2023年1月20日

 

 

東電旧経営陣刑事裁判第二審無罪判決への抗議声明

 

脱原発・自然エネルギーをすすめる苫小牧の会

 

 

 1月18日、東京高等裁判所(細田啓介裁判長)は

東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の三被告人に対し、いずれも一審と同様に無罪の判決を言い渡した。

 

 本件は、福島事故の刑事責任が問われた唯一の裁判で、起訴状によれば、三人は海抜10 メートルの原発敷地より高い津波が押し寄せて事故が起きることを予見できたのに、原発の運転を漫然と続け、「双葉病院」(大熊町)と介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」(同)から避難を余儀なくされた入院患者ら44人を死亡させるなどしたものである

 


 第一審は2019年9月19日、東京地裁(永渕健一裁判長)によって無罪判決が下されたが、

 


 刑事責任が明確な被告人らに対する無罪判決は到底容認しがたく、判決直後に本会は全くの不当判決であると言う声明を出した。

 

 だが、この度の二審が一審の過ちから何も学ばず再び愚かな判決を下したことに、心底より遺憾の意を表せざるをえない。満腔の怒りを持ってこの判決に抗議するものである。

 

 本件二審の愚かな点の第一は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」を「見過ごせない重みがあ」るとしながら、「電力事業者は漠然とした理由で(原発の)運転停止できない」と全く反対の評価をしている点である。

 

 昨2021年7月13日の東京電力株主代表訴訟東京地裁判決(朝倉佳秀裁判長)では、科学的知見に基づく「長期評価」に対する判断は明快且つ至極真っ当である。

 

 2008年の東電の子会社の試算では、原発建設当初の想定の5倍超の津波が算出され、最大15.7メートルという値が出された。

  これは、従前の安全性が根底から覆される事態であり、浸水を前提とした設計に基づいた対策を取っていれば事故を未然に防げた可能性が高く、東電の現場土木技術者たちからもそういう声が上がっていた

 

 だが、旧経営陣はその「津波予見」の声を聴いていながら、結局は漫然としてその措置を怠ったことが認定されたのである。本二審へは、この東京地裁朝倉判決が証拠の一つとして提出された。

 

 第二の点は、当時東電が2004年10月23日に発生した新潟県中越地震の長期化によって、柏崎刈羽原発の停止を余儀なくされ、収益が悪化したことがその背景にあることを見逃していることである。

 

 同地震は、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)以来、当時観測史上2回目の最大震度7を記録し、M6を越える規模の大きな余震が複数回発生するなど、余震回数が多く群発地震的様相を呈し、地震から7年以上経った2011年でも最大震度2から3の余震が時折発生しているほど長期化したのである。

 

 すなわち、津波防止の措置を怠った理由の一つが、平たく言えば、経営悪化が背景にあったとは言え金をケチったことであって、それが多くの死亡者・犠牲者を出した点を見逃していることである。

 

 本判決は心ある多くの国民の憤激を買っているほど酷い判決である。当然ながら原告は上告すると思われるが、願わくは最高裁が国民の信頼に背かず、真に公正な判決、即ち被告らの有罪判決を下すことを心から期待するものである。

  

以上