~つづき~





【 黄金率 】





前述したとおり、

俺は結婚しているが、

別な女を求める日々を送っている。

一般的には批判する人も多いだろう。

だけど、

俺には“それ”が必要なんだ。

誰も知らない心のあな。

それを埋めてくれる人を求めている。

妻のことは大好きさ。

いろんな女を見てきたが、こんなに完成された女はいない。

みんなにうらやましがられる美人でしぐさの女らしい女性。

気もまわせるし、

常識のある、

ほんっとに自慢な妻だ。



なんで他の女を求めるのか?

それは、

俺の中に留めている。

きっと、

誰にも分かりはしない。

被害妄想でもなんでもない。

すべては自分がかわいいのさ。

自分のやりたい様にして生きる。

妻にバレなければそれでいい。

それがきっと、

妻といつまでも仲良くいられるすべ。

それがきっと、

仕事に情熱を燃やせ、

結果を残すすべ。

なんでかは誰にも打ち明けない。








そうした生活を生きている中で、

こんな俺でも確実に落とせるという『黄金率』みたいなものを経験の中で見つけている。

経験がものを言うとは、まさにこのことなんだなと、一人で勝手に思い込んでいる。

黄金率については、
直接的な知り合いにしか話さないことにしている。

どうせ誰にでも当てはまるわけではないし、

そうしたことから、

この人なら、

“俺の言う『黄金率』が当てはまる”と思われる知り合いにしか話してはいない。

きっと、

その『黄金率』と称した内容が、無差別に紹介することにより、誰かの段階で崩されることになり、『黄金率』にならなくなることを避けてるためだ。

しかしながら、

俺にとっては、

どうであれ『黄金率』。

幾つかの要因が重なりさえすれば、

必ず、

その女は落とせる。

そう、確信している。









そして俺は決めた。









植村かえでを、

その『黄金率』に合う様に仕向けてみよう、と。








ただ、

ここで多少自信ない点は、

俺の言う『黄金率』とは、

偶然に、

その条件が重なったとき、

絶対という名の『黄金率』が形成されることになる。

つまり、

気に入った女性が、

たまたまコミュニケーションを取った中で『黄金率』の条件を満たした場合、

“落とせる”という確信に変わるのだ。

今回のケースの様に、

もともと『黄金率』の条件を満たしていない女性を、『黄金率』の条件が揃う様に仕向けた結果が“落とせる”かどうかについては、自分でも自信がない。

加えて、

『黄金率』の条件に仕向けるには、

手難しい女性だ。

確固たる自分を持っている女性のため、

なかなか思う様には仕向けられないだろう。。。









どうしても、

植村かえでと特別な関係になりたい。









そうした想いが、

こうした行動に出ることを思いつかせた。









『特別な関係』と言っても、他の女に求める様な抱きたいという、体を求めるというわけではない。

植村かえでには、

一緒の時間を過ごすということしか求めてはいない。

確かに抱きたい気持ちがないわけではないが、

俺も最低限な常識を保ち、

会社の後輩である彼女を性の対象にまではしたくないんだ。

キレイごとかも知れないが、俺は彼女に包み込まれる独特な空気の中に自分を置ける環境を作りたいだけなんだ。

そのために、

『黄金率』を作り上げて、もっともっと特別な存在として、彼女になんていうか、ラブラブとは言えないんだろうけど、力を抜いて接し合える仲になってほしいんだ。








約束の火曜日、

夜の街、銀座。

二人の時間がきた。








『黄金率』形成の記念すべき初日だ。









その変な意気込みは、

運へと導いてくれた。









が、未だひとつも『黄金率』の条件は満たしていない。









どの道、

かなわぬ恋ならば、

想いをつづけ、

自分を信じ、

やるだけのことはやり遂げたい。









それが後に後悔しない自分でいるための、

俺のもう一つの『黄金率』。
~つづき~





【セカンドライフ】





海野さんの市議選ボランティア活動に、初めて連れて行ってから今日まで、

植村かえでとは、

日々、俺から誘い出しては飲み歩き、

既に10回は二人で飲み歩いただろうか?









完全に心が奪われていた。








自分でも、
情けないくらい、









植村かえでとの時間がないと、なんだかせつなくなってしまい、涙が溢れてきそうなくらいにまでなっていた。









俺が植村かえでに対し、
好意的に思ってることは、
きっと、
植村かえで自身も感じ始めていたと思う。









一度連れ出したら、
離れられなくなり、

深夜3時になることは当たり前になっていた。









もっと一緒にいたい。。。









4月15日

市議会議員の選挙活動が、いよいよ本格始動となる日。

この日は、
街の至る所に掲示される、選挙立候補者のポスターを貼ることが許される日。



市内、数百ヶ所の掲示板に、海野さんのポスターを貼るための手伝いとして、
また植村かえでに応援をお願いし、一緒に来てもらった。



選挙ポスターを掲示板に貼るの一つとっても、
公平性を考慮されてかいろいろと決まりがあり、
15日当日の朝、
抽選会が行なわれ、
そのときに引いた番号の箇所に、ポスターを貼ることができるという決まりらしい。

貼り始めの時間などにも決まりがある。

前日に海野事務所に手伝いに伺った際、
翌当日に貼る選挙ポスターと掲示板の位置などが印された地図を預かり、
15日当日は、
掲示板そばで待機していた。

朝、植村かえでを迎えに行き、
海野さんの立候補している市内に入り、
自分の割り当てられた箇所の掲示板そばで待機し、
その抽選番号の連絡を待っていた。



二人一組で、車による移動で掲示板に貼る作業。

一人が貼る役、
もう一人は運転役という組み合わせだ。

俺はもちろん、
植村かえでと一緒。

なんだか、
ドライブデートみたいで、妙に今日がくるのが待ち遠しかった。

抽選番号の連絡待ちの間、予定時刻まで時間が一時間ほどあったので、最初に貼る予定の掲示板近くにあったファミレスに入り、植村かえでとお茶をして待機をしていた。

休日の朝、
射し込む陽射しが眩しい朝方の窓際の席、
向かい合わせて飲むコーヒー。

なんだか、
デート気分だった、
疑似的な。。。

もちろん、
俺と植村かえでは、
今日回るコースを確認し、どういった道順で貼って行こうか計画を立て、
真剣に望む先輩の気持ちを受け、
しっかりと責任を果たしたことは言うまでもない。

ただ、
そんな状況で、
この状況。

内心は、
ウキウキしていた。








こういった朝は、
きっと、もうこない。








そうした気持ちを噛み締めながら、
いまという時間のありがたみを感じていた。








プルプルプ…








抽選会に行ってた事務局長より連絡が入り、
番号の告知を受けた。








打合せて計画を練り、
ナビの効果もあって、
見知らぬ土地を効率的に貼り終えた俺と植村かえでは、海野選挙事務所へと向かった。








植村かえでとの時間は、
世の中の時間の5倍、
いや、10倍とも思える早さで時が過ぎ、
その後、
某駅前での海野さんの出陣式を見届けたあと、
その日から一週間の、
大詰めとなる週の打ち合せに参加して、
帰路へと向かった。










帰りみち、








今日のお礼にと食事に誘ったが、

『今日は運転されてて一緒に飲めないから』と、

気を回してくれながら断りをうけた。








俺は食い下がった。









『別に飲まなくたっていい。付き合ってもらえない?食事だけでも。』









その時は口にしなかったが、ただ一緒にいたかった。








まだ離れたくなかった。









この日でまた、
疎遠になりそうな気がしてたから。。。








俺と植村かえでは、

海野さんの選挙活動でつながっている。








それがなければ、

今まで同様、

直属でない俺と植村かえでは、二人でなんか行動しない。

きっと、平日の会社帰りに誘えたのも、
誘いに乗ってくれたのも、
海野さんのボランティアという同じ志の中で成り立っていた気がしていた。









さみしかった。








せつなかった。








こわかった。








今日という日が終わるのが。。。。。








これが二人の時間の最後だと思っていた俺は、

まっすぐに、

つたえた。









『結婚をしていて、会社の後輩だと認識していながら、こんなことを言うのは誠に失礼なことだとは分かってる。ただ、もう抑えることができないから、それを百も承知で言いたいことがある。俺は、植村のことが好きになってるんだ。こうやって海野さんの件をきっかけに二人の時間が増え、植村の優しさに包み込まれ、なんとも言えない安心感に包み込まれ、植村に恋をしてると実感し始めた。付き合ってくれなんて言えない。だけど、これからも二人で食事行ったりしてもらえないかな。彼氏ができるまでの間でいい。下心もない。普通に食事に行って、“らんぷ”に行ってくれるだけでいい。植村を考えてると、なんとも言えない心地よいきもちになれるんだ。一緒にいて、離れるときだって、せつなくなる。間違えなく、好きになってるんだ。植村、、、ごめんなこんな。。好きだよ。』









『やめてくださいよ~。またそんなんゆって、ほんとありがとうございます。私なんか。だけど、それが本気じゃないでしょうけど、基本、私、戸籍がキレイな人がいいんで。いくら私が彼氏いないからって、そんなに気をつかわないでください。』








『おれは本気だよ。』









『とりあえず、今日は朝も早かったですし、明日、会社もあることですから、今日は帰って早く寝ましょ。火曜日ならあいてますから、今日のお礼に食事に連れてってください。』









と、はっきりと言いたいことを言う植村かえでは、半ば、きっぱりと断りながらも、次の予定を俺にくれた。









きっぱりと否定されることは胸が痛い。

だけど、

植村かえでは、そういった性格のためか、

言わば、キャラクターっていうか、

そんなにショックな気持ちもないままに、

次の予定をもらえたことに、“最後じゃない”という喜びさえ感じた俺は、その話に説得され、火曜まで我慢することにして、そのまま植村かえでの自宅へと送った。








離れたあと、









溢れだした、









こころの内側を伝え、








どの道、

かなわぬ恋を実感してこみあげた。









『好き』のもどかしさ。









どうにもならない気持ちは、俺を台場の海へと走らせた。









俺の家のそばにある海だ。








俺は昔から、

何かあると海を眺めに行くクセがあった。









いつもは千葉の海が好きな俺。

だけど今日は車を走らせる気にもなれなかった。









星が光り写る夜の海。









いつも失恋なんて気にしない俺。









なぜに、

こんなにせつなくなってしまうのか。。。









こたえは夜風の中で、すぐに見つかった。









かなう、かなわないは別にして、これは叶い様のない恋だから、もどかしいんだと思う。









普通なら結婚してるなんて気にしていない。









だけど、

今回については、

会社の後輩であり、

そんな理不尽な話は成り立たないことは分かっていた。

そのもどかしさが、

おれをここまで追いこんだ。



そして、

植村かえでの持つ空気が、

そのもどかしさを増した。









俺は、

このあと、

吹っ切れた様に、

植村かえでにラブラブなメールを多発する様になる。

もちろん、

内容は紳士さを保ちながら。








会社の先輩、上司だから。。。









こうして、

ここちよくスタートした一日は、

もどかしさを残し、

終わりをむかえた。









帰宅。










普通な俺にもどる。








~つづく~
~つづき~





【自己分析】





本来であれば、
世間的には批判されるだろうが、結婚していようと、気持ちに素直に生きることで毎日を満たしていた。


『本気でなければいい』


それが俺の考え。



こうした毎日を過ごすことで、俺は仕事やプライベートの不満も家庭には持ち帰らず、それが逆に仕事への成果、家庭円満につながっているのだと思っている。









だけど違う。









植村かえでにだけは、
自分でどうしたらいいのか分からない。










今日も彼女と会社で会った。どきどきしてる自分。










『好き』とも違う、
不思議なきもちにもかかわらず、このどきどきは、間違えなく恋心にちがいなかった。









恋をしたときの、

あのなんとも言えない、

心地よい

どきどき感。。。









自分に素直であった自分はどこへいったのか。









『好き』と認めてしまえ!









そう、

自分に唱えてた。









もどかしかった。









せつなくなった。









彼女ともっと一緒の時間を過ごしたい。










今日は、
静岡出張。










朝、名残惜しいきもちで会社を出た俺は、静岡へ迎う新幹線の中で、通過駅の熱海ら辺の海を車窓から眺め、自分のきもちを恐る恐る振り返った。











おれは間違えなく、

植村かえでに恋してる。










『好き』なんだ。








だけど未解決なきもちがある。


『好き』ともちがう、不思議なきもち。


このきもちも確かに存在してる。


ただ、好きなだけじゃない。


不思議なきもち。









胸がくるしいよ。










『好き』とも違う不思議なきもちは解決してないが、














間違えなく、













きみをあいしてた。










まちがえなく。。。









~つづく~