拝啓 島耕作様 貴社益々ご清祥のことと、お慶び申し上げます。
さて、貴社と並び称される名門企業のT芝があのような事になり、誠に残念な事です。善良な従業員さん達の為にも、同じ轍は踏まないよう努力したいものです。人は間違えるもの。だからこそ歴史に学ぶのでしたね。
ところで昨今の政治不信、ひどいものですね。トランプ政権は言うに及ばず、閣僚の不祥事その他で安部政権の支持率下落に歯止めがきかず、めぼしい受け皿もなし。個人的には当初から石破さんの方が好きでしたがそれはさておき。安部さんが教えてくれるのは「人は神じゃない」って事だと思いませんか。一国のトップですら不信感を抱かれる。ましてT芝は一企業。上層部だって神じゃない。組織は人が作るもの。たとえ社長が神であっても、組織がそれを曲解する。完璧なんてありえないのです。完璧でない組織をいかにして誤らせないよう管理するか。コンプラの永遠のテーマかもしれないですね。とにかく反面教師のT芝に学びましょう。彼らは何を教えてくれるでしょうか。
T芝と言えばこのところの米国原子力事業失敗と半導体事業売却が注目され、名門企業の行く末を皆が固唾を飲んで見守っているところですが、つまずきの発端は利益水増し等会社ぐるみの粉飾決算が明るみに出た事でした。たくさんの、多くは優秀でもある従業員の働くT芝・・・。全員とは言わないまでも、一定以上の職につく人々は、会社の進む方向性に疑問を感じていたと考えなければなりません。それら多くの良識をもってしても、巨大企業の意志を矯める事は出来ない。何故か。ニッポンのサラリーマンであれば、中には「ふんふん、そうだろうなー」と納得してしまう向きも多いのでは?見た訳ではないが想像できる。その理由は既視感ではないか。経験は何よりも雄弁に物語るものです。
業績好調の時、不正は起こりません。言い訳する必要がないからです。株主や経営トップに約束した利益を確保し、責任を果たしたならば、完全試合達成、あるいはメダル獲得という訳です。ところが、何らかの事情でファンや国家の期待にこたえられない時、人はドーピング等の不正への誘惑にかられるのでは?もしも、そんな事はあり得ないのですが、「絶対にバレない」としたら、それでも正気でいられるでしょうか。
ではこうしましょう。ドーピングで禁止に規定されている薬物ではなく、現行法では多分問題なく、将来のルール厳格化では問題になるかもしれないような薬物があったら・・・。
人は弱いもの。皆の期待を裏切れないとなれば、手を出さずにいられるでしょうか。たとえそれが体に害のある劇物であると分かっていたとしても・・・。売上が足りない。利益が足りない。そんなとき、法的に問題ないレベルで、何とか工夫して利益を良く見せたい。これはありがちな事だし、僅かなら目くじらを立てる程の事ではないかもしれない。だが一度これを始めると、自転車操業のように毎回同じ事を行わざるを得ない状況に陥る。そしてそのレベルはサラミ法のように僅かづつエスカレートする。
法的には問題にならないかもしれない。だがこれはどうだろう。一時的な利益を良く見せる為、多額のコストをかける事。株主から資本を預かり本来還元すべき利益をどう使うか。これは法律ではなくモラルの問題ですが、正直この判断は難しいと考えられます。なんでも「ダメ」というのはお役所的であり、民間企業の良い意味での自由を束縛する可能性がある、という考えもあるでしょう。しかしこの行動には金銭コスト以外のデメリットもまた存在する事を、上層部は忘れがちです。それはヒトの「求心力」を失わせる効果についてです。利益に照らし、明らかに意味のない苦悩を強いられたとき、人は疑問を持つでしょう。普段利益を上げようと四苦八苦しているのに、一体なぜ。その時に必要なのは納得のゆく理由及びその説明であるはずですが、それが無い(できない)。ニッポン人の美徳の中には「謙譲の美」があります。「所詮自分の考えなど浅はかだ」「上層部は優秀である筈だから…」あるいは下々の者はそう思って疑問を打ち消すのかもしれません。こんな時、私は安部さんを思い浮かべます。上層部であろうと人間ではないのかと。
捕まったT芝歴代の社長たちはいわゆる悪党でしょうか。恐らく彼らは身を削り、時には家族との時間を犠牲にして、頑張りぬいてその地位に登りつめたのだと思います。そして社長になったとき、過去から脈々と受け継がれてきた色々な「やり方」をやめる事が出来ない。恐らく個人の力でそれを止めるには、すべてを犠牲に差し違えるくらいの覚悟が必要かもしれない。そして会社の業績が悪くなれば、対応は僅かずつエスカレートする。それはいつしか法律の一線を越えてしまう・・・そんな想像が私の頭を巡ります。
いつか業績が良くなればご破算に出来るとか、自分がトップになって文句を言われない立場になれば、自分の責任で何とかするとかいう事も、人間の考えそうな事です。今のニッポンが抱える負債を見てください。先送りの賜物です。また、習近平氏が権力闘争に最終決着をつけても、あの国は本当に「良い国」になるでしょうか。歴史は教科書です。歴史に学ぶことをやめたときそこに待つのは、私の気が確かならば、それは「破壊」と「滅び」でしかない。そう思いませんか? 敬具
