パパ「アポロ」
アポロ「なんですか?」
パパ「アポロがうちの子になる前に、チビ吉っていうワンちゃんがいたんだよ、
いつもチビって呼んでたけど」
アポロ「そうなんですね、会ったことないですが、どんなワンちゃんだったのですか?」
パパ「食いしん坊で、ずっとパピーな心のまま、大人にならない感じのワンちゃんだったよ」
アポロ「そうなんですね、ぼくとは性格は違いましたか」
パパ「ぜんぜん、性格違うよ。チビはアポロみたいに、好奇心旺盛じゃなかったし。
でも、食べ物に関しては、すごい能力を発揮していたけどね(笑)」
アポロ「そうなんですね、じゃあ、今日はチビ吉さんとお話ですか?」
パパ「そうだね、そうしよう」
パパ「チビ、チビ!チビ吉はいますかぁ」
チビ吉「お父さん!」
パパ「チビ吉、久しぶり、元気してた?」
チビ吉「はい、元気にしてました」
パパ「そうか、良かったよ。
この前、大ちゃんとお話したから、今日はチビとお話しようと思ってさ」
チビ吉「はい、いっぱいお話しましょう」
〇チビ吉との出会いは、大吉の散歩中に見つけたトリミングのお店でした。
生後2か月で数匹のミニチュアダックスがそこにいました。
チビ吉は一番最後に生まれてきたらしく、兄弟の中でも一番小さいワンちゃんでした。
一番小さくて、でも、なんだか気になり、チビ吉をその場で迎えました。
名前は、大吉がいるから、小吉ってのも何かなぁと思って、小ではなく、チビ吉にしました(笑)
パパ「チビはさ、家に来た時からいきなり大ちゃんに向かって行っていたよね(笑)
大ちゃんが、何だぁって顔していたよ」
チビ吉「えへへ、大吉兄さんに会えたから嬉しくて飛びついちゃったです」
パパ「そうなんだ、大に会いに来たんだね」
チビ吉「はい、だから大吉兄さんの散歩のときに、ぼくのいるお店がわかるようにしたんです」
パパ「そうだったんだ。
ところでチビは、おもちゃを与えても全然遊ばなくて、代わりにいつも人間用の1㎏のダンベルをくわえて走っていたよね(笑)
生後4か月くらいまで毎日それをくわえて走るもんだから、肩回りや首回りの筋肉が隆々としちゃって、ケージも懸垂して上から脱出を毎日してたよね(笑)」
チビ吉「はい、あの重いのがやりがいがありました!」
パパ「そのせいか、チビは前足の方が後ろ足より太かったよ(笑) 走り方も、大が後ろ足で跳ねるような走り方だったけど、チビは前輪駆動で、前足で走る走り方だったもんね」
チビ吉「そうでしたか、そんなところまでよく見てますね(笑)」
パパ「トリミングに行ったときも、チビは大ちゃんと一緒じゃないとダメだって、大ちゃんが大好きなんですねって言われたよ」
チビ吉「はい、大好きでしたよ」
パパ「でもさ、チビのことは大に任せっぱなしで、あんまり一緒に遊んであげなかったなぁって思って、後悔しちゃったりしたんだよ」
チビ吉「ぜんぜん、気にしないでください。
あのころは仕方ないんですよ。それにぼくは自由にさせてもらっていたから充分に満足してましたよ」
パパ「そう言ってもらえると救われるよ。
11歳になるまでは病気にもならずだったよね、
何回か引っ越しもしたし、チビも大も環境変化によくついてきたなぁって思っているよ。
当時はそこまで思えなくて、当たり前に思っていたけど、実際はストレスを与えていたのに文句も言わずだったんだよね」
チビ吉「ぼくは好きなようにやれたからストレス無かったですよ」
パパ「そういえば、チビが13歳の時、前庭障がいになって病院に行ったよね。
急にチビがふらふらしてひっくり返るからびっくりしたよ。
ふらふらしているのに、ぼくはまだご飯食べてない!って、ご飯を食べようとしていたその根性はすごかったよ(笑)
病院の先生は、チビ吉君はストレスフリーな目をしてますねって言ってたし(笑)」
チビ吉「ぼくの一番は、ご飯を食べることでしたからね」
パパ「夜遅かったけど、病院に行って、その時に初めて前提障がいという病名を知ったけど、
もう一生、首もまっすぐにならないですって言われてショックだったよ。
でも、チビの生命力が強いから、首もまっすぐに戻って安心したけど」
チビ吉「あれはぼくもびっくりしました。ご飯を食べようと思ったら、急に目が回ってご飯が食べられなくなっちゃって、えっどうしちゃったんだろ、でも、早くご飯食べなきゃって思って一生懸命でした」
パパ「(笑)でも元気はあったから安心したよ。
あの日は結局徹夜して、そのまま出張に行ったんだよ(笑)」
チビ吉「ごめんなさい、、迷惑かけました」
パパ「ぜんぜん、迷惑なんて思わなかったよ。
チビが無事で安心したんだから」
チビ吉「ありがとう、お父さん」
パパ「そういえばさ、チビがまだ4か月くらいのころ、ニンジンを丸ごと全部取って食べたでしょ。
食べ過ぎて、スヌーピーみたいにお腹を上に膨らませて寝っ転がっているのを見て笑ったよ(笑)
チビは食べ物に関してはいろいろとやらかしたからね」
チビ吉「ご飯の量が足りなかったんですよ」
パパ「うそだぁ、今のアポロよりもいっぱい食べてたよ。
その頃、パパも知識が無かったから、かなり大雑把なことしていたし。
だから本当だったら6キロ弱が標準体重なのに、10キロ近くまで太っちゃったんだよ。お腹が床につきそうだったじゃん。
先生に減量させてくださいって言われて、ご飯の量を減らして7キロ程度まで落としたけど、そうしたら毎日、お腹空いたぁばっかりだったけどね」
チビ吉「ぼくは好き嫌いもなく、なんでも食べました」
パパ「はい、そこはチビの偉いところだったよね、ご飯も薬も野菜もなんでもお皿に入れたらぺろっと食べてくれたから、楽だったよ。
それに落っことした餌の粒まで、良く見つけるなぁっていうところを匂いを嗅いで見つけていたもんね。
だから、チビが逝っちゃうときはご飯を食べなくなったときだなぁって思っていたんだよ。
そうしたら、やっぱり食べなくなって1日で虹の橋を渡っちゃった。
それでも最後まで食べようという意識はあったみたいで、最期はミルクを飲んで逝っちゃったね」
チビ吉「はい、そろそろだなぁと解ったから、パパが帰ってくるのを待ってました」
パパ「そうだったね、パパが帰宅して90分後に逝っちゃったよね。
最後にパパの腕の中で、今まで聞いたことのない声で4回、ワーンと言ったよね。
そのあと、チビの体から力が抜けて鼓動が小さく消えた。
ああ、って思った。
あれは、お父さんありがとう、お母さんありがとう、って最後に言ったのかな」
チビ吉「はい、そうです。
ぼくは最後まで好きにさせてもらって、たくさん愛してもらって、とっても嬉しかったから、最後はそれを伝えたかったんです」
パパ「やっぱりそうなんだ。ありがとうね。
後から知ったんだけど、ミニチュアダックスって結構、吠えるワンちゃんらしいんだよ。
でも、チビは全然吠えなかったし、されるがまんまで噛みつきもしなかったし、
甘噛みもタンスの角をガリガリするだけで人間に甘噛みもしなかったよね。
チビがガリガリしたタンスはまだあるよ(笑)
それに、パパのカバンの取っ手もチビにガリガリされたまんま残っているよ(笑)」
チビ吉「ぼくは本当にたくさん愛されて、とっても嬉しくて、またパパとママに会いたいって思ったんです」
パパ「ある日、チビの夢を見たんだよ。そうしたらちょうど49日目だった。
そのときの夢はリアルで、チビを抱っこした時の重さや毛の質感が、目が覚めた後も手に残っていて、その時は泣けてきたよ。
それから、チビのお葬式をする前だけど、
お花と一緒に眠っているチビを見て、
いつものように、チビ、寝てないで起きろって言いそうになって。
チビがいなくなったから、大ちゃん独りになっちゃって。
昔は、チビは大の後を追っかけて走っていたのにって思ったら、悲しくなっちゃった。
もっともっといっぱい遊んであげれば良かったなぁって。
チビと大が一緒に写っている写真を見て泣けてきちゃった」
チビ吉「そんなに思ってもらって嬉しいです。ぼくがいなくなった後も、大吉兄さんが心配だったからたまにぼく達のお部屋に行っていたんですよ」
パパ「そうなんだね、ある日、部屋に行って、
大、チビ、ご飯だよって言ったら大が来たんだけど、チビは来なくて。
あれっチビはどうした?と思って見たら、
横になったまま動かないから心配になって、
チビ!って体を揺すったのに動かなくて、
えっ?て思ったら、熟睡していたんだよ。
ふつうは揺すったら起きるでしょ、と思うんだけど、そんなに熟睡するもんなのかって笑ったよ」
チビ吉「ぼくは一度も不安に思ったことがなくて、ずっと安心していたので熟睡してました(笑)
だから、またパパとママに会いたいって思って」
パパ「そう、この前、大吉に聞いたよ。
チビはアポロになって生まれ変わってきたんだってね。
どうりでアポロの誕生日の日にちとチビの月命日の日にちが同じだったし、
アポロのしぐさがなんかチビに似てるなぁって思って、アポロに、チビみたいだなって言ったこともあったんだよ」
チビ吉「はい、ぼくはまた会えました。
あの頃のようにパパやママに迷惑をかけないようにって思って、おしっこもちゃんとトイレでできるようにしました(笑)
あの頃のぼくよりもアポロの方が賢いでしょ(笑)」
パパ「そうなんだね、チビは、急にうんちもするもんだから、えっ?いつしたの?って感じだったし、一度なんかご飯食べながらうんちしていたのをみて、びっくりしたしね(笑)
でも、チビなりにいろいろと考えてくれているんだね、ありがと(笑)」
チビ吉「はい(笑) 今はぼくはアポロになってますけど、アポロはアポロで、チビ吉のぼくではありませんので、また、当時のぼくに会いたいときにはこうやってお話をしましょう。
でも、パパとママにまた会えたのはとっても嬉しいです」
パパ「チビ、ありがとう。チビがいたおかげで大も寂しくなかったと思うし、チビには大雑把な接し方しかしてなかったのに、元気に生きてくれて、チビのおかげであの頃の思い出が楽しいものになったよ」
チビ吉「ぼくもです。ありがとう」
◆チビ吉からの一言◆
ぼく達は
パパやママから
たくさん愛されていたことをわかっています。
だから、ぼく達がいなくなった後に
ぼく達に謝ることなんて何もありません。
そのときそのとき、
ぼく達に
ご飯を出してくれたり、
病院に連れて行ってくれたり、
薬を飲ませてくれたり、
トイレのお掃除をしてくれたり。
そういうこと一つ一つが
ぼく達にしてくれている愛情だって言う事を
ぼく達は全てわかっています。
だから、ぼく達は幸せでした。
もっとこうしてあげればっていう後悔ではなく
あの時、
一緒に遊んだなぁとか、
あの時、
叱ったなぁとか、
そういう一つ一つ全てが
ぼく達との一緒にいた楽しい思い出です。
ぼく達と出会ってくれてありがとうございます。
ぼく達は幸せでした。
ぼく達を愛してくれて
ありがとうございました。
また生まれ変わって
あなたのもとにくるかもしれません。