あの後村田さんに私の泊まる部屋に案内され、荷物を置きすぐ図書館での仕事を始めた。

図書館にはもちろん沢山の本が規則正しく並べられていた。

しかし新しくできた図書館の癖に本棚や本には大量の埃をかぶっていて変な感じだったが私は気にしなかった。


「マユミさん。仕事はかどってる?ちょっと休憩しない?クッキーとハーブティを作ったからどうぞ。」

「あっ!ありがとうございます。」


図書館にある縁側でハーブティとクッキーをいただく。

すっかり雨は止んで今ではすっかり晴れ、森林の木がそよそよする風が吹き、縁側を涼ませた。


「このハーブティとクッキーおいしいですね。」

クッキーはいたってシンプルだが、それがまたよく、ハーブティは私の母も作るが今までに飲んだことのない味で新鮮だった。

「良かった。この二つは私が1から作ったの。気に入ってくれてよかった。」

「村田さんもハーブティの調合が好きなんですか?私の母もなんです。」

「でも、まだ未完成なの。だから今もがんばって作ってるわ。」


村田さんと話していると、心が素直になれてきた。

クラスでも皆とこうして話せていたら私はこんな子にはなっていなかっただろうに・・・


少し涙が出てきそうになった。

頑張って抑えようとしたが、ばれた。


「どうしたの?悩みでもあるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。実はあんまりクラスの人と話せなくて、こうして素直に話したら、友達とか増えただろうなって。」

「・・・・・・・・・・。」

「もともと、人と話すのが苦手で、中学の時はいじめられて・・・

 死にたいと思ったことは何度か・・・・」

と言ったとたん、村田さんは、

「ねぇ・・・こんな話があるんだけど・・・・」

と言い、物語を語り始めた。


          ~約束~

病気の女の子がいた。

その子の幼馴染の男の子も同じ病を患っていた。


ある日男の子は女の子にこう言った。

「聞いちまったんだ。父ちゃんと母ちゃんが泣いていた。

 俺はもう長くねぇって。」


女の子は男の子のことが好きだった。だからびっくりして声が出なくなった。

「でも、俺はその日まで、楽しく生きる。悔いのないよう生きる。」


もう自分は死ぬと分かっているはずなのに、男の子はきらきらしていた。

そんな姿を見て、女の子は協力すると言った。


そして、その日までにすることを決めた。

1 虫取りを1日中する

2 友達に竹馬を教えてもらう 出来るようにする

3 見たことのない海を見る




しかしこのことを決めた翌日


男の子はこの世を去った。


目を閉じる前男の子は女の子に、こんな約束をした。

「この3つの決めごとを無理じゃない程度でいいんだ。成功させてほしい。

 そして、俺の分まで生きてほしい。」


女の子は次の日から約束を果たそうとした。

布団から出ることは禁止されていたのに、その日は1日中虫取りをした。

その次の日は病院に友達をこっそり呼び出して竹馬を教わった。

そのまた次の日は、またこっそり布団を出て電車で海へ行った。

こうした日々を何週間か過ごした。

その間に女の子はどんどん体が悪くなっていていったが、そんな生活が楽しくて、たまらなかった。


しかしある日。

とうとう女の子の体には沢山の薬と管が入ってもう動けなかった。

女の子は力を振り絞って

「私出来たよ。

 1日中虫取りをした。

 竹馬もうまくなった。

 海も見た。

 約束3つ果たせたよ。


 でも最後の約束は果たせそうにないよ・・・・

 

 ごめんね・・・  ほんとごめん・・・・」


と言った後女の子は息を引き取った。


                                  ~約束 完~



「・・・・・・。」

私はしばらく黙った。

すると村田さんは、

「生きている限り、できることはたくさんあるの。

 だから自分から死を選ばず、今できることをたくさんしてて置いた方がいいと思うわ」


それから私は死にたいなんて思わないようにした。


再び仕事をしようと思ったら、日が長いはずの空が赤くなって、夏休み1日目が間もなく終わることを伝えていた。




ここが平賀山図書館?


そこはたしかに江戸時代の民家のような建物ではあったが、新しくできたとは言えないくらいおんぼろでだ。

今は夏だからよかったものの、冬は寒いであろう穴のあいた障子。

風でカタカタ揺れる壊れかけの扉。

屋根は錆ついたベニヤ板。上には枯れ葉がのっている。

お化け屋敷と言っていいほどだ。


こんなところ図書館なわけない。

きっと走っている途中道を間違えたのだろう。

無我夢中だったし。


でも・・・・

聞いておいた方がいいだろうか・・・

ひょっとしたらここの住民が知っているかもしれないし。


私は勇気を出して扉へ向かった。


トントンっ


心臓の音がドキンドキン聞こえて今にも破裂しそう。

冷や汗がまた背中を走る。


するとドアがいきなり開いて中から30~40歳くらいの女性が出てきた。

白い肌、痩せこけた体が印象的で、特に印象に残った青い目は虚ろでどこを向いているか分からない。

「あの・・・平賀山図書館って・・・」

私は恐る恐る聞いてみる。

すると女性は、

「ここのことですよ。あなたが森川マユミさん?」

このおんぼろお化け屋敷は、平賀山図書館だった。

「はい。森川です。」

「よかった。ここの場所は分かりづらくてね、なかなか来る人がいないの。

 私はここの館長の村田良子です。

 さあ上がって」



私の夏休みが改めてスタートした。

次の日。昨日急いでつめた重い荷物を持ち、家を出る。

昨日電話したところ、朝早く来ていいと言われたので、通勤ラッシュ前のバスに乗った。

学校に行くときはラッシュ時のバスに乗るので、多少話し声が聞こえるのだが、今日は私一人しか乗っていないので外にいる小鳥の歌声が聞こえてくるほど静かだ。


「ついた~」

バスに乗って5分後・・・平賀山の近くのバス停に着く。

自然の沢山ある私の大好きな場所だ。


私は近くにいた人に図書館のことを聞いてみる。

しかし聞いた人みんな知らないと言った。

無理もないかもしれない、私も昨日知ったのだから。


図書館を探して歩いていると突然雨が降ってきた。

最悪だ~。

たまたま傘を持ていなかったのでびしょぬれになってしまった。

もう帰ろうかなと思って絶望的になっている私は・・・ついに見つけた。


平賀山図書館・・・




の看板。

この坂を登れば着くのだなと思って、絶望的だったのを忘れて、全速力で登っていく。


でも私は持久力がないのですぐ疲れてしまった。

気がつくと、すごい森の中へとはいって行ってしまった。


夏なのに、涼しすぎる風が汗ばむ体を通り抜ける。

蝉の声も聞こえない、葉と葉が重なり合い不気味な雰囲気を醸し出していて、今すぐにでも帰るたくなる。

それでも私は進んだ。


そして、今の日本では珍しい江戸時代の民家のような建物が見えてきた。


ここが平賀山図書館?





明日から高校生生活最初の夏休みが始まる。

クラスのみんなは、遊びに行く予定などを話し合い、キラキラと輝いた表情を見せている。

しかし、私、森川マユミはその中に入れないでいる。


帰り道を寂しク歩いていると、変な思いが浮かんだ。


どうして私はみんなの輪の中に入れないの、


どうしてみんなは私と話してくれないの、


どうして私だけこんなに不幸なの・・・・・



喉までこみあげてきた思いを押し込んで走ろうとした、その時


大きな風が吹いた。私の髪が揺れる。

びっくりして風の吹いた方を見てみた。すると塀に小さなチラシが貼ってあった。

人の家の塀にチラシが貼ってあるなんて少し珍しいと思った私はそばで見てみることにした。




平賀山図書館


高校生、大学生のみなさん。夏休みは平賀山に新しくできた、図書館で住み込みで働きませんか?

部活をやっていない人に限ります。


電話番号○○○○ー△△ー××××




とだけ書いてある。

平賀山とは、私の住む町の近くにある山である。


私はすぐ電話番号に電話をしてみた。

部活はやっていないし、この夏暇だから。そして


私の中の何かが変わりそうな気がするから



※平賀山には図書館はありません。フィクションです。