随筆春秋事務局

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今日は布勢博一先生を囲んでの勉強会でした。

布勢先生は随筆春秋の指導者のお一人ですが、

「熱中時代」「純ちゃんの応援歌」等で有名な脚本家です。

今日は人を感動させる作品の書き方について質問しました。


以下、布勢先生のお話の一部要約です。




人を感動させる作品を書くコツなどというものはない。

人が感動するのは自分の「思い」によってするのである。

思いを引き出せる作品が良い作品だということは言える。

思いを引き出すには想像させる余地を配列する事である。

一例を挙げよう。




娘がまだ5歳くらいの時に落語の与太郎噺をしてやった。

与太郎が夜空に向かってしきりに竹箒を振っている。

親父が「何してるんだ?」と尋ねると与太郎、汗を拭き

拭き「なに、箒でお星様をはたいて取ろうと思ってね」。

それを聞いた親父が「馬鹿やってんじゃねえ。そんなん

で取れるもんか。……、屋根に登ってやれ」


娘はそこまで聞いて「与太郎のお父さんも馬鹿だねえ。

屋根に登ってやったってお星様に届くわけがないのに」

と言って笑った。私も「そうだね、馬鹿だね」と笑った。

すると娘が「東京タワーのてっぺんでやらなくちゃね」

と真顔で言った。私は大笑いした。



あるときこの話を2代目桂枝雀にした。枝雀は感心して
「面白いお嬢さんですなぁ」と言った。そしてすぐさま
こう話のオチをつけた。「場面が変わりまして、ある山里
に住むおばあさん。しきりに夜空を気にしておりましたが、
おじいさんを呼んで言いました。“見てくださいな。今夜
はどうも星の数が少ないような気がしますよ”……」
私はそれを聞いて、さすが名人枝雀だと感嘆した。

与太郎噺は滑稽の配列がAAAである。うちの娘がさら

AAAとした。聞き手はもうお腹いっぱいである。

AAAAという滑稽の積み重ねを聞かされても、くどいな

あと思うだけで、もう笑わないであろう。


枝雀はAから離れてポンと別の場面を持ってきた。これ

で聞き手はどうであろう。与太郎だか、5歳の女の子だか、

あるいは自分だかが、夜空を竹箒で掃いて星を落としてい

る様子を、それぞれ自由に空想の羽を広げて楽しめたの

ではないだろうか。



以上です。皆さんの参考になりましたでしょうか。