学生だった頃、下宿先の東向きの縁側から大文字がまっ正面に見えた。その家は昔の吉田山の山麓に作られた別荘だといっていたから、贅沢な作りで東山の景色が眼下に見えた。 銀閣寺道の交差点の近くから、神楽岡通を今出川通から南にわずか下がったところに、吉田山の方に上がっていく何段もの石段がある。吉田山には抜けられないが、かなりの高台になっている。その石段を上がり切ったところに下宿はあった。勿論、下宿の縁側からは文句のつけられないほどの大文字の送り火が見られたが、その石段の登り切ったところで、石段に坐って大文字を見るのも、絶景だ。人が誰も来ないからゆっくり見える。恋人同士だったら特別席だね。 いつも、その下宿では8時の点火の頃には友だちや知りあいの人々が集まってくる。ビールを呑みながらその目の前で浮かび上がる真っ赤な「大」の字を眺めていると、世の無常観がただよってくる。不思議な炎の力だ。 また今年も、8月16日が近づいてくる。あのころの暑い京都の夏を思い出しては、懐かしい学生の頃の大文字の赤い大の字の姿を思い出している。
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