来年のロンドン五輪から正式種目となる女子ボクシング。強化選手の一人として日本アマチュアボクシング連盟(日連)が抜てきしたのがお笑いコンビ「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと山崎静代(32)=よしもとクリエイティブ・エージェンシー=だ。その実力やいかに。
山崎がボクシングを始めたのは08年。漫画「あしたのジョー」を読み、感動したのがきっかけだった。直後にNHKドラマ「乙女のパンチ」でボクサー役を演じるという奇縁もあり、本格的にジムに通うように。「しばらくして女子ボクシングの五輪採用が決まり、目指してみようと。一生懸命に何かをやれるチャンスを与えていただいた」と話す。
身長182センチ。「以前より15キロほど減量した」といい、五輪採用階級では最も重いミドル級(75キロ以下)で出場を夢見る。国内に大柄な対戦相手がいないため、公式戦経験はなかったが、デビューも決定。9月7日から台湾で開かれる「第1回台北市カップ国際トーナメント」に同級日本代表として出場する。
5月の強化合宿では2階級下の選手とスパーリング。力強い左右のワンツーで圧倒したものの、相手のパンチをまともにくらう場面もあり、防御の甘さが目立った。本人も「やろうと思うことに技術が追いつかない」と実力不足を認める。
6月20~23日には韓国・木浦に遠征し、今年の全韓国選手権ウエルター級、ミドル級それぞれの準優勝者とスパーリング。山根明・日連会長(71)は「ミドル級選手とはやや分が悪かったが、ウエルター級相手では山崎が上だった。すごく成長している」とほめる。
「山崎には3時間続けて練習するスタミナがある」と評価するのは、樋山茂・日連ジュニア強化委員長(57)だ。「それほどの選手は男子にも少ない。体格もいいし、期待できる」。女子の試合は2分4ラウンドだ。
ロケ先などでも体育館やジムを探して練習し、強豪の高校で出げいこすることも多い。「乙女のパンチ」でも指導をした専属トレーナーの梅津正彦さん(42)は言う。「かつてはタレントのお遊びと思われたが、彼女の真剣さが理解され歓迎されるようになった」
五輪ボクシングはアマチュア選手のみで競い、女子は全10階級のうちミドル級とライト級(60キロ以下)、フライ級(51キロ以下)で行う。日連は今後、全日本女子選手権(来年3月、広島市)の結果などを踏まえ、五輪予選会を兼ねた世界女子選手権(同5月、中国)の代表を選ぶ。
女子の五輪枠は36人(各階級12人)で、内訳は同選手権8強以上の24人▽国際アマチュアボクシング連盟(AIBA)が地域バランスなどを考慮して選ぶ大陸枠11人▽開催国枠1人。昨年の広州アジア大会でフライ級銅メダル獲得の、新本亜也(24)=クリエイティブジャパン=ら有望選手もいる。
国内ではかつて、ジムに通う女性といえばダイエット目的だったが、90年代ごろから競技志望者が増加。日連は、AIBAが01年に世界女子選手権を初開催したことなどを受けて02年に女子を認め、03年から全日本女子大会(現在の全日本女子選手権)を実施。「連盟登録選手は約130人」(原千恵・日連女子委員長)という。世界では中国、北朝鮮、インド、ロシア、米国などが強く、日本が世界女子選手権でメダルを獲得したことはない。山根会長は「3階級とも五輪出場権を狙っていく」と意気込む。
「年齢的に最初で最後のチャンス。命をかけてやりたい」と、固い覚悟の山崎。ミドル級は世界の選手層が薄いとみられ、五輪出場の可能性はゼロではない。飛躍はなるか。【来住哲司】
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