私の仕事上、ほぼ一日おきに訪問をするお家のお話なんですが。
そのお宅は、地元の地主さんのお宅で、古い母屋の周りには賃貸アパートが数棟あって、
いわゆる田舎の旧家なんですが、正直、母屋の前の庭の手入れはあまり行き届いてはなく、特に今の季節は、車の出入りがある
所以外は雑草が伸び放題で、当然様々な昆虫たちの楽園状態なのです。
そんな庭に車を乗り入れた先日、車を降りて引き戸式の木戸の前に立った時、不意に蜘蛛の巣が私の顔に触りました。
ビックリしてすぐに顔を背け手で顔の周りを払いのけました。しかし、まあこの時期こちらのお宅へ来れば、このくらいの
事はまあ当たり前で、以前は蛇がでたり台湾リスが軒を走ったり、玄関木戸を引けばコオロギや蜘蛛が落ちてきたりと、
なかなかアドベンチャーな玄関先なんですが、蜘蛛の巣が触れた時去年の事を思い出しました。
去年の夏、その日も今日と同じように暑い日でした。
いつものようにこのお宅を訪問した時です。いつものように車を降りて玄関先まで行くと何と、
引き戸とその横の壁に大きな蜘蛛の巣が出来ていたんです。
場所的に、蜘蛛の巣を壊さないと玄関が開けられませんでした。自分は改めてその蜘蛛の巣をじっくりと観察しました。
ほぼ等間隔の五角形に広がった形で、直径は1メートルほどの立派な編み目で、まだ出来上がったばかりのようで小さな虫や埃などは付いてなく、風に揺れる姿はシルクの網のようでとても綺麗な状態でした。
端のほうでこの蜘蛛の巣の主で製作者でもある黄色いシマ模様のお尻をした蜘蛛がじっとうずくまっていました。
さて?どうするか?
玄関を開ける為にはどうしても蜘蛛の巣を破壊しなくてはいけない、でも、こんなに大きく綺麗な巣を作るのはさぞ大変だっただろうから壊してしまうのも忍びない・・・・どうする?しばらく玄関先で考え込んでしまいました。
しかし、仕事上玄関を開けてこのお宅のご主人に会わなくてはならないし、時間もない。
申しわけないが、今回はごめんなさい、私は蜘蛛の巣を足元にあった木の枝で壊し、玄関を開けました。
端にいた家主はそれほど驚いた様子はなくそのままうずくまったままで、
残骸となった編み目がヒラヒラと風になびいていました。
その後、仕事を済ますと、何だかすごく申し訳ない気持ちでそのお宅をあとにしました。
そして翌日、そのお宅には仕事での用事はなかったのですが、近くまで行くことがあったのでそっと様子を見に行ってみると、
何と!たった1日で昨日と全く同じような蜘蛛の巣がそこに出来上がったいました。すすすす凄い!!!!!
シマ尻の家主はやはり昨日と同じように端の方でじっと何事も無かったかのようにうずくまっていました。
蜘蛛ってスゲー!!!!
こんな芸術品のような蜘蛛の巣をたった1日でしかも一匹で作ってしまうなんて。
しばらくその場で小さな芸術家の作品を眺め、改めて、
生き物って凄いなと実感した出来事でした。