
「どうだったカリブールは、いいところだったろう」
「うん。お花がいっぱい咲いていて、とってもきれいな海もあって、
いいところだったなぁ」
「これから地球に戻るけど、その前に見せておきたいものがあるんだ。
そうそう、君たちには大切な使命があることを忘れないでね。
こうやって見てきたことを、一冊の本にまとめることだよ」
かすかに振動してと思ったら、窓の外に広がっているのは地球だった。
「もう見えて来たね。何だかとっても懐かしい気がするよ」
「そうだね」
「そんなに長いこと、この星を離れていたわけではないのに。
まぁ、気持ちは分からないでもないよ。
これからこの地球で働いている、ぼくの仲間のいるところへ案内するよ」
「アイは、一人で地球に来ていたわけじゃなかったんだね」
「そうだよ、ぼくには沢山の仲間がいるんだよ。
それからもしも都合がついたら、
この星の救済計画を指揮している最高責任者の所にも、一緒に行くことにしよう。
君たちにとっても、とても有意義な出会いになるはずだからね」
宇宙船は地球の大気圏に入ると、そのまま一気に海の中へと入って行った。
海に入るとさらに、海の底目指して速度を緩めることなく進んでゆく。
やがて海の底に見えて来たのは、海底に出来た都市のように大きくて立派な、
葉巻のような形をしたUFOだった。
数え切れないほどある窓の一つ一つには明かりが灯っていて、
どう見ても一機のUFOと言うよりも、一つの都市のようだった。
正一とヒカルは言葉もなく、ただ呆然と目の前に広がる光景を見詰めていたが、
たまりかねてヒカルが言った。
「凄いや、こんな大きなUFOは始めて見たよ。
それにしても、どうしてこんな海底にいるの」
「ある特別な任務のためだよ、それはあれに入ってから説明するよ。
ほら、あそこのハッチが開いたでしょう。あそこからあの中に入るからね」
3人を乗せた宇宙船が、開いたハッチから巨大なUFOの中に入って行った。
入り終わるとハッチはゆっくりと閉まり、宇宙船は沢山の宇宙船の停まっている、
ちょうど飛行場のような所の一角に着陸する。
「さあ着いたよ。これから下りて中に入るんだけど、
その前に地球の救済計画の最高責任者と連絡を取ってみよう」
外の様子を写していた窓に、アイの話していた最高責任者の姿が映し出された。
窓だとばかり思っていたものが、
実は何でも映すことの出来るスクリーンでもあることに気づき、
正一とヒカルは少し驚いた顔で、最高責任者の姿を見つめた。
背は2メートル近くもある大きな男の人であるが、地球の人にはない気品と風格が、
その穏やかな風貌から感じられて、ちょっと近寄りがたいようにも感じられたが。
「ようこそ来てくれました。大丈夫、そんなに怖がらなくても。
今日は君たち2人と会うために、ここに宇宙船を停めていたんだよ。
君たちはこの星の人たちのようだね、それに何か大切な任務もあるようだ。
君たちが思っているように、わたしはこの星の人間ではない。
でも、この星の救済計画の一切を任されている責任者だ。
言わば、君たちの仲間でもある。
詳しいことは、わたしのいる部屋で話すことにしよう。
では、待っているからね」
アイと同じように、人の思っていることを察知することが出来る、
救済計画の最高責任者の姿がスクリーンから消えると。
「ごめんね、ぼくもうっかりしていたよ。やっぱりまだアミのように、
上手く君たちを誘導出来ないみたいだね。
ここへ来た最大の目的は、今出て来た最高責任者と会うことだったのに…」
「アイ、そんな気にしなくてもいいよ」
「そうだよ。全然平気だから」
「ありがとう」
にこっと微笑むアイの大きな瞳には、正一と光るの微笑む顔がしっかりと映っている。
はなむけのとき
あなたがほほえむと
花はほころび
あなたがうつむくと
花はすくっと立ち上がり
静かに語り始める
言葉はやがて
ゆっくりと歩き出し
あなたの心に
小さな種を落とす
まっさらな
あなたの瞳から
何かがあふれるとき
花はゆらり
あなたのすべてを
輝かすために
ひとり
はるかな旅に立つ
ハロウィン・ロケット ―18― に続きます。
絵は友人のやのさんが、描いたものです。