私の手元に古い白秋詩抄が有る

私が田舎から就職のため東京に出るとき持ってきた本だ

岩波文庫の赤茶けた本の末尾には

昭和13年10月30日第7回発行(定価40銭)と書いてあるので

父は当時6歳

父が買い求めたものではない事が分かる


私の予想では

当時 私の家に間借りしていた

小学校か中学校の先生が

残していった物ではないかと思っている・・・


昭和の初めの田舎には

アパートだのマンションだのというものは無かったので

遠くから赴任して来る先生たちは

何所かの家に間借りするしかかなったのであろう

この先生については私の家のルーツを含め

後日ブログに書きたいと思っています


白秋の詩で私のお気に入りなのは



落葉松


  一

からまつの林を過ぎて、

からまつをしみじみと見き。

からまつはさびしかりけり。

たびゆくはさびしかりけり。



  二

からまつの林を出でて、

からまつの林に入りぬ。

からまつの林に入りて、

また細く道はつづけり。



  三

からまつの林の奥も

わが通る道はありけり。

霧雨のかかる道なり。

山風のかよふ道なり。



  四

からまつの林の道は

われのみか、ひともかよひぬ。

ほそぼそと通ふ道なり。

さびさびといそぐ道なり。



  五

からまつの林を過ぎて、

ゆゑしらず歩みひそめつ。

からまつはさびしかりけり、

からまつとささやきにけり。



  六

からまつの林を出でて、

浅間嶺にけぶり立つ見つ。

浅間嶺にけぶり立つ見つ。

からまつのまたそのうへに。



  七

からまつの林の雨は

さびしけどいよよしづけし。

かんこ鳥鳴けるのみなる。

からまつの濡るるのみなる。



  八

世の中よ、あはれなりけり。

常なけどうれしかりけり。

山川に山がはの音、

からまつにからまつのかぜ。





次のブログへつづく