監督 ジョセフ・グリーン

ビル(ハーブ・エヴァース)      

ジェーン(ヴァージニア・リース)         

カート(レスリー・ダニエルズ)             

ドリス(アデール・ラモント)

1962年/アメリカ

 

若き外科医ビルは手術の末死んでしまった男を

実験的な手法でよみがえらせることに成功する。

一緒に手術をしていた父親の医師はその行為に敬服しながらも

「狂気と天才は紙一重だ。正しい道を歩め」

と忠告する。

しかし息子の医師ビルは自分が神的な存在であると思いこんでいる。

人体移植の実験をひそかに繰り返していたのだ。

 

お勧め度

★★★☆☆

 

 

 手術室。一人の男が手当ての甲斐なく死ぬ。執刀医はあきらめるが、一緒にオペにあたっていた息子の医師ビルが実験的な取り組みを始める。胸を開けて心臓を直接揉むように父に依頼する。ビルのほうは脳に電極をあてて刺激する。するとどうだろう、横たわり死んでいた男の指がひくひくと動き始める。

「生体反応があります!」

看護婦は叫ぶ。

患者は息を吹き返し状態も安定してくる。ビルは生き返って当然という顔をしている。自分は天才なのだ。ビルは生体移植を目指している。父親はそれに否定的だ。

「動物を使え。人体実験はしないことだ」

 

父親の医師

 

息子の医師 ビル

 

 ビルは婚約者のジェーンと連れて別荘へ向かう。

 

ジェーン      ビル

 

 その別荘はビルのラボになっていて、密かに人体移植の実験をしている。ビルは車にジェーンを乗せて猛スピードで走り出す。アクセルを踏み込む。危険な運転だ。しかし、一緒に乗っているジェーンはなぜか平然としている。曲がりくねった道でビルは運転を誤り、車はガードレールに接触し大破する。ビルは車から投げ出されるがかすり傷程度だ。ジェーンは車内の残っているようだ。車は燃えている。ビルは社内から何かを拾いだして上着にくるみ走り出す。

 

ビル

 

 途中で休んだりしながらふらふらと走り、別荘にたどり着く。上着からは血がしみ出ている。何が包まれているのか? ご賢察の皆さんはもうお分かりだ。ジェーンの生首だ。

 ビルはさっそく助手のカートに手伝わせてジェーンの首を怪しげな液体につけて蘇生させる。ジェーンの首から下の肉体は車とともに焼けてしまった。そこで他の女の肉体に首を移植することにする。助手のカートは、そのような反倫理的な実験には反対です、というが、ビルの意思は変わらない。

 

カート

 

 カートは心配する。カートの左手は実は移植されたものなのだった。そしてその手は醜く歪んでいる。ジェーンの移植も失敗するのではないか…。

 

カートの左手

 

 そして、研究所にはもうひとつ秘密があった。クローゼットに中に、何やら実験途中の生命体を隠しているようなのだ。不気味なうめき声が聞こえてくる。

 ビルは若い女の肉体を求めて踊り子のいる飲み屋へ行く。ムーディーな音楽に乗せて若いダンサーが妖艶に踊っている。

 

 

ダンサーはビルに流し目を送る。ビルの満足げな顔。しかし、別の女が嫉妬して、二人の女は喧嘩をはじめビルは退散する。

 

 実験室のジェーンは意識がはっきりとして、ビルは自分を死なせるべきだったと思い、こんな姿で生かしておくなんてひどいと思う。こんなにつらい目に合わせて…、と怒りを感じ始める。そこで、クローゼットに閉じ込められている生き物に一緒に復讐をしようと持ち掛ける。

 

ジェーン

 

 ビルは街中を車で流しながら女を物色する。すると知り合いのドナに出会う。ドナは水着のファッションショーを見に行くという。ビルはその話に乗って、ドナとその女友達を乗せて会場へ行く。水着を着た女性たちに目を細めるビル。しかしそこで、ドナからもっときれいな肉体を持った女性の話を聞く。ドリスだ。高校の頃の同級生だ。美術のモデルをしているらしい。最も美しい肉体を持った女。ビルの標的は決まった。ドリスの体をジェーンに取り付けるのだ。

 ドリスは顔に傷跡のある女だった。しかしバディは素晴らしい。ドリスは傷に負い目を持っている。

「美しい顔にしてあげるよ」ビルはドリスに申し出るのだった。

 

ドリス     ビル

 

 ビルがドリスを連れて実験室に戻ると、カートが死んでいる。怪物にやられたのだ。

 それでも、ビルはドリスに睡眠薬を飲ませ眠らせて手術室へと運ぶ。

 

ジェーン

 

ジェーンはやめるようにいうがビルはいうことを聞かない。怪物がクローゼットの中からドアをたたく。気になったビルはクローゼットへと近づく。すると、のぞき窓から大きなごっつい腕が出てきてビルの首を絞める。

 

 

 もがくビル。するとドアが外れおぞましい姿の怪物が現れる。

 

 

 目が変なところについている。いくつの死体をつぎはぎされた実験台にされた男なのだ。その男は恨みの募るビルを書き殺し、ドリスを抱いて部屋を出ていく。部屋は火の海となり、ジェーンの笑い声が響くのだった。

 

 

 ビルのサイコパスぶりがもっと激しく巧妙にかつ冷酷に表現されていれば面白くなったのだろう。殺され方が間抜けすぎる。

 怪物ももっとおどろおどろしくぬめぬめとしていて、眼球が垂れ下がっていたり、体中から粘液が滴っていたりしたらよかったのに、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

監督 デヴィッド・ゼルナー

脚本 デヴィッド・ゼルナー、ネイサン・ゼルナー

クミコ 菊地凛子

ササガミ(社長) 勝部演之

2014年/アメリカ

 

お勧め度

★★★☆☆

 

映画『ファーゴ』を見て、

劇中、スティーヴ・ブシェミが雪に埋めたビッグマネーを

探そうとして死んでいったといわれた日本人女性。

事件が起きたのは2001年ミネソタ州。

真相は自殺といわれている。

しかし、その女性とやり取した警官とのミスコミュニケーションで、

映画を信じてお金を探しに来て凍死したと

報じた新聞があって噂が広がり、

都市伝説となった。

 

 

 海岸で地図を頼りにビデオテープを探しあてるクミコ。

古いアパートの自室でそれを見る。ウサギのいるその部屋は乱雑で翳って見える。米粒をウサギに振りかける。餌なのだ。

 

 会社では浮いた存在。与えられた業務をやる気なく無機的にこなす。

 

クミコ

 

 路上で久しぶりに会った知り合いにも反応は薄い。

 

 

 拾ってきたテープには『ファーゴ』が録画されていた。夜な夜なそのテープを見て熱心にメモを取る。映画では頬に怪我をしたスティーヴ・ブシェミが道端の雪を掘り金の入ったケースを埋めるシーンが映し出されている。真剣な表情でそれを見つめるクミコ。

 

 図書館で本を持ち去ろうとして警備員に捕まる。クミコが持ち出そうとしたのはアメリカの地図帳だった。

 

クミコ

 

クミコが警備員に対してしゃべる内容は、警備員にとっては不解な内容で、警備員はクミコの異常性と追い詰められている精神的状況を感じる。

 

 

クミコ     警備員

 

 欲しかったページは、『ファーゴ』でブシェミが現金を埋めたミネソタ州のところ。警備員は、そのページを破りクミコへ渡す。

「もう、戻ってこないで」警備員はそういってクミコを逃がす。

 

 会社では社長が遠回しに退職を促す。暗くじめじめしたクミコ。社長も陰湿で、のらりくらりとクミコの弱み・劣等感を攻めていく。

 

社長

 

 喫茶店で友人と会う。友人は小さな子を連れてくる。かわいらしい子だ。その子を見ているうちに上司の言葉を思い出す。

 

友人の子

 

「君くらいの年の子は、皆、結婚して家庭をもっているものだ」

 

 家に帰るとクミコは何度も『ファーゴ』を見て検証する。カセットデッキが壊れるとDVDデッキを買ってくる。ブシェミが金を埋めた地点を丹念に計測する。

 

 会社で再度上司から退職をほのめかされる。はっきりと返事をしないクミコ。

 社長はクミコに会社のクレジットカードを渡し、いう。

「妻の誕生日に何か買っておいてくれ」

 

 クミコは社長から預かったクレジットカードを利用し、アメリカへ渡ることを決意する。

 ウサギを捨てに行く。公園へ連れて行ってウサギを放すがウサギはクミコのそばから離れようとしない。

 

 

 それで地下鉄の中へ置き去りにする。ウサギを見送りながら涙を流す。

「ごめんね、これしか方法がないの」

 

 アメリカへ移動する。そしてファーゴに向かうバスに乗る。しかしバスが途中で故障する。クミコはバスを降り冬の道を歩き始める。

 

クミコ

 

 途中その姿を見た車の女性に拾われる。親切で話好きな初老の女性に、家に泊るようにいわれるが、夜中に抜け出し街をうろつき宿に入る。

 

 母親に電話するが、母親はつれない。電話を切るクミコ。

 翌朝、チェックアウトしようとすると、会社のカードが使えなくなっていることがわかる。部屋に戻り毛布を裂いて外套のようにして身に纏い変装し、クミコは宿代を踏み倒して去っていく。

 

クミコ

 

 道を歩いていると、警官がやってくる。

 

クミコ

 

 毛布を着た人が歩いている、と通報があったのだ。

 署へ行って警官にファーゴの映像を見せる。

 警官は「それは作り話なんだ。事実に基づいて作られているというのは観客を楽しませるための演出だ」と説明するがクミコは納得しない。

「これは事実。私は宝を発見した」と言い張る。

 

警官 

 

 結局クミコは警官の善意を踏みにじり、逃亡する。タクシーに乗ってファーゴを目指す。

 そしてタクシーの料金を踏み倒して、雪原へと走って逃げていく。

 徐々に困憊してくる。氷の中に宝物が見えた気がする。苦労して取り出すとそれはただの石塊だったりする。

 森林地帯をさまよう久美子。その表情には生気がなく目つきもうつろになっていく…。唯一の希望を求めてクミコはひとりさすらう。

 

 

 クミコとかかわるアメリカ人は初老の女性にせよ警官にせよ人が良い。食事をさせてくれ、警官は服まで買ってくれる。しかし、それらの親切を踏みにじるようにしてクミコは絶望の大地へと歩み出す。否、クミコにとっては、人生最後の望みをかけた希望の道だったのかもしれない。

 

 

 ラストはクミコが死にながら見た夢だったのか。宝物は思った通りの場所にある。かばんには大量の札束が入っている。

 

 

そしてクミコの傍らには、東京で捨てたはずのウサギがいる。それを当然のように受けとめ、名前を呼びかけるクミコがいるのだった。

 

 

嬉しそうな顔をして、ウサギを抱いてクミコは歩き始める。

 

 

 

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監督 ジャルマリ・ヘランダー

アタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)

ブルーノ・ヘルドルフ(アクセル・ヘニー)

ウルフ(ジャック・ドゥーラン)

アイノ(ミモザ・ウィラモ)

2022年/フィンランド

 

あきらめない男、死ぬことをしない男。

シスと呼ばれる、元フィンランド特殊部隊の兵士コルピ。

シスとはフィンランド人のアイデンティティの一部ともいえる言葉で

「乗り越えていく力」「窮地に陥ったときに、状況をはねつける力」

といった意味合いがあるらしい。

 

第二次世界大戦末期、

コルピは一人荒野で金の採掘をしていた。

思いがけず大きな金塊を掘り当てる。

それをもって都会の銀行へ向かう。

途中、行軍しているドイツ軍に出会う。

コルピは、やり過ごそうとするが、

敗走中のドイツ兵たちはやけになっている。

コルピの持っている金塊に目をつけ奪おうとするが、

コルピはそれに抗う。

一人対多数の戦闘が始まる。

 

お勧め度

★★★★☆

 

 

 1944年、第二次世界大戦末期、敗色の濃いドイツ軍は、フィンランド人の街を破壊しながらノルウェーに向かっていた。率いていたのは中将のヘルドルフだった。

 

へルドルフ

 

 元フィンラン軍の特殊部隊の兵士であったコルピは、兵役を引退し、一人ラップランドの荒野で金を探す暮らしをしていた。

 あるとき、コルピは大きな金塊を発見する。大量の金塊を集めて北の大都市ロヴァニエミへ馬に乗って向かう。愛犬も随行している。

 

コルピ

 

 途中で、コルピはヘルドルフ中佐率いるナチスの武装親衛隊に遭遇する。ヘルドルフはノルウェーへの撤退中に村々を破壊し、道中でさらった数人のフィンランド人女性を連れていた。兵士たちの慰み者にしていたのだ。

ヘルドルフとコルピは互いに視線を合わせるだけで、ほとんど関心を示さず、通り過ぎた。 間もなく、コルピは親衛隊の第二小隊に遭遇し、襲われ、金塊でいっぱいの鞍袋を発見される。

 兵士たちはコルピを老人扱いし馬鹿にしながら殺そうとする。しかしコルピは彼らを全員素早く殺害する。

 

 

 騒ぎに気づいたヘルドルフは来た道を戻り、小隊が殺害されているのを発見する。そして、死んだ兵士の持っていた金塊の一つを発見する。ヘルドルフはコルピの持っている金塊を奪うために追跡を始める。ナチスとコルピの壮絶な闘争が始まる。

 

 

 

 コルピの不屈の精神。ロシア兵に妻と子供を殺されて復讐に燃え300人のロシア兵を殺害した過去がある。殺戮兵器のような男なのだ。

 

 怪我を負っても、火で焼き消毒する。皮膚の裂け目は針金で修復する。首を吊られても、強靭な首回りの筋肉で窒息を免れ、全身火だるまになっても、池に飛び込み難を逃れ、池を捜索するドイツ兵を捕まえて殺し、肺に入っている空気を吸って息継ぎをする。金の採掘に使っていたつるはしを武器にして暴れまわる。

 

 

 そして、捕虜になっていた女性隊の逆襲。腹を据えた女は恐ろしい。

 

 アクション映画ファンに、残虐性と意外性に満ちた血みどろの満足感を与えてくれるすぐれた作品ではないかと思う。

 

 

 

 

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