全面降伏
とはどういうことか
私はヤツのベッドの端に腰掛けて
「無視という拷問」にどれくらい耐えていたのかも
わからないほど動揺し
ついに耐えられず、
仰向けに寝ているヤツの胸にすがって
「何もせず普通にって要するにただ離婚せず
お互いなんの感情も持たずに一緒に生活するだけってことでしょ? そんなの耐えられない!
悲しい時に優しい言葉も掛け合えないなんて
一緒にいる意味ない!
お願いだから今、優しくしてよ!」
と泣きながら言った。
ヤツはすがる私の背中を撫でるでもなく
棒のようにただ寝ていた。
そして
「きょうはもう寝よう。
枕を持ってきて。
ここで寝よう。」
とだけ言った…
私はシャワーして
ナツの部屋から前夜まで使っていた寝具を
また元の寝室に運び
夫の隣のベッドで寝た。
でもお互い 何も話さず
何もせず
そのまま眠った。
朝起きて
夫が私の掛け布団をチョンチョンと引っ張る。
それはいつもの
「こっちにおいで」の合図。
私は無視して気づかないふりをした。
10分ほどして
またチョンチョン と合図…
どうしても夫の方に行けなかった…
ここで素直になれないなんて…
せっかく昨夜あそこまで自分を捨てたのに
朝になったら
なんだかもう疲れ果てて
夫になびく気になれなかった。
もういいや…
もう知らない…
私は
「あ、起きる時間だね。
きょうは朝から仕事だもんね。」
と飛び起きて身支度し寝室を出て
朝食を作った。
夫を一人寝室に残して。