前回と前々回、「好き」という感情は記憶力を高め、逆に「嫌い」という感情は記憶力が低下するという話を取り上げました。
ある科目が一旦「嫌い」になってしまったら、もうだめなのか?
調べてみると「好み」は変えることができるそうです!
サルを使った実験で、好きではない形を見せたときにご褒美をあげるようにすると、好きではなかった形を好むようになることが確かめられました。
人間を対象とした研究もあります。
複数の人の顔の写真を見せ、「好き」から「嫌い」までいくつかの段階で評価してもらいます。
脳の活動をスキャンしながら、「好き」と評価したとき(脳の活動でわかる)に、目の前の丸マークを大きくし、逆に「嫌い」なときには丸マークを小さくしていく。
次に、好きでない顔の写真を見ながら、すぐ横にある丸を大きくしていくトレーニングをするのだそうです(その丸の大きさが好きの度合いを高めているという脳の仕組みは伝えられていない)。
すると、このトレーニングをした後に、再度、複数の人の顔を見て評価してもらうと、好きじゃなかった人の顔の好感度が好きの方向に変わってくるという。
反対のトレーニングをすると、高かった好感度を下げることもできる。
脳に刺激を与えることで、好きが嫌いになったり、その反対に、嫌いが好きに変わったりする、というのはとても興味深いです。
「嫌い」だと思っていても、脳を「快」の状態にしてしまえば「好き」になってしまう。
脳って不思議…。
マイナスをプラスにひっくり返すことよりも、プラスをマイナスにひっくり返すほうが簡単だそうです。
つまり、「好き」を「嫌い」に変える方が簡単。
恋愛に例えると分かりやすいかも。
強く憧れ、また素敵だと思う人がいて、ふとした瞬間に、カッコ悪いところ、ありえない言動などを見てしまうとドン引きし、一瞬で冷めてしまう。
「百年の恋も一時に冷める」という言葉もあります。
逆に「好きではない人」を急に好きになることは起こりにくく、一緒に行ったレストランが美味しかったとか、一緒に見た映画が面白かったなど、「プラスの経験」を積み重ねていく中で徐々に印象が変わっていく…。
別の例えでは、初めてビールを飲んだとき、
「苦っ、まずっ」
と思った人は多いのではないか。
苦い味の物に対しては、人間は本能的にそれを避ける傾向があるというから自然な反応。
でも、飲んでいるうちに、爽快な感じとか、アルコールの作用で緊張がほぐれてリラックスして「楽しい」状態に…。
場の雰囲気も重要で、気心の知れた友達とワイワイやって楽しく飲んだ「思い出」が脳に記憶される。
それを繰り返すと、苦いビールを美味しく感じるようになる…。
「好意的な感情」が記憶となって積み重なることで、「嫌い」や「苦手」が「好き」に変わる。
これを応用すれば、苦手科目を得意科目に変えられるかもしれません。