~レベル上げ、ありえない冒険~


俺は機嫌が悪かった。怒っているというか、悲しいというか、う~ん・・・何とも言えない複雑な気持ちだ。

つか、この剣なんだよ!!少々俺の好みではあるが・・・剣というのか?これ。

まるで、美少女戦隊にでてくるセーラーサターンが使っているやつみたいだ。縦にピンと長いわけではなく、微妙に曲線というか・・・

なんだろ、奏の好みなのか?

そんなことを考えていると、奏が言った。

「レベルを上げれば、防具や装備を変更できます。」

あ~自分の好みにね・・・って違うだろっ。どこまでマニアックなんだよ。

驚きはあったが俺はあくまで冷静に対処した。

「レベルって何?どうすりゃあがるの?」

奏も普通に答えた。

「えっとね、とりあえずその辺の奴等倒しちゃって。」

なんだそれ?犯罪じゃねーか。

「あ、倒すだけだよ。殺さない事!!」

奏につけたされた。

「まぁとりあえず実践してみりゃ分かるって。」

実践って・・・。いいのかこんなんで?というか勝手にレベル上げの話しに・・・ん?ちょうどなんか変な奴来たよ。パンチパーマでサングラスかけて、俺よりかなり年上だな、おい。

いかにも悪そうだし、ありゃ敵だな。

なんかやんなきゃいけない雰囲気だし。さっき奏も・・・よし、やるしかないな。

「やーーーー!!」

俺は全速力で勢いよく相手に剣を振りかざした。

怖くて目を瞑ってしまったが、とたんに男の涙声がきかえた。

「いってぇ!!」

目をあけると、男は床にドスンと音を立てて倒れていた。

その瞬間俺は茫然としていたが、そんなのはすぐに消えてしまった。

「おぉぉ~!すごいな俺。やっぱ勇者なのか?」

初めて敵を倒し、俺は喜び、そして浮かれてしまった。

ゲームなら‘‘テテーン♪’’とかいって普通ならここでレベルアップだが、やっぱり現実か。少し期待してたが、こういうのはないみたいだ。

まぁとりあえず奏に自慢しよう。

「見たか奏!・・・」

後ろを振り向き、言いかけた俺の口は思わず閉じた。


「樹!!何してんのよ!今のはどう見たって一般人でしょ!この世界で17年間行きてきて、人間と魔物の違いも分からないの!?」


奏がいきなりキレだした。怖い!!!!!!あまりの怖さに言葉を失っていた。

「とりあえず逃げるよ!!」

そう言って奏が、俺の手を取って走り出した。

さっきまで得意気になっていた俺はなんだったんだ。

敵じゃないのかよ?今のどう見ても変質者だろ!奏も先に言えよ!

つか今一般人って言った?俺やばくね?冷汗がでてくる。

「捕まっちゃうんじゃ・・・」

俺の背筋が凍る。

刑務所行きとかマジ無理だから!俺の人生どうなるよ!?やばい、これはやばいだろ!

俺がプチパニックを起こしていると、奏が叫んだ。

「それは問題ない。今のアイツの記憶は消しといたから」

よ、良かった~!!つかなんで俺がこんな目に会わなきゃいけねーんだよ(泣)

もう嫌だぁぁ!!!


俺は1日目にして、10年分くらいの悲しみを味わった気がした。




~拒否、拒否、出発~



あれから、何分がたっただろうか。
隣をちらりと見れば、少し・・・、いや、かなり不満気な顔で座っている少女。

俺が出発する気満々だった少女をひきとめたのだ。もしかしたら、拒否できるかもしれないし。

「・・・・・・・・」

あ~、俺、この空気無理かも、

「・・・・・・・・・・あの、」

思い切って話しかけてみる。

「・・・・・・・・・・・・・」

無視。なんなんだよコイツ、俺がひきとめたから拗ねてるのか?

どこに連れていかれて何されるかも分からないのにホイホイ着いていく訳ねぇじゃん!!

というかなんで勝手に俺ん家入ってんだよ?不法侵入で訴えてやろうか!!

「訴えたって無駄だよ、無駄。」

「はっっ?」

さっきからなんなんだよ・・・。

人の心を読めるのか?そんな馬鹿な・・・。

誰なんだよ、こいつ!!

「え、私?私は、奏、っていうの。」

急に表情が明るくなった。そして続ける。

「年齢は・・・、うん。この世界でいったら14歳くらいなのかなぁ。人の心の中くらい読めるよ、あ、ずぅっと読める訳ではないよ?好きな食べ物は・・・・」

「あー、うん。大体分かったから。もういいよ」

止まりそうもない奏の自己PRを、我慢しきれずさえぎった。

すると、みるみる不満そうになる顔。

「あー、もう知らない。もう貴方が何言ったって出発するんだからね。」

そういったかと思うと、腕を強く引っ張られた。

「待て、ちょっと待て、聞けって!!」

「待たな~い、聞かな~い」

なんて我が儘な子供なんだ。人の話を聞かないくせに、自分の話を聞いてもらえないとすぐ拗ねる。

・・・と、そんなことを考えていると、自分の手にひんやりと冷たい感覚。

見てみれば、奏が俺の手に剣をあてていた。

・・・・・って。

「痛ってぇーーーーーー!」

俺の手から流れ出る、俺の大切な大切な血液。

「何すんだよ!刃をあてたら切れるに決まってるじゃねぇか!」

「樹が余計なこと考えるから悪いんだって。お仕置き。」

この生意気な少女に向かっての文句はたくさん浮かんできたが、何をされるか分からないから、やめた。

「もう、勇者なんだから勇者らしく。ほらこれ持ってよ。」

奏に言われるがまま、剣を持った。その瞬間、奏の口角が少し上がった気がした。

「・・・?」

俺が?マークを浮かべていると、さっきまで怒っていた奏の顔がニヤニヤと気持ちの悪い笑い顔へと変化した。

「これで完璧だよ!」

「・・・は?」

意味が分からなくて考えるより先に、声が出た。

「剣に触れたら、正式に契約を交わしたことになるんです。・・・よって、樹に拒否権はなくなりましたっ♪」

は?意味が分からない。分かりたくもないが。

「勇者しか、この剣を使えません。この剣しか、魔王は倒せません。・・・そして、私しか、魔王の情報を知りません。私たちしかできないんだよ、どう?ワクワクしてきた?」

無駄に目をキラキラさせて問いかけてくる奏。どうやら、魔王を倒すにはどうしても剣とこの少女と、なぜか俺が必要らしい。なんで奏はこんな楽しそうなんだ。魔王を倒すとなにかいいことでもあるのだろうか。

「よし、じゃあ、行くよぉっ☆」

ちょっと待って、無理。行きたくない。俺、忙しいから。

そんなような言葉がいくつも浮かんだが、結局でてきた言葉は、

「ぁ・・・うん。」

そっか、俺、拒否権ないんだっけ。

あ・・・・、涙でてきたかも。

「ほら、樹ー、泣いてる暇なんてないってー」



左手は奏に引っ張られ、右手には弱々しく剣を持ち、

・・・改めて出発。

起きてー」

女の子の声が聞こえる。

「起きてよー」

あぁもう朝か。

「起きろー!!」

あーはいはい、分かったから静かにしてくれ。まだ眠いっつー・・・

わぁぁ!!!」

これが今日の第一声だった。

俺が寝起きそうそうこんな大きな声を出したのは赤ん坊の時以来だろう。

これが夢だっら、どんなに良かったのだろうか・・・




~目覚め、そして悪夢~


12~14歳だろうか?目を開けると、緑色の長い髪をした小さな少女が俺の前に立っていた。

「お前、誰だ!!どこから入ってきた!」

俺はとっさに叫んでいた。理由はそう、沢山あるがまずは、その少女が俺に鋭い剣を突きつけていたからだ。

沈黙が少し続いた。

俺は殺されるのか?殺されるなら昨日勉強なんかしないで遊べば良かった。眠いせいか、意外と自分は冷静だった。

それを察してか、彼女がクスリと笑った。

「貴方を殺す気はないよ、とゆうかこんな所で死なれても困るんだけどね(笑)」

俺だって困る。まだやり残してることは山ほどある。俺はとっさに言った。

「じゃあ、目的はなんだ!金ならな・・・」

言い終わる前に彼女が言った。しかも大きな声で。

「パンパカパーン!!貴方は世界を救う勇者に選ばれました。おめでとうございます!」

は?腰を抜かした。なんだ、これは・・・まだ、寝ぼけているのか?何を言ってるんだ?

「樹ー、これは夢じゃないぞぉ。勇者なんだからこれくらい理解しなさいよー」

「!?」

今俺の考えてる事が分かった?てか、なんで俺の名前知ってるんだ!?こいつなんでこんなに生意気なんだよ!

「生意気だった?(笑)知ってるのは名前だけじゃないよ!“山本樹”17歳の高校2年生、好きな食べ物がお寿司で嫌いな食べ物がパセリ、初恋は小学2年生のときで、今は・・・あ、これ以上は言わない方がね♪」

!!!!!!??????彼女は楽しそうに話していた。

「あ、そうそう。さっきの話に戻ると、貴方はこの剣に選ばれた勇者なの。勇者は昔から魔王を倒さなきゃいけない運命でしょ?だから貴方も今日からその魔王を倒しに行かなければならないのよ。」

んなゲームみたいな話があるかぁぁぁぁ!!!!そう思っても声に出すことができなかった。

「詳しくは後で説明書でも読みなさい。さぁ出発するよ!」


彼女にどんどん流されていってしまってるが、いまいち理解できない俺だった。