飛行機で膝をぶつけて古傷を思い出した

 

 屋久島高校の体育祭のリレーに参加したとき、最終ランナーとしてバトンを受け取って走り出した直後に、校庭の砂地のまさつ係数を身体がはかりそこねて思い切りこけてから、4週間くらい経って、広く擦りむけていたひざの怪我もさすがに治りかけてきた。

 

 面積はかなり広かったのだけれども、周辺から治ってきて、最後に、ぽこ、ぽこと丸いかさぶたが二箇所に残ってそれもとれたときにはほっとした。

 

 ただ、まだ新しい皮膚は形成途上でやわらかい感じだった。

 

 今回、シカゴに来るときに、また転ぶかもしれないし、念の為に大きめの絆創膏もってこようかなと一瞬思ったんだけど、まあ、だいじょうぶだろう、いいかっ、と思って、リュックに入れずにきた。

 

 さて、シカゴ行きの飛行機に乗っていて、しばらく眠って、あと3時間くらいで到着というときのことである。

 立ち上がろうとしたら、勢いあまって、座席の前の部分にひざをかなり強くぶつけてしまった。

 

 イテッ!

 

 ふだんだったらそれで済みそうなものだけれども、ちょうど怪我をした側のひざで、なんだか衝撃が「染み入る」感じがする(笑)。

 

 これはっ、と思ってズボンのひざのあたりを見たら、赤い筋が出ていた。

 ちょっと動いているうちに、赤い筋が増えてきている。

 

 やばい、と思ってトイレにいったら、大したことはなかったのだけれども、案の定、血がにじんでいた。

 なおりかけで、まだ皮膚の薄くやわらかいところが切れてしまったのだ。

 

 困ったなあと思って、トイレットペーパーで抑えたら、やっぱりつく。

 

 そうだ、と思って、トイレットペーパーを少し長めに出して、ひざに巻き付けてみたけれども、強度が足りなくてすぐ切れる。

 

 しばらく呆然としたけれども、まあ、そのうちとまるだろう、と思って席に戻った。

 

 そんなことをしているうちに、ズボンのひざのあたりのしみの数が増えている。

 

 歩く時、すれて、ひりひりいたい。

 なるべくズボンがひざに当たらないようにして座っていたら、血はとまって、ズボンの模様が筆でさささとなぞったようになった。

 

 血の染みはとれにくいとは言うけれども、時間が経つとだんだん色がくすんでくる。

 

 「あっ、あのひと、膝から血を出している」と思われるのは恥ずかしいけれども、だんだん何の染みかよくわからなくなってくる。

 

 ケチャップやソースをこぼしたと思うかもしれない。

 

 屋久島で怪我をしてしばらく、なにかの際にひざをあててイテテと思うことが続いた。

 

 人体というのはふしぎなもので、いろいろな動作のときに身体のいろいろなところが接触している。

 

 ふだんはなんとも思わないけど、怪我をしているとその度に痛いと思う。

 

 そうやって、人体の世界認知のメカニズムについていろいろ考えるきっかけになったことはありがたいことだった。

 

 また、ロボットをつくる上でも、そのあたり関連すると思う。

 

 まあ、そんなことをいろいろ考えている場合じゃなくて、とっとと怪我なおせ、ということだけれども。

 

 いずれにせよ、飛行機で膝をぶつけて古傷を思い出した、というお話でした。

 

(クオリア日記)