兵庫県議会★漫遊記　

第１話　前代未聞の副議長選挙

【第１３回】

全体にいつもの議場とは違いざわついている。

投票が始まると議長が各議員の名前を呼び始めた。議員にはそれぞれ席に番号が付与されていて、前列右端の議員から順番に呼ばれていく。私は２６番なのでまだしばらく時間がある。

私の前にすわっている３番のナオくんはすでに名前を呼ばれ、議長席の前で知事に挨拶をしている。自分がドミノ倒しの駒になって倒れるのを待っているようなドキドキ感が湧いてきた。

左隣のホーリィが呼ばれ、次に「増山　誠」と議長の呼びかけ。「はい！」と新人議員らしく元気よく声を響かせ席を立つ。続いてN氏が呼ばれる。

なんとか投票までにN氏の票の色を確認したいところではあるが、がっちりと見えないようにガードしている。

知事の前で一礼し、議長席の前で再度一礼。投票箱の前まで歩を進めると、係員が手を出している。その手にしっかりと白札を手渡した。

私が投票を終え、２歩ほど進んだところで県議会の本会議場はいままでの静寂を打ち破り、怒号に包まれた。

与党からは「よっしゃー！」「よくやった！」

野党からは「おいおい！」「ふざけるな！」「裏切者！」

直前に議長席の前で投票を済ませた私には、そのざわめきで何が起こったのか理解できた。

「この男、有権者を裏切ったな」

私はそこでN氏が「青票＝無効」に投票したと直感した。

私は席に戻って、自席から前に身を乗り出した。投票の様子を見ていたであろうナオくんにN氏が「白・青」どちらに投票したかを聞く。

「青です」ナオくんがいつになく不機嫌そうな顔で答えた。

やはりそうか。

西宮の有権者は自民党ではなく維新の会の候補としてN氏に投票したのである。

離党・離団もとんでもないが、この副議長選における投票はまさに有権者の思いをゴミ箱に捨てるような最低の行為である。

↓左下１番の席の議員から順番に呼ばれる↓

（つづく）

※この物語は事実を基にしていますが実在の人物とは関係ありません、また一部脚色が含まれます。

【第１３回】兵庫県議会★漫遊記 第１章 前代未聞の副議長選挙