土下座し続ける夫の手に
私は自分の手を重ねた。
夫がゆっくりと顔を上げ
私の顔を見ながら話し始めた。
「彼女と付き合い始めたのは、今思えば
Mの気持ちを取り戻したかったんだと思う…
あの頃、もう僕たち、ただの仮面夫婦だったよね。
昔は優しかったMが、だんだん冷たくなってきて
そしてとうとう旅行先にひとり置き去りにされて…
僕にとっては人生で初めての最も酷い体験だったんだ。
だから、、、
あんなこと しちゃったのかな…
Mに辛い思いさせて
ほんとにごめん…
でも…
Mは 何かあるといつも
離婚って言うけど
僕は離婚なんて
一度も考えたことないよ。
僕はMと離れるなんて
一度も考えたことないんだよ。
だから、離婚なんて言わないで
これからもずっと僕と一緒にいてほしいんだ… 」
こんなことが不倫した言い訳になるとは思わない。
もうしてしまったことは何を言っても
何をしても一生許されることはない。
私は一生許さない。
でも離婚して
私はすっきりするのか❓
してみないとわからないけど
今の私は少なくとも離婚したからと言って
夫を許せるわけではない。
離婚してひとりになっても
きっと私は毎日怒りと苦しみの感情に支配され
子どもたちも一生夫を憎み、蔑み続けるだろう。
ならば離婚せず
もう一度
果てしなくマイナスからだけど
理想の家庭ではなくなってしまったけれど
ほんの少しでも温かみの感じられる家庭を
夫と一緒に
作っていこうと
土下座して謝る夫を見て
思った。
結婚した時は私にとって「尊敬」の対象だった夫。
今はその真逆になった夫だけど
だからこそ
今度こそ、今までとは違った
理想とは違うけど
普通でいいから
本当の意味での
夫婦になれたら
と思う。