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「えんとつのむこう」


小野寺昭憲オフィシャルブログ - 破壊と創造の記録 --えんとつのむこう


 大森研一監督作品「えんとつのむこう」 上映会、なかのZEROに行って来ました。


 自主映画の個人上映会に行くなんて久々です。自主映画は当たり外れが大きいので滅多なことがないと私は観に行きません。ではどこで自主映画を観るのかと云うと、まずコンペティション部門の設けられた映画祭だけです。映画祭は審査員が選び抜いた作品のみを上映するので、言わば既にふるいに掛けられている厳選ラインナップなわけです。しかも様々な監督の作品が連続上映されるので、好きな作品に出会える可能性も高い。中にはどうしてこんなクソみたいな作品が入選してるのかと首をひねりたくなる作品もありますが──人のこと云えたもんじゃありませんが──レベルの高い映画祭ほど優秀な作品が多く無難なのは確かです。


 そんな偏屈な私が何としても単体で観たかった自主映画が、今回の「えんとつのむこう」です。監督の大森研一氏は母校・大阪芸大の先輩でもあり、これまで数々の映画祭でグランプリなどの賞を総ナメにしてきた方です。映画祭では最近しょっちゅう会っているような気がします(笑)。


 さて肝心の作品はと云うと、80分の尺を感じさせない見事なストーリーテリング能力を感じさせる逸品でした。物語自体は、病により余命一年と宣告された姉とその妹を中心にしたヒューマンドラマです。最後のオチも途中で分かってしまうくらいのシンプルな展開ですが、淡々と描かれる二人の生活の中に切なさと仄かな笑いが散りばめられており、登場人物全員のキャラクターが立っていることによって各シークエンスの均衡が絶妙に保たれ、観ていて退屈しません。独特の長回しによるセリフの掛け合いと間(ま)も素晴らしいです。役者さんの芝居も自然で良かったです。


 ただ、余命一年と宣告されたにしては死が重く描かれていない所為で、ラストの反動が薄くなっているのではないかと思います。同じ脚本でも自分ならこう撮るなぁと云うのは所々感じてしまいました。まぁそれはどんな映画を観てもそうですが。更に欲を言えば、ローバジェット自主映画ゆえの性か、技術面においてまだまだブラッシュアップできるのではと思いました。


 しかしながら、ショートフィルムを中心に年に数本程度制作するのがやっとな私にとっては、このように長尺の作品と短編とを織り交ぜながら毎年のように何本もコンスタントに作品を発表し続ける大森監督の情熱にはただ感嘆するばかりです。外野からあ~だこ~だと批評するのは簡単なのです。難しいのは、生み出すことです!