推しが死んだ。肺高血圧症だったらしい。まだ詳細はあまり分かっていない。それにも関わらず、その報せは列島中を駆け巡り、悲しみの声を重ねさせた。肌寒い日だった。
肺高血圧症とは、心臓の右心室から肺に向かう動脈、つまり、肺動脈の血圧が高くなる疾患を指す。疾患が進行すると肺動脈の血管の内膜の線維性増殖と中膜の肥厚がみられ、労作時呼吸困難や易疲労感が現れる。今回は飛行機に乗った直後に心不全に陥ったとのことなので、やはり気圧の差が心臓に負担をかけたのではないかと考えられる。
小さい頃から毎日プロ野球をテレビで見るのが日課だった私にとっては、推しは身近にいた。しかし幼少期は関西にある黄色い球団のファンだったこともあり、その生態は謎に包まれていた。中学生になったころにヤクルトの優勝を見て、球団に興味を持った。その頃のヤクルトはスター選手ばかりであった。ライアン小川選手、強面の畠山選手、トリプルスリーの山田哲人選手、そして首位打者川端慎吾選手。そんなスターばかりの中でひときわ輝きを放っていたのが推しだった。マスコットとは思えないフリップ芸。鳥なのに好物が焼き鳥であるというファンキーな性格。絶対成功しない空中くるりんぱ。その全てが愛おしかった。
昨年に球団マスコットとして、球界初の2000試合出場を果たしたばかりだったのに...
前鳥未踏の2896試合出場達成して欲しかった。
2000試合を達成した時、推しはこう言っていた
わたりどりだけどわたらない
このばしょがすきだから
慣れ親しんだ神宮から、推しは虹の橋を渡ってしまった。いくらペンギンと呼ばれても彼はやはりツバメだったのだ。
推しはマスコットとして、唯一無二だった。好きな選手が引退することはあっても、マスコットとお別れするとは夢にも思わなかった。しかもこんな形で。
捲土重来 これは今年度のスワローズのチームスローガンだ。その意味は「一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返して巻き返すことのたとえ。巻き起こった土煙が再びやって来る」である。
推しは飛び立つときその翼で、大きな風を起こしたはずだ。なんせあの巨体を持ち上げたのだから。
その風はきっと今年の神宮に土煙を起こすだろう。
合掌