2022年8月25日

 

岸田首相の「原発新増設検討を」発言を論難する声明

 

 

脱原発・自然エネルギーをすすめる苫小牧の会

会長 浦田  操

 

 

昨24日、岸田首相は脱炭素の実現について議論するGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で「原発の新増設について検討を」進める考えを示した

 

実際に新増設する政府方針が決まれば、2011年の東京電力福島第一原発事故以来の大きな政策転換となるもので、各報道・メディアが一斉に取り上げた

 

「次世代革新炉の開発・建設など政治判断を必要とする項目が示されました。あらゆる方策について年末に具体的な結論を出せるよう検討を加速してください」との発言も報じられた

 

一体これは、一旦撲滅された天然痘ウィルスが保存中の研究室から飛び出したのか、それともゾンビが蘇ったのか

 

2011年の東京電力福島第一原発の事故は、それまでの「原発安全神話」を崩壊させ、可及的速やかに全ての原発の廃炉に向けた工程を策定すべきであることを示した

 

原発は、確かに発電の仕組みそのものではCO2を発生させないが、原発建設・ウラン採掘から廃炉・核ゴミ処分に至るまで、天文学的な金がかかり(その殆どは結局国民の負担)、あらゆる過程でCO2を発生させるのみか、核ゴミについてはその処分の安全性も確立しておらず、処分地すら決まっていない

 

 

更に言えば、政府の方針である「核燃料サイクル」そのものが破綻済みであることは、口が酸っぱくなるほど繰り返し指摘してきた

 

 

勿論、苛酷事故時の安全な住民避難方法・経路は実際には到底策定不可能であり、これこそが最重要であることも指摘せねばならない

 

 

そして現在、事故を起こした東電は住民に対する莫大な損害賠償の支払いを法的に確定され、経営責任者の個人的責任まで追及されている

 

 

だがここに来て、幼稚な「原発安全神話」が息を吹き返し、急速に原発再稼働の動きに拍車がかかっている

 

 

政府が、ウクライナ情勢などの影響で中長期的な電力需給の逼迫を懸念していること、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて既存の原発を最大限活用したいということ、審査合格済みなのに未稼働である7基の原発の再稼働を目指すことなどは一応理解できる

 

政府・財界ともに「原発安全神話」信奉者だからだ

 

しかし、「最長60年と定められた原発の運転期間の延長や、安全審査に伴って稼働停止されていた期間を運転期間から除外することを検討する」などに至っては驚くほかない

 

昨年10月に自ら策定した「エネルギー基本計画」との整合性はどうなるのか

 

謂わば「危機的状況」に乗じて原発依存に回帰しようとするのは、恰も薬物依存症患者が繰り返し薬物に頼ろうとするかのようだ、というよりどさくさ紛れの火事場泥棒のようなものである

 

岸田首相の原発回帰・増設発言、これこそ火事場泥棒資本主義・ショックドクトリンそのものである

 

我々は、原発がGX(グリーン・トランスフォーメーション)、つまり脱CO2や太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーへの転換で、経済社会システム全体の変革を目指すことに繋がらないことを繰り返し指摘してきた

 

そればかりか、原発依存は逆に核ゴミを増やし、次世代への負担をますます大きくするものであり、もっと避けるべき方向性である

 

愚かな先祖返りをせずに、原発即時廃炉・再生可能エネルギーへの全面的転換を志向することこそが、唯一の選択肢であることを改めて強く主張するものである

 

以上