近年、私たちが目にする多くのディスプレイは、当たり前のようにタッチ操作に対応しています。 特に PCAP(Projected Capacitive)タッチパネル はスマートフォンをはじめ、 産業機器や家電などあらゆる分野で広く採用されており、現在の主流となっています。
このPCAPタッチでは、センサーとTFTディスプレイの接合方法として 光学ボンディング(Optical Bonding) と エアボンディング(Air Bonding) の2種類が存在します。 本記事では、それぞれの構造的特徴・見た目・耐久性・性能面の違いについて詳しく解説します。
1. 構造の違い
● 光学ボンディング(Optical Bonding)
光学ボンディングでは、カバーガラスとPCAPセンサーの間、さらにPCAPセンサーとLCDの間に 透明度の高い光学接着剤(OCA: Optical Clear Adhesive) を充填します。 接着剤はフィルム状のものと液状タイプの2種類があり、 空気層がほぼ存在しない密着構造となるのが特徴です。
● エアボンディング(Air Bonding)
エアボンディングでは、カバーガラスとPCAP センサーのみOCAで接着されます。 一方、PCAPセンサーとLCDの間は両面テープのフレームで貼り合わせるため、 内部に空気層が残る構造となります。この空間が「Air Gap」と呼ばれます。
2. 光学特性の違い
光学ボンディングでは、OCAによって屈折率の差が小さくなるため、 光の屈折や反射が大幅に減少 します。 その結果、画面はよりクリアに見え、コントラスト低下も抑えられます。
一方、エアボンディングでは空気層があるため、 光が境界面で何度も反射し、屋外では特に白っぽく見える・コントラストが下がる といった現象が発生しやすくなります。
一般的に言われるコントラスト低下量は以下の通りです:
- 光学ボンディング:低下率 5% 未満
- エアボンディング:5〜20% 程度
屋外用途(自動販売機、デジタルサイネージ、車載など)では明確な差として現れます。
3. 耐久性・寿命の違い
光学ボンディングは空気層が存在しないため、構造が強固で、 落下・衝撃に対する耐性が高く、長寿命 です。
逆に、エアボンディングでは両面テープ部分が長期間で劣化しやすく、
- 湿気が侵入して曇りが発生する
- ホコリが内部に入り込む
といった問題が起こる可能性があります。 特に屋外機器や車載機器では無視できないポイントです。
4. デザイン性の違い
光学ボンディングはガラス・センサー・LCDが一体化しているため、 黒フレームの印刷と相性が良く、全体が一枚板のように見える 仕上がりになります。
見た目の高級感が求められる家電やスマートデバイスでは、 デザイン上のメリットが大きく評価されています。
どちらのボンディングが最適?
最終的な選択は、以下のポイントを総合的に判断する必要があります:
- 価格(光学ボンディングは生産コストが高め)
- 使用環境(屋外・高湿度・温度変化)
- 必要な耐久性
- デザイン品質の要求レベル
多少コストが上がっても、屋外利用や高信頼性が必要な製品では 光学ボンディングが圧倒的に有利です。 逆に、低コストが最重要のアプリケーションでは エアボンディングが選ばれるケースも多くあります。
まとめ
光学ボンディングとエアボンディングには、それぞれ明確なメリットとデメリットがあります。 どちらが優れているというより、製品用途に適した工法を選ぶことが重要 です。
ご不明な点や製品に最適な構造の相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
