この記事を書いている時点で知床遊覧船事故からすでに3週間以上が経過、未発見者が11名(国後島で一名発見との記事があった)という痛ましい状態が続いている。亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、知床観光の健全な存続と発展を願ってこの記事を寄稿します。
カシュニの滝(2018.06.08撮影)
2018年5月30日、礼文アツモリソウを見るため礼文島に入り、その後6月3日からオホーツク沿岸を南下して6月7日網走市のオホーツクテントランドキャンプ場に着いた。翌日の知床クルーズに乗船するためである。クルーズの出発するウトロから80㎞離れているが、クマを始め野生動物の多い知床は安全なキャンプがむつかしいと判断したことによる。
オホーツクテントランド(2018.06.08朝撮影)
北海道のキャンプ場も6月上旬ではまだガラ空き状態。この時は広いオートサイトに我々老夫婦だけしかいなかった。写真のように、当時就寝はルーフテント、食事などはサイドに置いたテントというスタイルだった。この数年前富良野近くの金山湖オートキャンプ場で2室式のテントで就寝した時にキタキツネがフロント部分に侵入し、置いてあったクロワッサンの箱を引きずり出すという事件があって危険防止のため寝室への侵入防止を徹底した。翌年からは2室式テントは使用せず、このスタイルに変え、更に食材、生ごみの管理を徹底している。昨年からは車内泊が可能なように車自体を改造したが、夏涼しいルーフテントを捨てがたく搭載したままである。
この日は朝から穏やかに晴れていたので問題なく知床クルーズに乗れると判断して撤収開始。知床へ向かった。
クルーズ船DORPHIN Ⅲ(2018.06.08 午後撮影)
知床遊覧クルーズで我々が乗ったのは写真のドルフィンⅢという小型のクルーザーだった。コースは知床岬までの往復、所要時間3時間、ヒグマとの遭遇確立97%といううたい文句だった。旅客定員48名とうたっていたが実際には好天ならほとんど全員が2階デッキ席に乗りたがるだろうから、二十人も乗せれば混雑でクレームが出るだろう。船のキャパの半分以下に予約を抑えるのは釣り船等も同じことだ。当日の旅客は15名ほどであった。
このコースは人気のコースで、4社が運行しており個人旅行ならネットで予約する。4社のうち1番大きい船を運行しているのはオーロラというところだが、船がサイズだけ見るととても岸に寄ることは不可能に見えたし、おそらくインバウンドの団体が中心と思って敬遠。次に大きい船が今回事故を起こした知床遊覧船のKAZU Iだ。写真で見る船が少し古いように見えたのとスピードが出そうに感じなかったので敬遠。あとの2社は同じような小型クルーザーで、スピードが出て小回りが利くためクマやイルカを見つけたとき接近するのに最適と思った。一方船が小さいので海が荒れれば弱い。家内は船酔いの可能性があり、海が荒れたら例え大きな船でもアウトなのではじめからキャンセルは覚悟していた。それでHPのデータがシッカリしているこのDORPHINを予約した。幸い海は静かで天気も良かったのでクルーズを思い切りエンジョイできた。
ヒグマの母子(2018.06.08撮影)
ヒグマにはこの3頭のほか小熊1頭を連れた母子が二組で合計7頭を見ることができた。
クジラ(2018.06.08撮影)
イルカの群れ、オジロワシなども見ることができた。ガイドと船長の息がよく合っていた印象だった。
KAZU I?(2018.06.08撮影)
ヒグマが見えると周りの船は我先に急加速で移動。この船は少し船体が大きく小回りしてかなり傾いている。写真を拡大しても船名ははっきり見えないがクルーザーではなさそうなのでKAZU Iではないかと思う。天候が良ければ問題はない。
旧国民宿舎 桂田(現 海にー桂田)(2018.06.08 撮影)
知床のホテル王 桂田氏経営のホテルの一つ。
名前でお分かりの通り、知床遊覧船社長桂田氏のホテル。夕日がきれいと口コミがあって宿泊。ホテルの前に別棟でレストランがあり、その前にデッキがあって夕日が最高のごちそう。満足しました。
天候さえよければ大いに楽しめるクルーズだ。これが今回の事故で敬遠されるようになるのは残念でならない。
乗客は少なくとも運航業者が法規を守り、十分な安全を確保していると信じて乗船する。ネットで予約するのだから天候がどうなるか、船の設備や運航従事者や経営陣がどういう経歴であるかなどは知る由もない。少なくともDORFINでは出航前に事務所で安全に対する簡単な説明があり、救命胴衣を装着させられ確認を受け、船内でむやみに立ち歩かない、手すりなどに必ずつかまり移動するなど基本的なことを説明してから全員そろって船まで歩き乗船した。
自分は良く釣り船に乗るのである程度の知識はあるが一般的に乗客は船舶の安全には全く無知と思ってよいだろう。安全についての監督官庁と経営者の猛省を促したい。
ただ少なくとも条件付き出航という天候なら家内の船酔いだけでなく、まさか沈没とは思いもよらないことだが、不快な時間を耐えねばならない可能性があるということだ。自分なら絶対に乗船はしなかっただろう。死者を鞭打つ事は不本意だが危険予知というのは一方だけの責務ではないこともまた事実だと思う。