真夏の宿場は空虚であった。


ただ眼の大きな一疋の蠅だけは

薄暗い厩の隅すみの蜘蛛の巣にひっかかると

後肢で網を跳ねつつ暫くぶらぶらと揺れていた。



-蠅-
横光利一




いつの日も

馭者の饅頭を羨む勿れ