活動弁士 縁寿 作
【きぃくん、生誕祭〜九歳の春に思う。】

ボクは猫である。

名前は「きぃくん」

今日九歳の誕生日を迎えた。

人間だと小学校三年生だけど、

猫世界ではおじいちゃんと呼ばれてもおかしくはない。

初老ってところなのかな?!

ボクが生まれたのは

猫が七匹もいるお家だった。

そしてお母さんは

その家の猫ではなかった。

野良猫だったけど、

世話してもらえそうなお家だったので、上がり込んでそこにお世話になった。

今のお母さんは、

はじめての猫ミルちゃんを亡くしたばかりで

悲しみに暮れていて、

お父さんが猫が沢山いる同僚のお家で

さらに猫だらけになっていたのを見て、

ボクを招いてくれたんだ!

不思議なことに

ボクが来るちょっと前からママの家には

ネズミが出るようになって、

ボクは活躍の場を与えられた。

猫にとって、「役割を与えられる」というのは

なかなかに鼻が高い

ほまれある称号である。


えっへん!!!

ママとは ずっと

仲良くべったりと暮らして来たけれど、

ここ最近変な遊びにハマっている。

お爺ちゃんの介護で
表にはなかなか出られないママだけど、遠くの人とも音声だけで繋がれる

【面白くて不思議な世界】と巡り合った。

ボクにとっては、

「巡り合ってしまった」のである。

最初は小難しい話し合いを

聞いているだけだったのに、、、

最近は何やら

演技をしたり

歌を歌ったり

ピアノを弾いたりと

遠くの人とも毎日繋がって楽しんでいる。

とても楽しそうなので、

最初は「ママ良かったね!」って素直に喜んでいた。

最初は。

でも最近は

ボクが

「もうそろそろ遊ぼうよ!」って話しかけても、

どんどん沼にハマってゆくように 行ったきり帰って来ない。

身体はそこにあるけれど、

こころは

ふわふわと

タンポポの綿毛のように

遠くまで飛んで行って

ポカポカと

浮かんだままになる。


ボクは待ちきれなくなって

「ママっ!!」て呼び戻すことが多くなった。

行ったきり帰って来ないんじゃないか?!って、

時々心配になる。

それでも、、、

最近のママは とっても若くなった。

「ボクの知っているママ」よりも

「うんと昔のママ」みたい。

女の子になってゆく さくら色したママを

ボクは目を丸くして

ちょっとあきれながら

「可愛いな」って思っている。

大好きな女のひとが少女のように笑う顔は

「とてもいいな」って、

この歳になって思うようになった。

不思議な感覚。

さくらいろのママは とってもきれいだな。

花ふぶきと共に

ボクのこころにも

花びらが舞う。

あらたなる

ママとボクの生活が、

これからもずっとずっと

続いてゆきますように!

〜きぃくん九歳の生誕祭に寄せて

【きぃくん、生誕祭に語る】2022年4月7日