オッサンときれるきっかけになった彼は、
本当に大好きだった人だった。
今から考えれば、完璧な男などいまいし
もういい年の女の域になった自分でさえも未だ不完全だ。
人間は唯一生涯成長する生き物だから
それでいいとおもう。
海外で働く彼と接触するきっかけはインターネットだった。
今の世の中、文字化けの心配もなく
ねっと離婚なんて熟語を熟年が流行らす世の中で。
その先頭を今の世の中より一足はやく切って出会った人だった。
海外で働くくせにとても近い同じ大阪の人だった。
話せば話すほど親近感もわき、
同世代の年上の彼に、
私は人肌を求めることより大事な
人それ自体を求めて温かくなることを
思い知った。
だけども彼は誰よりもいつもそばで会話してくれるような
そんな存在であるにも関わらず
私の大好きな人の中で一番遠いところで暮らす人だった。
現実的距離は一番遠いのに、
いつも近くにいてると感じさせられる彼だった。
まもなく彼が日本に帰ってきて
何度もあった。
初めて会った日は
どんな素敵なものにも変えられない
一瞬のフレンチ・チューだった。
彼が日本にいる間は、出来る限り会って
出来る限り沢山いっぱいチューをした。
今でも思い出せばトラウマになるのは
彼が今住む国に帰る時だった。
彼が帰る日、空港へ見送ると約束していて
時間も聞いていて、いつもは世間の誰よりも遅くまでする仕事も
この日ばかりはその時に一番大事なもの、大事な時間の為に行きたくて
一日のわずかな時間を彼にひとたびのサヨナラを言うために
仕事を早退して空港へ向かった。
見たんだ。
彼が、荷物チェックとか金属探知機にくぐる直前のところで
彼の家族とか親戚とかが
おなごりおしそうに彼を送り出す姿を。
彼もありがたそうに、嬉しそうにその自分を囲む人たちに
答えてる姿を。
遠くからみるしかなかった。
私にも両親や家族は、すごく近すぎてうとましいのに
素直になれなくてニクソイ事しか言えないくせに
何よりかけがえのない存在だったりする。
もし、今自分の目にうつる彼が自分だったら
逆に彼が来たら家族と面識がないから
すごくシラケテしまう。
そういうまだ起こらない
シチュエーションを
シュミレーションすると
柱の影から彼の姿を見るのが精一杯だった。
それと同時に
彼は私がこの空港のどこかで
私がいることを絶対に知ってるくせに
なんてつめたいんだろうと思った。
私は金属探知機のある、あのゲートをくぐってしまったら
彼は日本にいないと同じことだと思い込んでいたから。
きっとどこかで私が彼のことを見てるのを
彼はわかっていながら
そこから見送れって言うのが
答えと思ってた。
彼が、家族に手を振りながら、消えていく姿を
遠くから止まらない涙とともに見送ってた。
すごくミジメですごくさびしくてすごく辛くてたまらなかった。
もう会えないかもしれないと思いながら
車できたから駐車場に戻った。
関空は離れ小島だから
橋を渡ってしまったら
また戻るのもやっかいだ。
もう家にちかづくくらいの場所で
高速を号泣しながら走っていると
携帯が鳴った。
「今どこにおる?」
もう電話も通じない所にいてると思ってた彼からの電話だった。
もう空港から遠く離れたところを走ってることを彼に泣きじゃくりながら告げると
家族とさよならしてからもっかい外へ出てまっていた事を知った。
だけど、引き返しても彼には会えないそんなすごいサイアクのタイミングだった。
生殺しのタイミングと距離に「これが地獄だ」と思った。
彼が普段生活する場所よりも断然近いのに、
今おいかけても時間が間に合わないそんな残酷さに
いい年をして、声をあげて泣いた。
もう顔が見れない事が
ただ、彼に人肌を感じるかどうかよりも
ホンモノの彼の姿を目の前で見れない現実を
どうしようもなく寂しくて辛く思って、
受話器ごしに声を上げて泣くしかなかった。
夜泣きする赤ちゃんみたいに
声をあげて泣くしか今の自分を表現できなかった。
強くて優しい彼は
まさかとおもったけど
泣きながら
「泣くな」と私に怒った。
また帰ってくるからと
いつになるか、本当に帰ってきたときに
私の所へ帰ってくるかもわからない
でも、わたしが自分を忘れて泣きじゃくったように
彼もこの先どうかなんてわからないけど
今はそういう気持ちだったと心から感じ取れる
そんな「また帰ってくるから」だった。
今となっちゃぁ、嘘みたいな話になったって
その時は確かに真実だったこともある。
世の中にだって
そんなことはゴマンと転がってる。
転がってしまってるのは
信じる心と
信じれない心の
ハザマで生まれる現象なのかもしれない。