15.隠家
二人ともかなり飲んでいたが、タクシーに乗ってハリウッドの山に向かって走り出した。
彼はこの時、何となくこの流れは昔、確かになぞったぞと感じた。未来の自分が今の自分を拘束していない。
しかし自由に生きているようではあるが、未来の自分が経験したことを完全にトレイスしている。
曲がりくねった山道を10分ほど上がると高級住宅が建ち並ぶ。弁護士や医者、会社経営者などが住んでいる。ロサンジェルス市警のパトカーが走り回っている。
「何か有ったのか?盗みでも有ったのかな?」
何れにせよわれわれには関係ない。
細い道に入り5、6分走って到着した。
凄くたくさんの光の海、ボナベンチャーも凄いがこちらのほうが身近に光を感じる。
「藤井、凄い眺めだろう。ここは観光客が来れない所なんだ。セキュリティがしっかりしているから」
「なぜ、山田が知っているんだ?」
「俺はもう3年近くロスにいるんだぞ。このぐらいの情報は手に入れなくてはだめだろう。」
「彼女居るだろう。男は恋をするとロマンティストになるというから。」
山田にかみさんが居るが上手くいっていない。海外組の商社マンで上手くいっているほうが少ないぐらいだ。
「現地妻か。」
「違うよ。居ないよそんな便利な奴。・・・・・
分かった。藤井に睨まれると敵わないよ。」
続く