オッス!オララブライバー(にわか!

近頃はじめたスクフェス。その中でも心をわしづかまれた曲の作詞を勝手にしました。

完全に黒歴史でしかない気がしてるのですが、時には突き抜ける強さも必要だと自分に言い聞かせてここにあげときます。


Mermaid festa vol.1


 3番歌詞

 「ねえ時間がないよ 夏が終わるよ」
 波音に声が消える
 変わる空色 沈む太陽
 恋はまるで蜃気楼

 人気の消えた 夜の海
 心が揺れてる ふたり
 さらわれた伝えたい言葉 わたしをつかまえて

 寄せては返す
 波のような こんな恋は 初めてだから
 胸に焼きつけて ほしいの
 君の顔 にじませた わたしの涙

 動揺してるの?緊張してるの?
 気づいてほしい 奪ってほしい
 あなたから 熱くなれ

自評

 この曲はスクフェスでプレイすると一番だけで、曲が終わる時に「さよなら」と言われるのですが、そこで不覚にもドキッとしてしまいドハマりした曲です。ハマりすぎて生まれて初めて作詞しました。

 とりあえず歌詞なので韻を踏むことと原曲を強く意識しつつ、夏の恋、海、そしてマーメイドというモチーフでやりました。マーメイドは悲恋のメタファーということらしいのを初めて知り勉強になりました(なんの?)。それでこういう曲調なわけですね。自分ではきれいにまとまったと思っていましたが、その後ベストアルバムを聞いていろんな曲のフレーズとカブっていることがわかり、自分のボキャブラりのなさに呆然としました。しかし冷静に考えても韻とモチーフを大事にするとこうなるんだよなあ。

 惹かれ合ってるけれども叶わない、そんなイメージで。脳内で3:00くらいにねじ込んでください。


ダイヤモンドプリンセスの憂鬱


 3番歌詞

 視線奪うあの子の(do you know?)
 その秘密君はわかる?(kira-kira)
 心つよく抑えても(I can't stop)
 惹かれていく princess heart

 なにもかもわかるというのなら
 隠してたわがままを今夜は許して

 君も知らない本当の私
 予想超える出来事求めてる
 怖い? だけど叶えてよ
 朝に消えてしまう夢でも私かまわないの
 そんなことを望むのはいけないコト?
 秘めた願い 堕ちていきそう

自評
 
 かっこいい系のメロディーですね。難易度エクストリーム初挑戦で砕け散った曲です。ダイヤモンドだけにな(?)。

 この歌詞は僕の中のイメージ優先で韻とか全然考えてません。人気絶頂のアイドルたちの密かな願望というアダルトなイメージでやりました。背伸びしたい感じを出したかったのですが、やりすぎるとあくまでアイドルって感じを壊して(AV)しまうので、その塩梅に苦労しました。というか2番サビの中2っぷりはなんなのかだれか教えてください。
 「挑戦してよ?」に勝る挑発フレーズを真剣に考えたのですが、まったく勝てる気がしなかったので遠まわしに誘うフレーズにしました。「挑戦してよ?」って強すぎだろ。

 ステージの上の姿はすべて満たされているようだけど、実は物足りなさを感じてるってのは人気絶頂のアイドルだから許される憂鬱ですかね。変なのがスリルを求めてヘタすると坊主ですからね(具体例については触れてない)。脳内で2:45あたりにねじこんでください。

 こんなところです。なお、この記事は僕が死にたくなったら消します。以上。




生きてます。
日々の雑多なツイートの中にネタが埋もれないようにここに残しておきます。

2月11日
厳寒が続いていた中、この日はよく晴れて暖かく、ドライブがてら廃墟を探索しました。
スラムに住んでいる故、車を適当に走らせると廃墟をチラホラ見ることになります。今回はそのうちのひとつ。



雪に閉ざされて近寄れなかった廃墟。このトンネルは天井が低くてコンクリートが割れていて今にも崩れてきそうでした。足下には瓦礫が堆積していて、踏むとパキパキと音を立てます。潜入任務なら一発アウトの優れたセキュリティと言えるでしょう。



壁に空いた大穴。ここから入れよという声が聞こえてきそうですが無理です。こっち側雪が深いんです。なるべく入った形跡を残したくないので。足跡とか残すの嫌なんだよね(ウロウロしてたらがっつり残った



全容です。恐らくここは何かの工場だったのではないでしょうか。センターにポツンと置かれた洗濯機が違和感ありまくりで、人が出入りしてる気配を感じさせて不気味でした。



トンネルは全部で五つほど。車の出入りに使ったのかもしれませんが、軽自動車でも通れないような大きさなので用途はわかりません。奥の階段から2階があったことがわかりますが、ご覧の通り屋根から崩落しているので、今は見る影もありません。青空と屋内の影のコントラストに魅了されます。



事務室か作業室だと思われます。目についたこの標語が見る者を郷愁と想像の世界へ誘います。ここで働いていた人びとは今どこで何をしていて、どうしてここを去ったのかと。恐らく答えることができる人はもういないでしょう。色々と偲ばれます。



作業場の最奥です。休憩室か何かだと思いました。割れた窓から猫かなにかが出入りしている形跡があります。



屋内にも関わらず雪が積もっています。屋根が剥がれて外と繋がっているからです。梁は折れて雪がひどくふればここも崩落しそうです。

センチな気分になった僕はポエマーとしてTwitterに詩を呟きました。ここにも載せときます。


二月の正午前
強い陽射しが雪を解かす

解け出した雪の滴が
木のあばらの隙間からしたたり落ちる

誰かの夢と記憶が
その骸をさらけ出す




死体はその姿で物語る、といったところです。

OUTER OPS:奇妙な分隊



 孤独が恐ろしいのは、孤独そのもののためではなく、むしろその孤独の条件のためである。もし、あなたが孤独を恐れているなら、考えてみて欲しい。あなたも死を恐れるのは、それは死そのもののためではなく、その死の条件によってであるのと同じだということがわかるはずだ。





 風のない夜だった。波の揺れに体を任せ、漂っていた。俺はうとうととしながら、うすい意識の中でこれまでのことに囚われ続けていた。

 2週間前。忙しく動いていれば忘却してしまうような瑣末な出来事まで、未だに俺の頭のなかに強くこびりついているのは、それを落とそうとすればするほど、出来事のディテールが詳しく思い起こされ、本当は朧気になっている記憶と新しく浮かぶ推測とが相まって、新たな色を加えるからだろう。こうして、俺の中に黒く根の深い汚れが広がり続ける。忘れられるはずがないのだ。四六時中、こうして頭の中で、忘却することと正反対のことをしているのだから。

 2週間前――。

「今日はポテトとソーセージとサラダだよ。ホソカワは、パンよりもこっちのが好きだろ? ほら、マヨネーズもこっそり借りてきたんだ。使ってよ。ロックフィッシュは見た目は怖いけど、本当はいいやつなんだ。ホソカワにもってくって言ったら、周りには内緒にしてくれたよ」 

 鉄格子の下から、トレーが差し出された。トレーには樹脂製の器と、木製のスプーンがのっていた。

「ごめん。あまり食べる気にならない」無愛想に返した。

「そう言わないでさ? ホソカワが食べ終わるまで、僕はここを離れられないのは知ってるだろ」

「そんなに心配なら、おまえがずっと俺を見張ればいい。あの看守に言ってくれ、誰かに叱られて俺に八つ当たりしに来るなら、さっさと戦場に行って銃を撃ってくればいい。誰かの血を見て絶叫を聞いたら、さぞ爽快だろうなああいう奴は」

「ホソカワさ、また寝てないんだろ。顔色が悪いよ」

 俺は渋々トレーを受け取って、ベッドに戻った。とりあえずミルクを一口飲んだ。ミルクと言っても脱脂粉乳で、上澄みの下の溶け切らずに残ったダマが、あの独特のくさみを出していた。

「副司令も言ってたよ。一時の気の迷いがああいうことを引き起こすんだって。反省のために今は静かにしてもらってるって。他に罰は受けてないんだろ?」

「カズヒラが?」

 俺は手を置いて顔を上げた。

「この前珍しく食堂に来てさ。ちょっとね。あの作戦から凄く忙しいみたいだから」

「俺のことを、なんて言ってた」

「いや、それ以外はなにも」

 俺は食堂の様子を思い浮かべた。しかしそれはカズヒラとチコが仲良く席を並べている様子ではなく、むしろ名も知らないような隊員たちの姿で、その隊員たちが談笑している。話題に上がるのは、俺のことだ。

「いい反面教師だよな。他の奴らは喜んでるんだろ。あの日本人がやらかして牢屋に入れられていい気味だってな。俺は奴らにいい話題を提供してやれたよ」

「そんなこと、ないよ」

 なんとなく、チコの言い方に言いよどみが伺えた気がした。俺は神経質になっているようで、気がつけば貧乏ゆすりをしていた。この頃出てきた癖だ。

「さあ、早く食べちゃってよ。このあと訓練があるんだ。僕も早く使えるようにならないとね」

 スプーンをとって、ポテトをすくった。薄味だったが、よく噛めば素材の味を感じることができる気がした。それからソーセージに手をつけたが、皮が硬くてうまく切れず、弾みがついてトレーからこぼれていった。

「スプーンじゃ食べにくいよね。でもここにはフォークを持ってこれないから」

 俺はスプーンを見つめた。木製のスプーンは丸くて分厚かった。営巣にフォークを持ってこれないのは、マリオのように、凶器として使うやつがいるからだ。それもわからずに、あの日、俺はマリオに言われるがままにスパゲティを茹で、フォークと一緒に持ってきた。マリオは初めからこれが狙いだったのではないかと思うようになったのは、ここに入れられてからだ。自分の間抜けさに腹が立った。

「このスプーンだったら、なにができるかな」

 思ったことが口から出てきた。

「どういう意味?」

「スプーンじゃ自殺もできないよな」

「なにを言ってるの?」

「この器もそうだ。割って破片にできないようになってる。それが狙いだろ。このトレーだってそうだ」

「もうやめようよ」

 口から出た言葉は弾みがついたように、転がって大きくなっていくようだった。止められなかった。

「言えよ。俺はどうしたらいい? このスプーンを飲み込んだらいいのか? なぜおまえが食事を持ってくるんだ? 看守のクソ野郎にさせないのは同情を誘うためだろう。おまえも一度、仲間を売ったことがあるもんな。そうすれば俺が気を許して何かしゃべるだろって、そういう目的でつかわされてきてるんだろ」

「そんなことない!」

「副司令の考えそうなことだ。言えよ。飯が終わったら、そのクソ忙しいはずの副司令にこれを報告しに行くんだろ。今日はこんなことを喋ってました、この前はこんなことを喋ってました、それが他の隊員たちにもいくんだろ? いい笑い者だ。それとももうなってるか? どうせここだって、また盗聴されてるんだろが! なあ、聴いてるんだろ! 俺はどうなるんだ! いつまでつづく、こんなのはもうまっぴらだ! 早く俺に尋問するなり、なんなりするといい! なあ、答えろよ!」

 気づけば立ち上がって、鉄格子のところまで来ていた。感情に任せて喚き散らしたが、俺は意識せずに対象をとっていたようで、チコに怒鳴りつける形になっていた。営巣の照明に照らされて、チコの表情はわからなかった。

「苦しいのはわかるよ。でも、本当にわからないんだ、何も」

 チコが押し殺したような声で、ようやと言った。鼻をすするような音が聞こえてきて、俺は我に返った。背筋が寒くなるのを感じた。

「自分を責めるのもわかるよ。でも知らないんだ。ごめん、これ、後で取りに来るから」

 チコが営巣を出て行った。俺はその姿を見ていた。トレーを蹴飛ばした。ポテトが砕けてミルクと一緒に俺の服と床とに散らばった。足元にはマヨネーズだけが取り残されていた。

 俺はなにをしているんだ、チコは本当に俺を気遣って来てくれたんじゃないか。それをこうした形で確認することになったのは、馬鹿が、年下相手に怒鳴りつけて。

 自分が惨めで情けなくて、俺は顔を覆うことしかできなかった。


 つづく

 カズヒラを除き隊員は前方に三人、後方に一人。カズヒラが首を振って合図をすると、前方の隊員三人が銃を構えてにじり寄ってきた。銃口は俺に向けられて俺は両手を挙げていることしかできなかった。マリオは俺の背後でしゃがみこんでいて、やがて観念したのか、銃のスリングをゆっくりとした動作で肩から外した。

「勝手に動くな!」

 隊員が殺気立って大声を上げた。やめてくれと言いたくて、俺は声にならない声を漏らしてしまう。

「体が重いんだ。外させてくれてもいいだろ。もう撃ちやしないよ」

 マリオは大きな動作で、ぶら下がっていたM16を床に置いた。その声は弱々しく、いかにも降伏しているように見えた。隊員は慎重に隙を見せぬよう俺たちの方に近寄ってくる、一歩一歩に時間をかけながら。全ては着実に閉幕へと近づいているようだった。

 俺に銃口が突きつけられる。マリオから引き離され、身体検査をされ武器を持っていないのがわかると、壁に体の前面を押し付けられた。腕に痛みが走った。首を回してマリオの様子を伺うと、他の隊員二人が、動かなくなったマリオを立たせようとしているのが見えた。しかしマリオは身長2メートルに迫る大男で、体から力が抜けたマリオの体を起こすのは二人の男手でも苦労していた。マリオは麻酔薬が効いたようでぐったりと肩を前に落としていて、負傷した兵が運ばれるように腕を首にまわされ運ばれていく。

「手間をかけさせやがって」

 俺の腕に拘束具を取り付け終わると、隊員が言った。背中を銃で小突かれ、俺は歩きながら、運ばれていくマリオの背中と、近づいてくるカズヒラを交互に見ていた。カズヒラは腕を組みこちらを見ていた。サングラスの奥の彼の瞳には今、どんな表情が宿っているのだろう。恐れをなして俺は考えるのをやめ床に目を落とした。床には引きずられたような血痕が残されていた。

 この血痕はなんだ。目で元を辿ると、それはマリオの足元から続いていた。いつマリオはこんな傷を負ったのだろう。麻酔弾は麻酔薬の入った注射針を飛ばす代物で、このような出血が起こるようなことはないのだが。

「おいなんだ? この血は」俺の後ろにいた隊員も、この血痕に気がついた様子で訝しがった。

 そして、マリオとカズヒラの距離がおよそ2メートルに迫った時だった。

 突如マリオが動き出した。左にいた隊員の喉仏に肘を食らわせ、右にいた隊員の目元目掛けて頭突きをすると、続けて蹴りを放った。俺と後ろにいた隊員は呆気にとられてしまった。

「まだ起きてます!」

 俺をどかせて隊員が声をあげて銃を向ける。しかし前方にはマリオとカズヒラが重なっていて、マリオを撃てばカズヒラにも危害が及ぶ危険性があった。マリオはそれを承知なのか、喉をやられうろたえていた隊員を壁際に蹴り飛ばすと、カズヒラに迫る。マリオの右袖は血に染まっていて、左手には血濡れた何かが握られている。それは金属的な光を反射させていた。

 それはフォークだった。マリオはフォークを自分の右腕に刺して気付けにしていた。
 
「貴様、正気か!」

 即座に腰の銃を抜いたカズヒラの顔を目掛けて、マリオは自分の血濡れた袖を振るった。鮮血がサングラスに張り付き、外れた弾が壁で跳ね返って天井に吸い込まれた。俺たちの目の前で、にわかに白兵戦が始まった。カズヒラはうろたえず、迫ってきたマリオとの距離を取り後ずさる。近ければ捨て身のマリオに銃を取られる可能性があった。しかし逃すまいとマリオも距離を詰める。再び発砲しようとしたカズヒラより一手早く、振るった右腕の拳がカズヒラの腕を捉えた。衝撃が顔まで及びサングラスが弾き飛ばされる。次弾はまたも外れ、壁に食い込んだ。カズヒラは転がって距離を取る。

「副司令! そいつから離れてください!」

 マリオは巧みに射線上に自らの体とカズヒラを置き、二人は動き続けていて、援護射撃は許されなかった。マリオは素早く腰から抜いたベルトを右腕に巻きつけ、鞭のように振るうと、ついにカズヒラの銃を叩き落とした。マリオに拾われるのを避けるため、銃が蹴り飛ばされた。それが俺たちの方に転がってくる。

「来い!」

 カズヒラが胸元のボタンを開けた。銃を失ったのを勝機と見て、マリオが詰めに入ろうと飛びかかった。ベルトをふるい、それがさばかれると見ると、マリオは急速にカズヒラとの間合いを詰め、左手のフォークをフックのようにカズヒラの眼前に突き出す。さばいたベルトに右腕は奪われていて防御のしようがなく、カズヒラは攻撃を後方に交わすと思われたが、逆にさばいていたベルトを引き込み体勢を崩させて、自らマリオとの間合いを詰めた。その刹那、背を向けてマリオの左手を取り、体を沈めた。

「おお」

 隊員が声を漏らした。カズヒラは体を沈めると、取った左手を固めてマリオを床に投げつけた。一本背負いであった。リノリウムの床にマリオの背中が叩きつけられて、鈍い音とうめき声がした。マリオは息ができずに身をよじっていた。不意をつかれて受身を取れなかったのだろう。カズヒラはすかさずマリオの左手首を踏みつけた。フォークが床に音を立てた。

「ジャパニーズ・CQCだ。相手が悪かったな」

 隊員が半ば呆けながら駆けていき、マリオに銃口を向けた。マリオはしこたま咳き込んでいた。

「クソが、地獄に落ちやがれ」

 それがマリオの最後の言葉だった。隊員が再度麻酔弾を撃ち込む必要もなく、今度こそマリオは動かなくなった。

「動脈を刺したみたいだ。止血してやれ」

 指示をすると、カズヒラは床に転がったサングラスを拾い上げた。隊員はマリオを小突いたりして、安全を確かめていた。首からスカーフを抜き、顔とサングラスについた血を拭いながら、カズヒラは俺に近づいてきた。そして、目の前でサングラスをかけ直す。

 直後、俺は顔面を殴られた。思わず膝をつく。しかしすぐに胸ぐらを掴まれ、引き起こされた。

「おまえは、自分のしたことがわかっているのか」

 サングラスの奥の彼の瑠璃色の瞳が透けて見えた。俺はすぐに目をそらした。彼の瞳に宿っていたものを見たからだ。その俺の様子を見ると、彼は再び俺を殴った。そうしてから隊員を呼び寄せる。

「そのイタリア人は丁重に扱え。起きたら聞きたいことが山ほどある。それから」

 カズヒラは俺を突き放して背を向けた。

「この男も連れていけ」

 隊員が二人、俺の肩を掴んで引っ張った。俺は殴られた痛みのことで頭がいっぱいで、他に考えることがなかった。いや、気を逸らしていたと言うべきだろう。これから起こるであろうことを考えたくはなかった。そういった意味ではこの痛みがありがたかった。

「さっさと歩け」

 半ば突き落とされるようにして、俺は営倉がある階へと続く階段を下りる。そろそろ夕暮れなのだろう。室内に照明が灯るまでの遅延のせいで、下を覗くと階下にはただ闇があるばかりだった。俺はその暗闇へと続く階段を降りていった。



 EXTRA OPS:129 了

 俺は体を大きく揺さぶられたかと思うと、目の前で男が倒れた。それはMSFの隊員だった。何が起きたかを知るまでに時間がかかったが、やがて背後を取られたマリオが振り返り、発砲したのだと理解した。

 早業だった。動作の素早さと正確さもそうだが、それの躊躇のなさにも恐れ入った。しかし持っていた銃が仇となった。

「なんだこりゃあ!」

 MK.22麻酔銃は、その見た目こそオートマチックピストルだが、特殊麻酔弾を発射するための単発式になっており、連射ができなかった。すでに次のターゲットに狙いを定めていた彼だが、引き金を引いても弾が放たれることはなかった。

 MK.22を放って後ずさりしつつ、背後にあった小部屋に入ろうとしたが、その前に後ろからもMSFの隊員1人に囲まれ、いよいよ手詰まりだった。しかし、マリオは自ら投了を選ぶことはしなかった。俺を盾にして背のM16に持ち替え、発砲しようとした。

 その右手にビシッと音がして、針が打ち込まれた。麻酔弾だ。反射的にマリオは銃を手放した。銃が肩のスリングに引っかかっていて、ぶら下がった。

「無駄なあがきはやめろ。寿命を縮める」

 先ほど俺たちが曲がった角から、衛兵と共に男が出てきた。カズヒラだ。

「ふざけやがって」

 マリオが右手からするりと針を抜いて、足元に放った。

「見ての通りだ」

 手を後ろに回して、カズヒラが告げた。俺たちは完全に包囲された。俺たちの脱出は初めからばれていたとしか思えない。背後に男が加わった。先ほど俺たちの前を通りすがった管制官だ。

 不意に、首元がまさぐられた。マリオが俺の制服のカラーの裏から何かを取り出して見せた。それは制服と同じ生地に包まれた非常に小さなサイズの何かで、生地の下から薄く、赤色の明滅が透けていた。恐らく発信機か盗聴器か何かだろう。

「最初からお見通しってことか」

 今まで気がつかなかったが、少なくとも制服を着ている間は、俺の首元にはいつもこれがあったということか。俺は監視されていた。ふと、カズヒラに肩に手を置かれたときのことを思い出す。仕掛けたのはあの時だと直感した。寒気がした。

「するとこいつはスパイで、俺はクラウンってわけだ」

 マリオの声色にどことなく怒りが混ざっていた。違う、と俺は反論しようとしたが、声にならなかった。マリオはその「豆粒」をつまんで潰そうとしたが、手からこぼれ落ちた。麻酔薬が効き始めているのだ。

「俺たちにかまけてていいのかよ」

 マリオが腕を抑えながら俺の影に隠れた。この間に俺は逃げられたが、体が動かなかった。

「既に敵基地は我々が占領した。作戦は終了したんだ。ついさっきのことだがな」

 そういえば、ずっと聞こえていたサイレンが、もう聞こえないことに気がついた。カズヒラは余裕綽々といった感じで、「他に聞きたいことはあるか?」とでも言いたげに、腕を組んだ。

「ここまでか」

 マリオが呟いたのが聞こえた。俺は思い出して振り返った。マリオの口の中には自決用のカプセルがあるのだ。止めようとする間もなく、あっさりと、飴玉を噛み砕くような音がした。カズヒラたちはこのことを知らないのだろうか。なにも気に留める様子がない。

「無駄だ。それの中身はダミーの風邪薬だ。体にはいいかもな」

 カズヒラが言った。本当になにもかも、お見通しなんだな。すべて、筋書き通りというわけか。

「おまえは眠っていてわからなかったかもしれないが、連れてきた時に体を改めさせてもらった。いい加減、脱出ごっこは終わりにしよう。クランクアップだ」



つづく