。ビブラートを控えたピリオド奏法的アプローチも前回同様で、音像は非常にクリアだった。
第1楽章は空虚五度の序奏から始まる、まさに「宇宙の創造」。対向配置によって第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いが鮮明に浮かび上がる。
第2楽章は繰り返しあり。
第3楽章は美しい楽章ではあるが、これまでの演奏ではどうしても眠気を誘われがちだった。しかし今回は全くそのような倦怠感を覚えず、流れのある集中力の高い演奏に驚かされた。
第4楽章は第1〜第3楽章の旋律を否定し、「歓喜の歌」を提示する劇的構造はやはり圧巻である。
日本のオーケストラでは、トゥッティで「歓喜の歌」を演奏する際、トランペットの音が控えめになることが多いが、関西フィルのトランペットは途中に小さなミスこそあったものの、実に力強く華やかに歌い上げた。
バリトン独唱は「おお友よ、このような音ではない!」の直前で舞台入りし、独唱4人は指揮台のすぐ後ろ、演奏会形式のオペラと同様の配置で歌った。
コーダ手前の Presto 部分では、独唱が歌わない演奏も多いが、今回は独唱陣が合唱団のもとへ歩み寄り、ともに歌い上げるという演出が施された。「人類皆、歓喜を分かち合う」という作品の理念を体現したこの場面は、個人的に非常に好ましい。
合唱が高らかに歌い切ると、猛烈なテンポのコーダへと突入。終演後、会場はブラボーと拍手喝采に包まれた。
鈴木氏の古典的アプローチによる、きわめて紳士的で満足度の高い《第九》であった。
京都市交響楽団特別演奏会 「第九」コンサート
指揮 沖澤のどか
管弦楽 京都市交響楽団
独唱
ソプラノ 嘉目 真木子
メゾ・ソプラノ 小泉 詠子
テノール 小原 啓楼
バリトン 山本 悠尋
合唱
京響コーラス
The Special Concert “The 9th Symphony of Beethoven”
Nodoka Okisawa, Conductor
Soprano Makiko Yoshime
Mezzo Soprano Eiko Koizumi
Tenor Keiroh Ohara
Baritone Yukihiro Yamamoto
Chorus Kyoto Symphony Chorus
編成はコントラバス7本前後の16型と、通常編成に近い体制であった。
関西フィルほどテンポの速さは感じられなかったが、印象に残っているのは京響コーラスの水準の高さである。
関西フィルの合唱団も聴いたことはあるが、やや不安を覚える場面もあった。それに対し、京響コーラスは発声の正確さ、オーケストラとのアンサンブルの精度ともに非常に優れており、終始安心して聴くことができた。
終演後はブラボーと拍手喝采に包まれたが、個人的にはより深い解釈の演奏を望んでいたので、今後に期待したい。
以上

