おとといのバトルの後
ヤツは眠剤でグーグー寝た。

ヤツは私にも眠剤を持ってきてくれたけど
私は
「眠剤なんか飲んでも
   Sさんが優しくしてくれないと眠れないからいい。」
と言って飲まなかった。


案の定
まったく眠れず
おまけにずっと続いていた咳も
ますます悪化して
隣でグーグー寝ている夫にますます腹が立ち
私はついに枕を持って寝室を出て
ナツが使っていた部屋で寝た。


そこで1時間ほど寝たかな…


それ以外はずっとこれからのこと
明日の観劇のこと
離婚するにはまず何をすべきか
離婚する時期
ナツが結婚する時にはまだ
パパとママでいてあげたい…


でも離婚したらヤツはあの女と再婚するかもしれない。

そうなったらヤツらの思うツボ。
それだけはさせたくない。


あの女を子どもたちが母親と認めるわけはないが
家族のイベントに同席すると考えただけで
怒りて身の毛がよだつ💢


一晩中そんな事を考え続け
胸が苦しくてやりきれなかった…





朝 起きたら
ヤツはちょっとぎこちなく
「おはよう」


私も伏し目がちに
「おはよう…」


お互いそれ以上はない。



私はヤツのために朝食を作り
書斎で株式市況を見るヤツのところに
呼びに行き


「きのうはごめんね。
   きのうのきのうまでSさんがスキンシップ
   嫌いなんてまったく知らなかった。」


そう言うとヤツは
両手を私の腰にまわして私を引き寄せようとする。


私はヤツの手を振りほどいて
「いやいや、もういいの。
   べつにそんなにしてもらわなくても。」


するとヤツはまた同じように
私を引き寄せようとしながら笑顔で
「もう あんなこと言わない?」


私は
「いや、わからない。」
と言いそうになったけどそれを飲み込んで
ヤツの手を振りほどき
「ご飯できたよ。
   きょうの◯◯(舞台演目)どうする?」


ヤツは笑顔が消え
「行くよ。」


「私も行っていいのかしら?」


「もちろん。」



わざと丁寧に
「ありがとう。
   よろしくお願いします。
   何時に出る?」


(上演は午後の早い時間だったので)
「早く行って軽くランチしようか」とヤツ。


「私はきっとお腹すいてないから食べないけど
   飲み物なら付き合うよ。」


「…  …  
   なら僕もそんなにお腹空いてないだろうから
   早めに出るのはやめよう。」



で、開演 1時間前に家を出て
美しく整備された劇場の敷地内を
わざとヤツの一歩後ろを歩く。


日差しは暑いけど
爽やかな風が2人の間を吹き抜けていく。


気持ちは沈んで、
楽しみだった舞台なのに
心は無味乾燥…


1時間くらいしか寝てないので
3時間以上の上演に耐えられるか…


暗闇にじっと座り
何分持ちこたえられるか…



原作はだいぶ前に読んで
私のなかではトップ5に入る大好きな作品。


せっかく席も前から5列目のいい席を
ヤツと一緒に観たいと思って
一生懸命取ったのに…



こんな気持ちで
ヤツと隣同士に座るだけで
辛かった…