夫の感想を文末に追記します。


結末を書きますので
これからご覧になる方はお読みにならないで下さい。










☆画像、概要 お借りしました☆










夫と観ました。


とても深い映画でした。


基本 戦争や紛争を身近なものと感じることの少ない日本では、なかなか実感しにくいテーマだと思ってたけど、見終わったら これは人間誰もが大小の差こそあれ経験していること、そしてとても大切なことだった。



日々の生活のやり場のないストレスや
どうする事もできない政治や宗教的な問題。


どうあがいても変えようのない歴史的背景。
宗教的思想の相違。
否応無く敵味方に分かたれる人々。
どんなに努力しても報われない現実…


そして些細なことで傷つけられた尊厳。


互いに自分の尊厳を守るために必要だったのは…



「心からの謝罪」



それだけでよかった。



名誉でもお金でもない。





自分と重なった…



日々の夫婦の些細な気持ちの行き違いや
どうする事もできない仕事上の問題やストレス。



そんな問題を抱えた夫のモラハラに耐えかね、
もがいてももがいても変わらない日常に
逃げ道として選んでしまった
レスの日々…

そして夫が選んだ不倫の歳月…


どんなに悔やんでもあがいても
変えられない過去。




欲しいのは見栄えのいい世間体でも
ましてやお金なんかでもない。



ただ




ただ




          「心からの謝罪」





それだけでよかった。





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原告トニーは私



希望を見出せない日々の中
被告ヤーセルの暴言(私にとっては夫のモラハラ)を許すことができず告訴する。(私は告訴はしてないがレスという状況を作る)


ヤーセルは家族や周囲の人々のために
一度は謝罪を試みるが(夫はそんなことはしてくれない )
そこで逆にさらなる決定的な暴言をトニーから受け
(レスの続行)
尊厳を傷つけられたヤーセルがみぞおちに一発キメ(夫が不倫に走る)、
トニーは肋骨骨折(私は鬱や様々な体調不良)。



トニーがただ求め続けるのはヤーセルの「謝罪」



ヤーセルはたとえ有罪になっても
謝罪を拒み続ける。



自分の尊厳のために、
暴言も暴力もきちんと認めた上で。

    ⬆︎ここ すごく大事




劇中ではメディアの加熱報道が
民衆のさらなる対立を激化させ
ついには2人の仲裁に大統領が登場するまでに。


困惑する2人に大統領は言う。



「歴史は変えられない。
   私たちにとって大切なことは
   歴史を心に刻み、なお
   前を向いて
   輝く未来を
   築くことだ。」


(一字一句は覚えてないので多少 私の脚色?
   思い入れ?が入ってます)



それでも両者とも尊厳を捨てるわけにはいかない。



ただそんな中

トニーがヤーセルに見せた小さな優しさ。


ヤーセルも素直にそれを受ける。




裁判ではパレスチナとレバノンの歴史、宗教、政治的背景による複雑な関係、そしてそれに翻弄される人々の、戦争を体験したことのない私には到底想像もできないような苦悩までもが掘り起こされる。


双方が、誰のせいとも言えないながら
大きな大きな傷を負って
それでも生きているのだ。

「尊厳」だけは決して捨てずに。





その後、国中に注目されながら下された判決は






ヤーセルの「無罪」




裁判を通して
原告トニーも    被告ヤーセルも
お互いを少しずつ理解していく。



裁判に負けたトニーの顔にも
悔しさはなく
安堵の表情が垣間見える。



双方の関係者も同様の表情で
世間もようやく落ち着きを取り戻す。




日常に戻ったトニーとヤーセル。



そんなある夜
ヤーセルがトニーのもとを訪れる。



ここで年上のヤーセルが
滋味深い言葉とともに ついに和解の言葉を
トニーに投げかける…




と思いきや



ヤーセルはトニーに自分のDNAに刻み込まれているとも言える信仰、政治的、時代的背景に基づいて形成されてきた心情を思い切りぶちまける。


そして腹の底からの思いとともに吐き出す言葉は
トニーにとってはまさに尊厳を傷つけられる暴言。


思わずトニーはヤーセルのみぞおちに一発入れる。



裁判でついた決着はなんだったのか。



2人は裁判の結果に納得したはずじゃなかったのか。



2人は互いを理解し合うことはやはり不可能だったのか。



やはり傷つけられた尊厳は
もう二度と回復することはなく
2人の思いも決裂するのか。



歴史は変えられず
人々は永遠に許し合うことなく
闘い続けるしかないのか…




そう思って心が沈みかけた時
ヤーセルが 一言

でも確実に言葉を発した。



「すまなかった」



ヤーセルの謝罪は小さな一言だったけど
トニーに自分がやったのと同じ一発を
みぞおちにキメさせて
裁判に負けたトニーの尊厳も復活させたのだろう。





「歴史は変えられない。
   私たちにとって大切なことは
   歴史を心に刻み、なお
   前を向いて
   輝く未来を
   築くことだ。」



私は見終わって
この言葉を
何度も何度も噛みしめた。



私に


輝く未来なんて



あるのかどうか


わからないけど…











夫は見終わってそれほど感動した様子はなかった。

いつものように感想を話す時も
あまり多くを語らなかった。



私が夫に言ったのは


「やっぱり心からの謝罪って大切だよね。
   トニーもそれさえヤーセルがしてくれれば
   こんなにたくさんの人を巻き込むことには
   ならなかったのに。
   でももちろん、ヤーセルの謝れなかった気持ちも
   わかる。
   でもトニーの小さな優しさが
   そんなヤーセルの心を和らげたことも
   大切なことだと思う。」



夫は
私の目を見ることなく


「アラブ系の人はほんとに感情が激しいね。
   我々仏教徒には(信仰心なんてないと思うけど?)
   およそ想像できない感情の激しさだね。
   なんだか暗い映画であまり実感として
   あの状況に共感することはできないなぁ。
   ミッション・インポッシブル6の方が
   面白かったな〜〜」



「でもヤーセル(私は夫に置き換えて観ていた)
   無罪だったね。」



「当たり前だよ‼️
   あれで有罪なんて有り得ない‼️」



ヤーセルが無罪になったことと
大統領が
「歴史は変えられない」
と言ったことだけは
夫はいたく得心し


「そうだよ。過去は変えられないんだよ。
   前に進むしかないんだよ。」


と、私の目を見てそこだけははっきりと言いました。