新しい年を迎えて最初にやってくるのが「しぶんぎ座流星群」です。
三大流星群のひとつで、お正月の夜空に流星をもたらします。
流れ星に新年の願いをかけてみては? 2017年の見頃となる時間帯や方角など、観察に役立つ情報を紹介します。
新年に初めて文字を書くことを「書き初め」といいますが、新年に初めてする星空観察を「星見初め」というのはいかがでしょう?
毎年1月4日前後に活動のピークを迎える「しぶんぎ座流星群」は、星見初めにぴったりです。
気になる2017年の観察条件
2017年、しぶんぎ座流星群の活動がもっとも活発になるのは、1月3日(水)23時頃と予想されています。
そのため、流星群の見頃は、1月3日(火)23時過ぎから4日(水)未明にかけてになるでしょう。
しぶんぎ座流星群は、8月の「ペルセウス座流星群」と、12月の「ふたご座流星群」と並ぶ三大流星群のひとつです。
この流星群の特徴は、活動が活発になる期間が数時間と短いこと。
ですから、活動のピークが昼間にあたれば、見られる流星の数はぐんと少なくなってしまいます。
毎年、活動に安定感のあるペルセウス座流星群やふたご座流星群と比べると、流星の出現数が年によって変化しやすく、当たりはずれがあるといえるでしょう。
2017年の場合、冒頭で述べたように活動のピークは23時頃。
そう、夜間です! さらに、活動のピークを迎える前に月は沈んでしまうので、月明かりの影響もありません。2017年はなかなかの好条件です。
街灯りの影響を受けない暗い夜空で、見晴らしの良い場所では、1時間あたりに30~40個ほどの流星が数えられそうです。
また、市街地に隣接した場所でも、1時間に10個程度は見られるでしょう。
流星群を観察するとき、「どの方角を見たらいいの?」と思うかもしれません。
ですが、方角を気にする必要はまったくありません! というのも、流星は空のどこにでも現れるからです。
空の一点(ひとつの方角)を見つめるよりも、広く見渡しているほうが、流星をキャッチできる可能性が高くなります。
防寒対策をしっかりとして、楽な姿勢でのんびりと、少なくとも20分くらいは空を眺めてみてください。
今はもう存在しない「しぶんぎ座」
流星群とは、毎年同じ時期に空のある一点から、流星が四方八方に飛び出してくるように見える現象のこと。
流星が飛び出してくるように見える中心点のことを「放射点」といいます。
流星群は、放射点のある星座の名前で呼ばれるのが一般的。
ですから、しぶんぎ座流星群も、放射点がしぶんぎ座にあるはずなのですが……実は、世界共通の88星座の中にしぶんぎ座はありません。
しぶんぎ座の「しぶんぎ」って、聞きなれない言葉ですよね。
しぶんぎ(四分儀)とは、円を4分の1にした扇型の測量機器のこと。
昔は、四分儀を使って天体観測をしていました。
そして、星にゆかりのある四分儀を「へきめんしぶんぎ(壁面四分儀)座」という星座として定めていたのです。
ところが1928年、国際天文学連合が星座を整備して世界共通の88星座を制定したとき、へきめんしぶんぎ座は残念ながら選外になってしまいました。
似たような測量機器の「六分儀(ろくぶんぎ座)」や「八分儀(はちぶんぎ座)」は今でも星座として存在しているのに……。
しぶんぎ座流星群の放射点は、うしかい座とりゅう座の境目付近。
かつてこのあたりに存在していた星座がへきめんしぶんぎ座です。
星座として生き残ることができなかったへきめんしぶんぎ座ですが、今でもしぶんぎ座流星群として名を残し、面目を保っているわけですね。
新年のスタートを飾るしぶんぎ座流星群の到来は、星見初めを楽しむだけでなく、今はもう存在しない星座を偲ぶ機会ともいえます。
昔の人たちが星座に託した思いを想像しながら星空を眺め、流星をかぞえてみてはいかがでしょう。
流星に出合ったら、新年の願いをかけるのを忘れずに。
宇宙・天体ガイド 景山 えりか
All Aboutより転載