エイコは今までの上司がいなくなり、健太郎が来たことに

仕事の面で少なからず希望を見出していた。


働くモノにとって、

自分がついていくべきリーダーに恵まれないと

非常につらい。


健太郎は職場で手ごわいと思っていたエイコと

円満に仕事が出来るように必死になっていた。


エイコの今までの仕事ぶりも、

自分がエイコと働かなくてはならなくなったその日からも

とにかく褒めた。


エイコはまた、褒めてくれ、

前の上司と全く仕事ぶりが違う彼に

絶賛していた。


アルバイトの女の子はそんな2人を身近で見て

「褒め殺し合いですねぇ・・・」と

エイコに言った。


人は褒められると力が湧く


以前の上司とは違い、

今まで鬼の形相で何もかも自分でやらなくてはならないのに

すべての自分の仕事が影の力であり

光があまり当たらないことに

それだけでもやりがいがすくなくストレスを感じるのに

自分の力を評価してくれる先輩がいると誰だってやる気が湧く。


そうして認めてくれた人に対して、

自分も出来る限りのサポートをしたいと思うのは

自然な事だ。


仕事のパートナーとして

歯車がかみ合わないのが当たり前であきらめるしかなかったのに

お互いに歯車がかみ合い、

仕事もスムーズにいき、精神的にも180度変わった今の環境に

エイコはただそんな些細なことだけど

でも自分の生活において大きく影響する仕事で

多大な影響力を与えた健太郎に毎日純粋に人間として

彼に感謝してもしつくせなかった。




エイコは、

30代になって、大した恋愛沙汰もなく

日々を毎日仕事の忙しさに流されて過ごしていた。

もう限界かなぁ。

転職でもするか。

と思っていざ行動にうつそうと思った今日、

人事異動で来た上司は1つ上だった。

ある意味今いる職場で存在感バリバリのエイコと

一緒に仕事をしなければならないことに

その上司となる彼は

多少のうっとおしさと恐怖感を抱いていた。


「こいつ。気がきつくて主張もバリバリあるって聞いてるしなぁ・・・。」


彼の名は稲田健太郎


健太郎は、今までいた部署では

その部署を任されながら、

自分の思い通りに、

趣味さえも共有しながら仕事ができた場所から

一番忙しくハードな場所へと移動になり

カタチジョウ、スキルアップできたにも関わらず憂鬱だった。


何より周囲からキツイと聞かされていたエイコと

実質二人三脚で働くことになることが

精神的苦痛だった。


とりあえず女性は褒めて褒めて褒め倒せ


彼は円満に日常を過ごしたくて

自分自身の中にそういう課題を立て、彼女と共に

仕事をすることを決意した。


つーか、

そうするしか道がなかった。

空港でドラマチックなお別れをした彼とは、

その数ヵ月後、彼のいる国へ会いにいった時に

完全に幕を閉じた。


その後、私は彼に、

彼が私には返せないカリを渡して。


あれから6年が過ぎた。

あれからも、今も、探しているのは

不変なヌクモリ。


年齢というものが必然して、仕事での責任が大きくなり、

日々は忙しくなった。


性格上、アネゴ肌なあたしは、毎日の様にプライベートで

20代の身近な女の子の相談相手となっていた。

恋愛もあれば、生活もある。


なにせ、自分の事は二の次で

仕事でもプライベートでも、他人の為に動く日々だった。

別にそうしようと思ったわけでもないけれど

体がそうじゃないと動かなくなっていた。

自分の為には行動できない体になってしまった。


きがつけば、あれから6年がたっていた。


恋愛面においては

別に全くオトコッケがなかったわけでもないけれど

考えてみればエッチというものは

あの空港でドラマがあった彼以来していない。


時は残酷かもしれない。

エッチを6年してないというと、

きっと皆ヒイテしまうだろうから。


ただ淡々と日々を生きてたら

気がつけば6年だけれども

「この前エッチしたのいつ?」

って聞かれたら

「6年前」なんていうと

ヒかれる世の中になってしまったニッポン。


「成長」って言葉を考えると

月日がたっても、

自分の中身がいつまでも昔のままだと

きっと、誰しも思うかもしれない。


だけど、自分がいつまでも変わらないことと、

成長はイコールではないかもしれない。


日々の生活の中でも、

平凡でかわりばえなくとも

人間は日々成長していると感じる。


それをどうすれば感じるか・・・・・・・・・・・。


自分を振り返ってごらん。

一目瞭然だったりする。

1年前でも、5年前でも、10年前でもいい。


「前」を見る年数が長ければ長いほど

イヤでも自分が「成長」していることを

誰もが感じる事ができる。

今の自分に不満があれ、満足であれ、

成長はまた別だと感じる。


いつまでも変わらない自分は

「寂しくて誰かがそばにいてほしい」と思っている。

だけど、日々自分の脳は成長していて、

そばにいて欲しい人に対して

妥協ができなくなってきていた。


悪循環が起きている30代前半。


だけど、私はある人と出会って、

忘れていたものを取り戻してしまった。


それは、昔のものを取り戻しただけではなく

昔に戻れない今を生きる自分にすごく潤いのあるものだった。




オッサンときれるきっかけになった彼は、

本当に大好きだった人だった。

今から考えれば、完璧な男などいまいし

もういい年の女の域になった自分でさえも未だ不完全だ。


人間は唯一生涯成長する生き物だから

それでいいとおもう。


海外で働く彼と接触するきっかけはインターネットだった。

今の世の中、文字化けの心配もなく

ねっと離婚なんて熟語を熟年が流行らす世の中で。


その先頭を今の世の中より一足はやく切って出会った人だった。

海外で働くくせにとても近い同じ大阪の人だった。


話せば話すほど親近感もわき、

同世代の年上の彼に、

私は人肌を求めることより大事な

人それ自体を求めて温かくなることを

思い知った。


だけども彼は誰よりもいつもそばで会話してくれるような

そんな存在であるにも関わらず

私の大好きな人の中で一番遠いところで暮らす人だった。


現実的距離は一番遠いのに、

いつも近くにいてると感じさせられる彼だった。


まもなく彼が日本に帰ってきて

何度もあった。


初めて会った日は

どんな素敵なものにも変えられない

一瞬のフレンチ・チューだった。


彼が日本にいる間は、出来る限り会って

出来る限り沢山いっぱいチューをした。

今でも思い出せばトラウマになるのは

彼が今住む国に帰る時だった。


彼が帰る日、空港へ見送ると約束していて

時間も聞いていて、いつもは世間の誰よりも遅くまでする仕事も

この日ばかりはその時に一番大事なもの、大事な時間の為に行きたくて

一日のわずかな時間を彼にひとたびのサヨナラを言うために

仕事を早退して空港へ向かった。


見たんだ。

彼が、荷物チェックとか金属探知機にくぐる直前のところで

彼の家族とか親戚とかが

おなごりおしそうに彼を送り出す姿を。

彼もありがたそうに、嬉しそうにその自分を囲む人たちに

答えてる姿を。

遠くからみるしかなかった。


私にも両親や家族は、すごく近すぎてうとましいのに

素直になれなくてニクソイ事しか言えないくせに

何よりかけがえのない存在だったりする。


もし、今自分の目にうつる彼が自分だったら

逆に彼が来たら家族と面識がないから

すごくシラケテしまう。


そういうまだ起こらない

シチュエーションを

シュミレーションすると


柱の影から彼の姿を見るのが精一杯だった。


それと同時に

彼は私がこの空港のどこかで

私がいることを絶対に知ってるくせに

なんてつめたいんだろうと思った。


私は金属探知機のある、あのゲートをくぐってしまったら

彼は日本にいないと同じことだと思い込んでいたから。


きっとどこかで私が彼のことを見てるのを

彼はわかっていながら

そこから見送れって言うのが

答えと思ってた。


彼が、家族に手を振りながら、消えていく姿を

遠くから止まらない涙とともに見送ってた。


すごくミジメですごくさびしくてすごく辛くてたまらなかった。

もう会えないかもしれないと思いながら

車できたから駐車場に戻った。


関空は離れ小島だから

橋を渡ってしまったら

また戻るのもやっかいだ。


もう家にちかづくくらいの場所で

高速を号泣しながら走っていると

携帯が鳴った。


「今どこにおる?」


もう電話も通じない所にいてると思ってた彼からの電話だった。

もう空港から遠く離れたところを走ってることを彼に泣きじゃくりながら告げると

家族とさよならしてからもっかい外へ出てまっていた事を知った。


だけど、引き返しても彼には会えないそんなすごいサイアクのタイミングだった。

生殺しのタイミングと距離に「これが地獄だ」と思った。


彼が普段生活する場所よりも断然近いのに、

今おいかけても時間が間に合わないそんな残酷さに

いい年をして、声をあげて泣いた。

もう顔が見れない事が

ただ、彼に人肌を感じるかどうかよりも

ホンモノの彼の姿を目の前で見れない現実を

どうしようもなく寂しくて辛く思って、

受話器ごしに声を上げて泣くしかなかった。


夜泣きする赤ちゃんみたいに

声をあげて泣くしか今の自分を表現できなかった。


強くて優しい彼は

まさかとおもったけど

泣きながら

「泣くな」と私に怒った。


また帰ってくるからと

いつになるか、本当に帰ってきたときに

私の所へ帰ってくるかもわからない


でも、わたしが自分を忘れて泣きじゃくったように

彼もこの先どうかなんてわからないけど

今はそういう気持ちだったと心から感じ取れる

そんな「また帰ってくるから」だった。


今となっちゃぁ、嘘みたいな話になったって

その時は確かに真実だったこともある。


世の中にだって

そんなことはゴマンと転がってる。


転がってしまってるのは

信じる心と

信じれない心の

ハザマで生まれる現象なのかもしれない。








日々をたんたんと生きることや平凡さのつまらなさ。

毎日を過ごしていると変化がわからない。


皆、劇的な何かや、刺激的な何かを自分のつづる人生の日々から

探し出す。


科学者であっても、華やかな芸能人であっても、あこがれのセレブだって

今自分が仕事で客に頭をペコペコ下げてるこの瞬間でさえ

それぞれの歴史をつづっている。


恋愛がどうこうよりも

生きるということの意味を

出産を今現在も体験しないあたしにとっては

非常にわかりづらい事であったりする。


とか、何とか、理屈めいたことを言ったとしたって、

欲するものなど

人間一律変わらなかったりする。


あの時、私はとてもさびしくて、人肌を感じたいと思っていた。

両親や弟や妹はかけがえのないものだけど

今さら家族にほおズリしたり、甘えて抱きしめられることを求めたり

抱きしめたり、できるはずもないけれど

だけど自分に大事なのは人肌の温もりを感じることだった。


そう思って20代の頃、耐え切れずに

オッサンの欲望に答えたことがある。

1000万の年収を自慢にし、

体では応えるけれど、

自分にとっては家族が一番だと主張しつつ、

私を抱きたいといってきたオッサン。


私は、そのオッサンのそういうドーノコーノなど

どうでもよくて

とりあえずてっとりばやく人肌を感じれる事で

自分の欲するものを満たせれば相手のことなんてどうでもよかった。

3回ほど会ってそのたびヤッた。

2回目の時に別の人に恋をした。

3回目のときには完全にその別の人を好きになっていた。


体と心は非常につながってると思った。


3回目の時、

オッサンには興味がないから全く楽しくなかったし

きもちよくなかったんだ。

今日で終わりにしようと思いつつやってた。


オッサンには一切そんなあたしの事情を言ってないのに

オッサンは最後までできなかった。


何も説明してないのに

普通にやってるつもりでも

相手の何かに自分の心が通じてしまってるんだと思った。


セックスって体だけのもんでないんだなぁと

他人はどうあれ、自分と自分に交わる相手にとっては

そういう意味があると感じた。


結局不発に終わった3回目。

別に終わるとか始まるとかないので、

勝手に今日が終わりだと思っても全然いい権限を

自分はもってるとおもって、

もう今日で終わりと決めた。


それから何度か電話とかで接触があったオッサンが

以外なことを言った。


あたしは人肌を感じたかっただけ。

オッサンは欲望を満たしたかっただけなのに


オッサンはあたしを好きになってしまったらしい。


でもゴメン。

もう、オッサンは必要ない。

欲望は他で埋めてくれ。

好きになるなといったのはオッサンの方やったのに

偉そうに俺に惚れるな的なこと言っておいて

あたしにはそれが好都合やったのに


もうあんたいらない。


そう思った。


じゅうぶんフェアだと思ったけど。






彼はある日突然現れた。

初めはあたしのモウソウの中に。

モウソウしてよかった。


あたしのモウソウの中から生まれた彼は

あたしの究極の理想だった。


だけど、たとえその人がクローン人間であったとしても、

人間て神秘的。

その人がどんな人であれ、

きちんとその人は、世界で一人、その人でしかない。

自分の理想であったとしたって、

きちんとその人にしかない意志も生き方も価値観も

生まれてくるんだ。


私は彼が大好きだった。

モウソウから生まれたのだから、

嫌いなわけがない。


彼をモウソウしたのは、

33歳の時だった。


あたしの名前はエーコ。


今の会社に入社して12年。

入ったときは頼りなかったあたしも、

今じゃ、会社で働く皆からは、年齢からして必然的に「さん」づけでしか呼ばれず、
だけどもいつまでたってもあたしの脳みそは

入った時から同じで。


仕事にしても、考え方にしても、価値観にしても、

さすがに人間は成長する生き物なんで

入社したときとは違うけれど

あたしはいつまでもあたし。


33歳にして未婚。

世間で言う負け犬?

見た目は職業上、年齢より若くみられるかもしれない。

だけど、確実に、他人にはわからなくとも、

自分にしかわからない「老化」を

切々と感じながら生活している。


彼氏はいない。

20代後半になって、恋愛する暇が全くなかった・・・

わけではない。

20代後半から30代に突入するまでの5年間ほどに

ロマンチックな恋愛もそれなりにしたけれど。


他人は知らないけど、

私は失恋すると最低2年は立ち直れない。

26のときに恋愛して失恋して立ち直れなくなると

28歳になってしまう。


28歳になってようやく恋愛する体になったとしても

日常生活から恋愛が遠いものであったりする。

仕事が忙しかったり、プライベートが忙しかったり。


28歳の時点でも、恋愛する体になれても、

失恋のトラウマは残る。


他人がバカらしいといったって、

じれったくたって、

あたしはあたしなんで。

そうそう簡単には恋愛できない。


よく重いと言われるタイプ。

となると、

恋愛=結婚

と思われがちだけれども、

私はもっとたちが悪かった。


恋愛=まず人間として相手を尊重する上で愛する


という、この時代では変態的ともいえる

重さがあったりする。


ただ、相手が異性であるという事だけでは

相手を愛せない根本的な自分の性格と、

しかも年齢を重ねてしまった故に

ほれたはれただけでは相手を心底から愛せない


だけど憧れるのは、夢見るのは

たわいもなく関西ウォーカーにのってるような所へ

彼氏とデートできることも

きっちり夢みていたりする。


生活も、モウソウも、夢も、希望もあって

そうして日常を日々一生懸命生きていたら

気付けば33歳になっていた。