師走というと、ベートーヴェンの第九演奏会が全国各地で開かれる。

音楽情報誌によると、毎年１７０～８０回開かれ、バブル期には２００回を超えていたそうだ。ヨーロッパの１２月の定番はヘンデルの「メサイア」。日本でもクリスマス前後によく演奏されるが、宗教色があまりない第九のほうが日本人向きなのだろう。
でも、「師走の第九」のそもそもの発端は、戦後各地でオーケストラが出来、その団員が年越しの金を稼ぐために演奏会を開いたことから広がったのだそうだ。

ま、うんちくはこのくらいにして、私の第九演奏会体験を少々。
九州交響楽団、指揮・秋山和慶、ソプラノ・小川里美、アルト・八木寿子、テノール・宮里直樹、バリトン・ジョン・ハオ・・・というキャストの第九を聴いた。
私は、第４楽章のあの「歓喜の歌」のメロディーが単純すぎて好きになれず、第九をあまり聴いてこなかった。１～３楽章はそれぞれに斬新で魅力があるのに、最後に単純な歌曲でちゃぶ台を返して笑い飛ばして終わってしまうようなへんてこりんな交響曲というイメージを持っていた。
でも、今回聴いた演奏会は、その私の第九のイメージをきれいに洗い流してくれた。あわただしい師走に、じっくり聴く価値のある曲だと思った。

秋山のゆったりとしたテンポでオケのすべての楽器が十二分に歌っていた。第４楽章の「歓喜の歌」のメロディーがコントラバス、チェロ、バイオリンの順番で繰り返し奏でられながら次第に盛り上がっていくところで、涙が流れそうになった。歌手もうまかったし、バックのアマチュア大合唱団も、かつての労働組合の大集会のように、元気いっぱいに声を張り上げて歌っていて爽快だった。やっぱりよくできた曲だと思った。さすがベートーヴェン！感動をありがとう。

最後に一句。　　「　凛凛と　　　　第九の魂　　　　継ぐ師走　」