私の最後の願い

「不倫なんてみんなやってるから
僕だけが悪いんじゃない」

という持論を

もう子どもたちや私に振りかざすことをやめ

私たちの苦しみをわかって

寄り添ってほしい。

そうすれば
子どもたちも私も
少しずつ苦しみが薄らいで
いつか心に負った傷にも
少しずつかさぶたができるかもしれない。


そう思って

夫に言ってみたけど

夫の答えは

「いくら口に出して言わなくても
不倫がそこら中にあるというのは
どうしようもない現実なんだから
僕が言おうが言うまいが
なんの意味もないよ。」


と、今までとまったく変わらない。



私はもう

これで本当に私たちは
二度と
心から寄り添える夫婦にはなれないし

夫も子どもたちに寄り添うことを
自ら捨てたんだな…

と残酷なまでにはっきりとわからされた。



もう終わった…


私は最後に
苦しくてひとりでいられずに
そんな夫にすがってしまった。


「これで最後だから…」


夫の胸は暖かかった。

夫の暖かい胸に顔を埋め
最後の体温を感じながら言った。

「Sさんを幸せにしてあげられなくて
ごめんなさい。

他の人と結婚してれば
Sさんはこんな人生にならなくて済んだのに
私がSさんの人生を台無しにしちゃったよね。

結婚以外はSさんの人生
すべてうまくいってたのに
一番大事な結婚相手を
間違えちゃったんだね…

ごめんなさい…」



嗚咽しながら言葉を振り絞る私に


夫は


何も


一言も言ってくれなかった…



何も言ってくれないんだね…


私は


また


自分のベッドに戻ったのに


夫の胸の暖かさから

いきなり氷のように冷たいベッドに

そのまま朝まで寝ることは到底できず

私はまた、

夫の隣を離れて 別室で寝るしかなかった。










心が離れているのに
手を伸ばせば届く距離に相手がいるというのは
なかなかにキツい状況ではある。。


幸いにも翌日から夫は
ひとりで赴任先に移動予定だった。


こうなる前から今回は
私の仕事の都合と、なるべく移動を減らすために
私は夫に同行しない予定になっていた。


約10日の別居…


お互い冷却期間としては最適なのかもしれない。


朝起きて、私が朝食の用意をしようとすると
夫がいらないと言って
自分でパンとコーヒーを用意して食べ始めた。


いつもならそんなことはしないのに
私の作ったものは食べたくないと言うのか


私の心はまたまた激しく波打ち
平静を保つことができなくなり


何十回も繰り返してきた
いつもの陳腐な行動をとってしまう…


いや

それよりもさらに陳腐さを増して酷い行動



玄関を出ようとする夫の背中に浴びせる

醜い一言


「Sさんがこのまま行っちゃったら、私


鬱になる」




脅迫だ…



私、夫を脅迫してる