巨人独走と思われた本年度のペナントレースだが、まだ序盤だというのに、「異変」が起きている! 顕著なのは、広島カープの好調さだろう。
マエケンこと前田健太投手が柱なのは当然だが、ルーキー大瀬良君が187cmの長身から持てる力を存分に発揮して、早くも果たした完投勝利も含めて4勝を挙げている。
福岡六大学リーグで通算38勝、大学日本代表チームの一員として国際経験もあり、物怖じしない自信を持った投球をやってのけている。ヒーロー・インタビューでも言語表現・表情ともに豊かで、取材陣からの好感度も高い。
そういう伸び伸びとした言動がとれるというのは、広く世界を見つめているせいだろうか。早い時期から目標をメジャーに向けているのかも知れない。(こういうタイプの選手たちが、今後さらに増えてくるだろう。日本人選手のメジャー志向を一言の下に切り捨てる球界OBたちも少なくないが、それならば「元大リーガーの助っ人を日本球界から追い出せ!」とでも叫ぶべきである。)
2月の日南キャンプへ取材に駆けつけたとき、大瀬良君の投球を一目見たいと思いブルペンで暫し待つことにした。エース・マエケンや新人の九里君が投げていても、なかなか姿を表さない。
私の隣の椅子に腰かけて、同様に大瀬良君の登場を今か今かと待っていて、とうとう痺れを切らしたらしく、年老いた婦人が私に声を掛けてきた。「谷沢君!久しぶりね~。覚えているわよ」と懐かしい表情を浮かべている。先刻からそうでないかと思いながら、もし違っていたら失礼なので黙していたのだが、やはり先代オーナー松田氏の奥様だった。広島カープを我が子のように慈しんでいたのは、松田オーナー一人ではなく、まさに琴瑟相和(きんしつそうわ)の典型だ。
リリーフ陣では、FA・大竹投手の人的補償(いかにも選手を商品とみなすような嫌な言葉だ)で巨人から移籍した一岡竜司君が、まさに水を得た魚、塩水にいた去年までと違って澄んだ真水の鯉のようだ。
昨年の一軍登板は9試合のみだったが、すでに16試合に登板し1勝12ホールドの活躍だ(5月9日現在)。何しろ、いまだ失点0なのだ。
一方、攻守に渡り活躍するのは3年目の菊池涼介内野手である。新人の頃は、たとえば橋本清解説者のインタビューの際にもタメ口をきくような選手で、野性的な一面はあるものの、上下関係に厳しい球界では印象がよい方でなかった。
この4月から、CSプロニュー(フジTVプロ野球ニュース)で新たな企画として、「遠藤・谷沢の今こそ!エンヤー」を始めたので、私はさっそく菊池選手をとりあげることにした。神宮球場で彼を取材したが、だいぶマナーも身に付いており、将来、球界を代表する一人になっても恥ずかしくない人物に近づきつつある。
彼は、実は松本スカウトが岐阜学生野球リーグ所属の中京学院大に何度も足を運ぶほど、注目していた。学生コーチだけのチームだったが、動物的ともいえる俊敏な感性の持ち主で、都会チームにはない「自然あふれる」環境で、自由奔放に野球を楽しんでいた。
広島カープはそんな若者に目敏い。ドミニカのカープ・アカデミーに通じる視点が根本にあるのだ。近年はアカデミーから育つ選手が少なくなったが、先日の試合もアカデミー出身のライネル・ロサリオ選手が4打数4安打を記録した。(残念なことに、翌日ファームに落とされた。4番打者キラ・カアイフェ選手の代役だからしかたないとも言える。)
カープは昨年CS出場した力が、今年は開幕から伸長してきており、野村監督の下で、「投手力+機動力」野球の復活も近い。これまで、しばしば「カープの活躍は鯉のぼりの季節まで」と揶揄されることが多かったが、それをもはや死語とするような勢いである。
