数字に強い営業マンとして長年働いてきた私、宝くじ研究営業マン・健太は、日々「確率」や「期待値」と向き合う仕事をしています。 営業の世界では、数字は裏切りません。行動量、成約率、客単価。すべては積み上げです。 それでも私は、「一発逆転の夢」を完全には手放せずにいます。 宝くじは、まさにその象徴です。

では、その宝くじは、数学的に見てどんな存在なのでしょうか。 まずは、確率論の専門家による、非常に冷静で誠実な指摘を見てみましょう。

『宝くじを買うあなたにとっては一等の宝くじを引く可能性が均等にあるとした ら……という仮定の割り算が「一等が当たる確率」であり,また,もし仮に賞金総額を公平に割り当てたとしたら……という,仮定の割り算が宝くじ一枚の「期待値」です.そして,手数料がおよそ半分なのですから,当然,この期待値は値段の半分くらいです.これだけとってみれば明らかな損ですが,一方で,非常に小さな出費で非常に多額な賞金を得られるという他にない機会ではあります.』


原啓介. 確率論の誘惑: 世俗からの確率論入門. 数学通信/日本数学会 編, 2021, 26.2: 5-25.

営業的な言葉に置き換えるなら、これは「仕入れ値より、期待売上が低い商品」です。 冷静に見れば、明らかに赤字。 だからこそ「宝くじは損だ」と言われます。

しかし同時に、この文章は重要なことも示しています。 それは、「非常に小さな出費で、非常に大きなリターンを得られる唯一の機会」だという点です。 ここに、多くの人が惹きつけられる理由があります。

「当たりやすい数字」は本当に存在するのか

宝くじを買う人の多くが、次に考えるのは「どうせ買うなら、当たりやすくしたい」ということです。 その結果、よく使われる分析手法があります。

『宝くじ分析でよく使われるのが、出現回数の多い数字を探す方法です。これは一見すると合理的に見えますが、抽選が公平に行われている限り、特定の数字が本質的に有利になることはありません。また、「しばらく出ていない数字はそろそろ出るはずだ」という考え方もありますが、これも統計学的には根拠が弱いとされています。各回の抽選は独立しており、過去の結果が次に影響するわけではありません。』

当たりやすい番号を探る:統計学の応用

営業の現場でも、これと似た誤解をよく見ます。 「前月ダメだったから、今月はいけるはず」 「この商品は最近売れてないから、そろそろ出る」

しかし、数字は感情を持ちません。 宝くじも同じで、抽選は毎回リセットされる独立試行です。 過去の履歴に意味を見出したくなるのは、人間の性(さが)に近いものです。

それでも人は、なぜ宝くじを買うのか

ここまで読めば、「宝くじは数学的に損」「当たりやすい数字もない」という結論になります。 それでも、多くの人が宝くじを買い続けます。 私もその一人です。

理由は単純です。 宝くじは、数字のゲームである前に、「夢との向き合い方」だからです。

営業として数字を追いながら、私は気づきました。 期待値が低い挑戦をすべて排除していたら、人は驚くほど安全で、驚くほど小さな世界に閉じこもってしまう。

宝くじは、当たるための投資ではありません。 「もし当たったら、何をするか」を考えるための装置です。 副業、運気、チャンスの見極め方に関心を持つきっかけにもなります。

数学を知ったうえで、夢を見る

私は、宝くじを「当たるか当たらないか」で語るのをやめました。 期待値が低いことも、確率が平等であることも理解したうえで、それでも少額だけ買います。

それは、数字を無視しているのではありません。 数字を理解したうえで、夢を許可しているのです。

宝くじは数学的に損です。 それでも、「損だと分かっていて、どう付き合うか」を考えることには、十分な価値がある。 私はそう信じています。

夢を笑わず、夢を語れる人に向けて。 これからも私は、確率と現実と夢のあいだを、行き来しながら書いていきます。